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第1章 魔王の呪い
2話・勇者一行、大聖堂に凱旋する
しおりを挟む世界を恐怖と混沌に陥れていた最凶最悪の魔王を討ち滅ぼし、勇者一行はハイデルベルト教国最大の都市である聖都ハイドラへと帰還した。魔王城のそばで控えていた聖騎士団が傷付き疲れ果てた彼らを回収し、連れ帰ったのだ。
数日間療養して傷と疲労が癒えた頃、勇者一行は謁見のため大聖堂へと呼び出された。
ハイデルベルト教国は宗教国家である。王の代わりに教皇が国を代表し、束ね、治めている。大聖堂とは現代日本でいうところの国会議事堂のような場所と言える。
鏡のように磨き上げられた真っ白な石造りの廊下の中央に敷かれた濃紺の絨毯。案内役の後について歩く四人の姿を遠巻きに眺め、騒ぐのは美しく着飾った貴族の令嬢。彼女たちは世界を救った若者たちに熱い視線を送っていた。
「はぁ~、毎度気が重いな。謁見ちょーダルいんだけど。こっちの世界に来てまで全校朝礼の校長みたいな長ったらしい話なんか聞きたくな~い」
煌びやかな式典用全身鎧に身を包んだ少年が憂鬱そうに大きな溜め息を吐き出した。腰にはこれまた式典用の大剣を穿いている。刃のない剣だが、彼が使えば岩盤や鋼鉄の扉も軽く一刀両断できる。
「そう言うなよ『勇者様』。オレたちの凱旋を祝ってくれるんだからさ」
愚痴る少年を窘めるのは、真っ黒な生地に銀糸で精緻な刺繍が施されたローブをまとった青年だ。手にした短杖で『勇者様』の頭を軽く小突く。
「そんなのどうでもいいから早く家に戻りたいわ」
彼らの後ろを歩くのは長く艶やかな黒髪を後頭部でひとつに括っている凛とした少女である。腕や足を出したやや露出の高い動きやすい服を着ているが、これは彼女の役割の能力を発揮するための装備である。手首と足首にはそれぞれ白銀製の防具を着けている。
「同感です。これ以上仕事を休んだら腕が鈍ってしまいます」
彼女に同意するのは純白の法衣姿の青年である。勇者一行の中で最も年上で思慮深く、他の三人を精神面で支える優しさと包容力がある。
その彼ですら早く元の世界に帰りたいと願ってやまないのは、すでに最大の目的が達成されたからだろう。
彼らがハイデルベルト教国に召喚された理由は魔王ザクルドを倒すこと。
魔王は倒した。
あとは彼らが『元の世界』に戻るだけ。
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