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7話・彼女の悩み1

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 あれから数日後。いつものように俺んちで漫画を読むミノリちゃんに、それとなくショウゴのことを聞いてみた。

「実は何度かメールを貰ってて」
「アイツに連絡先教えたの!?」
「リエが勝手に教えたみたいで」

 そう答えるミノリちゃんは心底嫌そうな表情をしていた。
 リエ、友だちを売るなよ。ていうか、ショウゴはマリの彼氏だろうが。いや、マリとは付き合ってないとか言ってたからその辺のしがらみはないのかもしれない。気にしているのは無関係の俺だけか?

「毎晩のように遊びのお誘いメールが届くんで、毎回同じ文面をコピペしてお断りしてます」
「あ、そう」

 女癖は悪いが、ショウゴは定職に就いている。見た目も悪くない。年頃の女性なら言い寄られて悪い気はしないだろうと思っていた。だから、ミノリちゃんが全くなびいてない様子を見て驚くと同時に安心した。

「言ったでしょ、陽キャは苦手だって」
「そうだったね~」
「この前みたいにリエたちやプーさんと一緒ならともかく、ショウゴさんと二人だけは嫌」
「陽キャだから?」
「それもあるけど、……ショウゴさんだと腕力で敵わないから一人で撃退できないし」
「なるほど」

 彼女が俺と二人きりで平気なのは、俺がひ弱な無職ニート野郎だからである。万が一の時でも自力で対処出来るから安心して俺の部屋で過ごせる。
 ショウゴは背が高くて体格も良く、腕力もある。普通の女の子では抗えないだろう。だから警戒される。
 情けない話だが、俺は弱っちいおかげでミノリちゃんの側に居られるのだ。

「ショウゴのことは置いといて、ミノリちゃんは彼氏欲しくないの? 学校に好きな奴とかいない?」
「…………」

 お、黙った。突っ込んで聞き過ぎたかな。
 沈黙の後、ミノリちゃんは持っていた漫画の本をテーブルに置き、口を開いた。

「実は、学校帰りにここに来る理由があって」
「えっ?」

 今の流れでなんでその話になるんだろう。ミノリちゃんは漫画を読むために来てるんだよね。それ以外に理由があったのか?

「私、同じ学校の男子に付きまとわれてるの」
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