彷徨えるジパング~バルチック艦隊編~

花田 一劫

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第25章 船出と共に彷徨う者達

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西暦2024年から来た日本国の皆さんありがとう。

戦艦三笠はバルチック艦隊の旗艦クニャージとの戦いで、船首等に損傷を負ったが、政府は何もしない中、日本国民の多くが立ち上がりSNS等で修理資金をつどい、5億3千万円程のお金を作ってくれた。
しかし、各造船メーカーの修理費の見積額は10億円を超えていたが、時代を創った戦艦三笠を早く直してあげたいと、とある造船メーカーが集まった金額でよいと名乗りを上げ、しかも1ケ月という短期間で完璧な修理をしてくれた。

戦艦三笠は勢い良く黒煙をはきながら海原を進んでいた。
その操舵室で、乃木と東郷は、心の底から思っていた。未来の人達ありがとうと。
「東郷さん、私の話を聞いてくれてありがとう。」
「乃木さんから、タイムスリップの歪みを直すのは三笠が日本の海域(国土)を離れることで解決するんじゃないかとのご意見をお聞きし、なるほどと思っただけです。乃木さん、もうそろそろ対馬海峡を越え、(21世紀の)日本の領海外に出ますよ。」
「出ますか…。ところで、東郷さん、21世紀の今後の日本はこれからどうなると思いますか?」
「長い間、政権の舵取りをして来た事由政策党が決裂解散することになり、これから日本は新たな船出になりますが、私は大丈夫だと思います。日本の民に大和の心根が続いている限り繋いでいけると信じます。この先、未来永劫まで。」
「私もそう思いました。世界に類をみない約二千年続いた一つの王朝を拠り所にして生きてきた日本の民達が、慈愛精神と美徳の心を十分に持っていると感じました。それに天皇陛下には忍び(八瀬童子)がいて、これからも悪鬼達を退治してくれると思います。」
乃木と東郷はにこやかに笑いあった。

悪鬼で思い出される彼奴等。芦破は奈落に逝き、石谷、村下はクーデター計画の首謀者としてマスコミに追い回され、直ぐに政界を引退をし、ゴーマン大佐とゲルト艦長は、あのSNSの動画を見て愕然となり原子力潜水艦と共に日本へ投降してきたが、鬼畜パブリチェンコは行方不明のままだった(八瀬童子に既に抹殺されたとの噂話も出ていた)。

「東郷司令官、21世紀の日本の領海範囲外に出ました。だいせんが停止して遠ざかって行きます。」と、秋山が報告に来た。

戦艦三笠を見送り(護衛)に来た巡視船だいせんが、お別れの合図として追慕の汽笛を鳴らしながら、甲板では多くの船員が、帽振れの見送り挨拶をしていた。

だいせんはコロシア連邦の原子力潜水艦による魚雷攻撃を受け修理をしている途中だったが、上野船長以下全ての船員が戦艦三笠の護衛(見送り)に出たいと、海上保安庁の上層部へ申し出したところ、却下されたが、ジパングTVの特番放送でだいせんが取り上げられ、蒙古襲来での活躍や今回のバルチック艦隊についても身を挺して戦ったことが放送された。多くの国民からは、日本領海から去っていく戦艦三笠とそれを見送るだいせんが観たいと反響があり、政府から、だいせんは整備途中ながら特例として戦艦三笠の護衛を許されたのだった。

東郷、乃木、秋山は三笠の最上艦橋に上り、だいせんへ敬礼挨拶を惜しみつつ行った。
「さようなら、だいせーん。ありがとーう。日本の未来は任せたぞぅ。」秋山が大声で何度も叫んでいた。

おや?三笠の周りには急に濃い海霧が流れ出てきて、だいせんが全く見えなくなってしまった。
もしかして三笠は西暦1905年に戻れたのか?

そのうちに霧が薄くなり視界が良くなり始めたが、海原の遠くに現れたのは何とバ・ル・チ・ッ・ク・艦・隊…だった。
旗艦クニャージは三笠の戦いで沈没していたが、残った世界に誇る大艦隊37隻(戦艦10隻、巡洋艦9隻、他)が三笠の5海里(約9km)先に姿を出した。
その光景を見て三笠の最上艦橋にいた、東郷、乃木、秋山はあっけに取られ動揺をし始めていた。
バルチック艦隊はウラジオストクへ行ったはずでは。
それとも三笠同様に歴史に呼ばれて来たのか…。
「両舷、停止せよ。」
東郷が艦橋に上ってきた下士官へエンジン停止の指示を出した。
「司令官、相手(バルチック艦隊)も我が艦と遭遇し混乱していると思われますが、これから如何したしましょうか。」
秋山が東郷へ指示を仰いだ。
「当初の計画通りこのまま旅順港へ向かうと言いたいところだが、バルチック艦隊が簡単には通してくれまい。」
東郷は思案にくれていた。
バルチック艦隊が攻めてきたら…。一隻だけの三笠は逃げなければ、砲弾の餌食になるであろう。
ここは逃げるか…。
しかし、我が日本帝国の旗艦である三笠が簡単に逃げたとしたら、今後の戦況に関わることになるし…。
戦うだけ戦って自ら死を選ぶ…。最後に自爆死か。

