彷徨えるジパング~バルチック艦隊編~

花田 一劫

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第24章 みっつ目の仕置き

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千代田区永田町にある首相公邸の私室では、芦破首相が椅子に座り寝入っている中、
その脇には、見事な白い総髭を蓄えた御仁と栗原(八瀬童子の親方)や世界に名高る催眠術師の幸田が立ち見下ろしていた。
「先生、この男(芦破)は催眠にかかっているのですか。」
「十分(催眠)に入っております。」
「この男へ質問をしてもいいですか。」
「分かりました。どうぞ。」
芦破の顔の前で催眠術師が両手でパンと鳴らしたら、芦破が淀んだ細い目を開けた。
「貴公の名前と仕事を教えてほしいが。」
「わ・た・し…の名前はア・シ・バァ。仕事は日本国の内閣総理大臣であ・り・ま・す。」
「好きな国と嫌いな国を教えてほしい。」
「好きな国は中央国とコロシアかなぁ。嫌いな国はアンメリカ。何と言っても一番嫌いな国はニ・ホ・ン・国だぁ。」
「貴公のこれからなすべきことについて教えてほしい。」
「天皇を元首から引きずり下ろし日本の社会主義初代大統領となること。誰にも教えちゃだめだよ。ナ・イ・シ・ョ。ぷっ、ぷぅ。ぷぅ。わっわっは。」
芦破はこの言葉を発すると恍惚となり、よだれが溢れてきた。
その光景を見て白い総髭を蓄えた御仁(乃木大将)のこめかみが怒りで血管がブチッと切れた。
それまで黙っていた栗原が口を開いた。
「幸田(催眠術師)先生、もう結構です。駆除してたもれぇ。例の催眠をかけてください。」
幸田は頷くと作業に入っていった。

翌日、官邸の1階にある記者会見室で、総理の会見が行われた。
いつもなら、掲揚させている国旗に一礼してから会見が始まるのに、芦破は無視して演台に向かった。
司会進行役の女性が、
「只今より芦破内閣総理大臣より記者会見を行います。始めに総理より発言がございます。
では、総理よろしくお願いいたします。」と言い、芦破へ発言を促した。
「はい、よろしくお願いいたします。えー。本日は、ビッグニュースがございます。令和6年5月18日に我が国は、国土全体がタイムスリップに遭いました。その後、蒙古襲来やこの度のバルチック艦隊との交戦があり、多くの国民の皆さんの犠牲を出してまいりました。これからも、どの様な時代に彷徨うか分からず、その際に即時適応、的確な対応をするためには、これまでの状況を考えると民主主義では叶わないと思慮し、政府としては社会主義が良いとの結論になりました。」
記者達からは、「そんな重大なことを勝手に政府が決めていいのか。選挙をしろ。」「総理、退陣しろ。」「国民の話を聞け。」等々、怒号が絶え間なく聞こえてきた。
「う・る・さーい。いいですか。これだから民主主義はダメなんです。」芦破は細い目を上目使いにして、淡々と喋った。
「わたくしの、一存で何事にも決めるのが一番良いことなんです。天皇陛下には元首の返上を。」と言った時に、記者の誰かの携帯電話から歌が流れてきた。
タンタ・タンタ・タンタ・タンタ・タンタラァ・タァラァ♪ 
「ねえムーミン あたしに話して  かくしたりしないで なんでもうちあけて おばかさんね
だって そんな まさか ん~ん さーいいから 男の子でしょ だからねー あたしに話して♪」
芦破はムーミンの歌を聞いた途端、目がトロンとなり、急に神妙な顔になりながら話を再開し始めた。
 「皆さん、私はどうしようもないおバカな人間です。今からある動画をSNSにて自動配信をしますのでご覧になってください。。」
記者達はざわざわし自分の携帯電話で動画をそれぞれ確認をした。
その配信している動画は、ある料亭の一室で撮られたもので、芦破、石谷、村下とパプリチェンコが写っていて、内容はおぞましい日本国を揺るがすクーデター計画についてだった。
「総理、これはフェイクでなく事実ですか。お話しください。」「総理、総理、事由政策党の総意で企てたものですか。」「そうりーい。許されざることですよ。わかっていますか。」
場が騒然となってきた。
芦破は記者達を両手をもって制し、また話し出した。
「私は何事においても聞く耳目がなく、この舌で国民を謀ってきました。身をもってここでお詫びをしたいと思います。」と言ったとたん、芦破は両耳を両手で引きちぎり、両眼を手の両親指で潰して、最後に舌を歯でかみちぎり、「う・げぼん。」といった音と共に鮮血を吐きながら突っ伏して倒れ込んだ。
「きゃあー。」ある女性記者は芦破の壮絶な姿を見て叫んだ。
芦破が倒れている床は赤色にゆるゆると染まり始め、その中でトドに似た物体が手足共にひくひくと痙攣していた。
「誰か救急車をー。」

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