【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第5章 エスカレートする行為

30話・僧侶の憂い

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 自分たちの特殊な力の正体について、創吾そうごはずっと考えていた。

 異世界に召喚され、宗教国家であるハイデルベルド教国の教皇から魔王討伐の役目と共に与えられた能力。宗教というからには崇め奉る神がいるのだろう。つまり、能力を与えたのはその神の御業みわざ。『僧侶』は勇者一行の中で唯一宗教国家らしい役割ジョブに思える。
 もちろん創吾は神がどんな存在かすら知らないし、信仰心もない。でも、自分の使う魔法の系統が教皇に近いような気がしていた。

 ハイデルベルト教国の教皇のみが使える異なる時空と次元を越える世界を繋ぐ魔法。
 創吾が使うのは限られた範囲の次元を僅かにずらして現実世界と切り離す空間魔法。
 支援・補助系の魔法を極めれば異なる世界を繋ぐことが可能になるのかもしれない。

 諒真は相変わらず創吾に負い目を感じている。異世界で垣間見た彼の優しさと弱さ。今は何とかなってはいるが、こんな生活は長く続かない。いつか耐え切れなくなるだろう。

 魔力を暴走させて自滅するか。
 魔王の呪いで死に至るか。

「そうなる前に何とかしたいけど……」

 大司教ルノーからの連絡はまだ来ない。
 調査が進んでいないのだろうか。魔王を倒し、異世界から魔物は消え去った。聖騎士団を阻むものは魔王城までの長く険しい道程のみ。

 ふと、諒真が使う転移魔法を思い出す。
 あれが使えれば、一度訪れた魔王城ならば瞬時に転移することが可能。さすがに十数人同時に運ぶことは出来ないが、何往復かすれば聖騎士団全員を魔王城に連れて行ける。

「今さら言っても遅いけど、呪いの調査を済ませてから元の世界に帰れば良かった」

 早く帰りたがったのは自分たちだと分かっている。呪いが日常生活に及ぼす影響を軽視したのも自分たちだ。

 考えてみれば『魔王の呪い』も条件が揃わなくては発動しない限定的なもの。果たして死の間際にそんな器用な真似が出来るだろうか。そもそも、大司教ルノーは呪いの発動条件をどうやって知ったのか。

──呪いは本当に掛かっているのか。

 確かめるには命をかけねばならず、創吾は二の足を踏んでいた。

 この呪いがなければ諒真と頻繁に会うことはなかった。元の世界に帰還した後は時々SNSで近況報告をするくらいで、その頻度も徐々に減っていっただろう。異世界に召喚される前は互いの存在すら知らなかった赤の他人だ。何の問題もなく元の生活に戻れたら疎遠になるのは当然のこと。

 今の状況で得をしているのは、諒真に会いたいと願う創吾だけ。

「──諒真くんが困っているのに喜ぶなんて、僕は本当に最低な人間だ」
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