そうしているうちにバルチック艦隊が三笠を目がけて動き出し、大艦隊37隻の全砲塔が三笠を獲物と定め、一斉に砲撃を始めた。
バシャン。バシャン。バシャーン。バシャーン。バシャーン。
三笠の周りでは多くの巨大な水柱が立ち船体を揺らした。
「伝令係、これより、三笠一隻でバルチック艦隊を討つ。戦闘開始と全総員に伝えてくれ。」
伝令係が敬礼をし、「東郷司令官殿、拝承しました。」と言い走っていった。
「秋山君、ジクザク走行で砲弾をかわして、1隻でも多くの道連れ(沈没船)をつくってくれ。」
「司令官、何を仰るのですか。世界一と云われるバルチック艦隊を小国日本の軍船が一隻で勝利を挙げれば…世界戦歴に載ります。剛毅な話ではありませんか。」
秋山がそう言いつつ顔は引きつっていた。

秋山君、始め船員の皆、日本のために踏ん張ってくれ。
この戦いを終えたら、わし(東郷)は靖国神社で待っているから、皆で酒を酌み交わそう。
バシャン。バシャン。バシャーン。バシャーン。バシャーン。
ヴァーーン。三笠の船首の甲板に砲弾が一発当たり船員達に動揺が広がりつつあった。
その時である。

風に乗り、お経が聞こえてきた。軍神毘沙門天に捧げる真言が…。
「オン、ベイシラマナヤ・ソワカ。」「オン、ベイシラマナヤ・ソワカ。」「オン、ベイシラマナヤ・ソワカ。」
何千人もの低い魂に響く声と、ドン・ドン・ドンと太鼓の重低音が海原へ響き、その音はだんだんと大きくなってきた。

「砲撃の音,以外に何か音が聞こえるが?」
「司令官、確かにそうですね。お経のような。」
もしかして、私らは既に死して死出の旅路へ出たのか。
「東郷司令官殿、た・た・大変です。三笠の後方から戦隊が近づいて来ています。戦隊には見知らぬ信号旗が舞っています。それは、毘と龍の二つの文字です。」伝令係が艦橋へと報告に来た。
それを聞き東郷と秋山は艦橋を降り、甲板に立ち双眼鏡で戦隊を確認したが…。

毘と龍の旗を靡かせて悠然と進んでいる日本帝国艦隊の戦艦3隻、巡洋艦23隻、軽船81隻がこっちに向かって来ていた。
「司令官、もしかすると会津出身の出羽重遠中将の発案ではないでしょうか。昔、会津を統治していた上杉家が先陣で使っていた旗印を信号旗にしているのかも知れません。」
秋山は博識を見せて語った。
上杉家と言えば武神毘沙門天の生まれ変わりと称した謙信公がいた。それで、毘沙門天に捧げる真言を唱えているのか。百戦百勝と云われた謙信公にあやかろうとしているのか。
東郷は、「オン、ベイシラマナヤ・ソワカ。」と唱えた後に、
「秋山君、各艦へℤ旗を掲げるよう指示を頼む。それに総員に対し君が考えた一文を披露してくれ。」と言った。
秋山は、「はっ。承知致しました。」と東郷に敬礼をした後に、伝令係へ指示を出した。
「ℤ旗を掲げ、総員皆に伝えてほしい。皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ。と。」
この高揚する言葉は瞬く間に広がった。
バシャン。バシャン。バシャーン。バシャーン。バシャーン。
毘沙門天に捧げる真言が効いているのかバルチック艦隊の砲撃が当たらない。
「敵前大回頭、始めぇ、キエーイ。」東郷の鬼気迫る示現流の掛け声が皆(乗組員達)を大きく揺さぶり、掛け声が次から次へと連呼して言った。
「キエーイ。」「キエーイ。」「キエーイ。」…と

世界戦歴に名高る日本海海戦が始まろうとしていた…いざ。


~バルチック艦隊編 終幕~
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みんなの感想(5件)

marron
2025.08.19 marron

楽しく読ませて頂きました。ファンタジーな世界観の中に、古と現代が融合され、コミカルな表現も塗されてとても面白かったです!勇敢な2人と1匹の今後の活躍も期待しています!

2025.08.19 花田 一劫

次回作についても、登場させたいと思っています。いつ出来上がるかなぁ?ストーリーが全く出来ていません(笑)

解除
marron
2025.08.19 marron
ネタバレ含む
2025.08.19 花田 一劫

愚作ですが、最後までお読み頂きありがとうございました。次回の取り組みの励みになります!

解除
ダッツ
2025.07.14 ダッツ

面白かったです。次回作も見てみたいな!

2025.07.14 花田 一劫

お読みいただきありがとうございました。
次回作の励みになります。

解除

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