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最終章 幸せの選択
39話・声を聞かせて *
初めてのお泊まりデートで浮かれているのだと思う。いつもとは違う場所と雰囲気に、お互い気持ちが昂っていた。
明かりをつけたまま行為に及ぶなんて嫌だろうに、伊咲センパイは俺の要望を聞いてくれた。しかも今夜は『思いきり抱いてほしい』と言われている。普段は事後に疲れ果てて『加減しろ』と言う癖に。
ベッドで四つん這いになった俺の下には伊咲センパイが一糸纏わぬ姿で横たわっている。恥ずかしいのか胸や股間を隠そうとするので、左右の手首を頭の上でひとつにまとめてベッドに縫い付けた。
「伊咲センパイ、綺麗」
空いているほうの手で頬から胸、脇腹を滑るように撫でていく。
「あ、ん」
くすぐったそうに眉を寄せて身を捩る姿が色っぽい。明るいところで露わになった肌、高めの体温と吐息混じりの喘ぎ声、いつもと違うシャンプーの香り。五感の全てが刺激され、情欲を駆り立てられる。
今夜は優しく抱くつもりだったのに、すぐにでも突っ込んでめちゃくちゃ腰を打ち付けてしまいたくなった。
フーッ、フーッと荒い呼吸で興奮を逃しつつ掌と舌での愛撫を続けていると、伊咲センパイが「獅堂くん」と声を掛けてきた。見上げた瞳が俺の姿を映している。
「我慢しなくていいよ」
「……ッ」
ギリギリのところで保っていた理性がぐらりと揺れる。咄嗟に唇を噛み、拳を握ってなんとか堪えた。
「いま煽られるとヤバいんすけど」
「最初から言ってるでしょ。思いきり抱いてって。加減もしなくていいから」
明るいから伊咲センパイの表情がよく見える。羞恥のせいか頬は赤いが、口元には笑みが浮かべられていた。俺に両手の自由を奪われているにも関わらず身を任せてくれている。
「後で文句言わないでくださいよ」
「言わないって約束する。……だから」
今のやり取りだけで俺のちんこは暴発寸前だ。枕元に置かれたコンドームの箱をちらりと見て装着する手順を考える。両手首を掴んでいた手を離してコンドームを取ろうとしたら、伊咲センパイが俺を止めた。間近で視線が交わり、息を呑む。
「君にたくさん愛されたい」
綺麗な瞳に真っ直ぐ見据えられ、熱を孕んだ声でこんなことを言われてしまったら自分でも止められない。荒々しい手付きで伊咲センパイの顎を掴み、飢えた獣のように唇を貪った。口内を嬲り、全てを舐め尽くす。もう片方の手を奥の窄まりに這わせ、慣らすために指先を挿し込むと、予想よりもすんなりと飲み込まれていった。
「準備してあるから、はやくきて」
「なんでそんなにエロいの!?」
辛抱できずに股を開かせて間に割り入り、既に完勃ちしていたものを突っ込む。
「っあぁ……!」
いつもより熱くて濡れている内部の感触に意識が持っていかれそうになった。すぐ果てたら勿体無い、と歯を食い縛って耐える。気持ち良過ぎて勝手に腰が動いた。
なんでこんなに気持ちいいんだろうと熱に浮かされた頭でぼんやりと考え、ふと気付く。
俺まだゴム着けてなかった、と。
「すんません、一旦抜きます」
慌てて腰を引く俺に伊咲センパイが抱きついて引き止める。戸惑う俺を下から見上げ、彼は潤んだ瞳を向けてきた。
「……このままで、いいから」
「でも」
正直このまま突きまくりたい。
直接伊咲センパイを感じたい。
だが、俺は彼を大事にしたい。
「ダメっすよ。伊咲センパイの体に負担がかかっちまうし、リスクもあるから」
「……うん」
理性を総動員して動きを堪えつつ諭せば、伊咲センパイは眉を下げて小さく頷いた。
名残惜しい気持ちを押し殺してゆっくりと引き抜く。途中でカリが引っ掛かって出そうになったがなんとか我慢した。俺、偉い。
枕元にある箱を開け、個包装の端を切って中身を取り出す。特有のゴム臭さなんか気にしていられない。くるくると根元まで下ろす間がもどかしくて、何度か手が滑った。なんとか装着し、上からローションを垂らして全体にまとわせる。
「挿れますね」
「うん、……っあ」
再度挿入すると、先ほどまでとはまた違った感覚に包まれた。薄いゴムの膜越しに体温を感じるだけで気持ち良くて、一瞬動きを止めて深呼吸する。下を見れば、伊咲センパイが口元を手で覆い隠して喘ぎを我慢していた。
「声、聞きたい」
「でも」
おねだりしてみたが、伊咲センパイは声を出すことに抵抗があるようだ。
いつもはどちらかのアパートでセックスしているので、伊咲センパイに声を抑える癖がついた。先日無理やり抱き潰した時も唇を噛んで声を押し殺していた。故に、これまで吐息混じりの小さな喘ぎ声しか聞いたことがないのである。
「ここはアパートじゃないっすよ」
「ぼ、僕の声なんか……」
「聞きたい。聞かせて」
「うぅ……」
なおも恥じらう伊咲センパイの片足を掴み、俺の肩に引っ掛ける。すると必然的に体勢が変わり、いつもとは違う部分に当たるようになった。
「あ、やだ、待って」
「手で押さえないで」
「ちょ、獅堂く……あぁっ」
また手のひらで口元を覆おうとしていたので、手首を掴んで止めた。この攻防の間にも俺は腰を止めずに動かしている。浅いところを何回か行き来した後、抉るように奥を突く。それを幾度も繰り返すと、伊咲センパイがようやく声を漏らし始めた。
「やぁっ、あっ、ああ、あっ、んっ……」
「はは、ヤバい。可愛い」
まだ控えめではあるけれど、快楽に流されてとろんとした表情で甘い声を発する伊咲センパイを見ているだけで満ち足りた気持ちになっていく。俺が彼を気持ち良くしているのだという事実が嬉しい。
「もっと声だして。俺に聞かせて」
俺の肩に掛けていた脚を下ろし、一旦引き抜いた。戸惑う伊咲センパイの体をひっくり返し、四つん這いにさせる。腰を掴んで一気に奥まで貫くと、突っ張っていた彼の腕から力が抜け、上半身がぺたりとシーツに沈み込んだ。構わず腰を打ちつけ、弱いところを狙い打つ。
「んぁっ、や、あっ、あ、あっ、もぉ」
突かれる度に短い声が伊咲センパイの唇から漏れた。呼吸のため、顔は横を向いている。彼の両手はもう俺に拘束されてはいないが、必死にシーツを握って激しい揺さぶりに耐えていた。
「ちゃんと声だして偉いっすね、可愛い」
「ば、ばか……んんっ」
時折頭を撫でながら褒めると、伊咲センパイは照れて反論するが、ナカが嬉しそうにギュッと俺を締め付けてくるから喜んでいるのがモロバレである。
「可愛過ぎて我慢できない。もっと聞かせて。もっと俺で気持ち良くなって」
「あぁ、あっ、あ、あっ」
細い腰を見下ろしながら尋ねるが、伊咲センパイには返事をする余裕はなさそうだ。ぐちゅぐちゅと胎内でローションがいやらしい音を立て、喘ぎ声と相まって俺をどうしようもないくらいに高揚させた。
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