36 / 110
第6章 2度目の異世界召喚
35話・慣れない正装
しおりを挟むなんとか湯浴みと着替えを済ませた勇者一行は祝宴会場で再び顔を合わせた。心なしか疲れた顔をしている諒真を見て、創吾がすぐに駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「単なる気疲れだから平気だよ」
会場内では招かれた高位貴族や有力者たちが歓談している最中だった。勇者一行が入場する際には誰もが話すのを中断し、視線が集まる。彼らの前で不機嫌な顔をするわけにもいかず、諒真は下手な作り笑いを浮かべてみせた。
隣に立ち、同じく愛想笑いを振りまきながら、創吾は小さな声で諒真に問い掛ける。
「……もしかして襲われました?」
「それはおまえもだろ」
「久々だったので油断しました」
「なんかされた?」
「いえ、すぐに締め出しましたけど」
生体感知魔法で様子を見たから知ってる、とは諒真は言わないでおいた。
不意打ちのようなやり方に驚いて逃げてしまったが、侍女に扮した者たちはみな魅力的だった。他の三人に遣わされた者も恐らくそうなのだろう。交際相手がいる由宇斗たちはともかく、フリーだというのに据え膳状態の異性に対し何も感じないのか、と諒真は思った。
「それにしても、何の心配もなく人前で魔法使えるのやっぱいいなぁ。元の世界じゃおまえの前でしか使えなかったからさ」
「そうですか」
笑顔で話し掛ければ創吾も笑顔で返す。
しかし、どこか普段と態度が違うように思えた。
「うーん、服が違うからかな。なんか久々にこーゆー格好すると恥ずかしい」
「似合ってますよ」
「ええ、でもコスプレみたいじゃね?」
「会場全体がこうですから、いつもの服のほうが逆に目立ちますよ」
「それもそっか」
今日は勇者一行の再召喚を祝っての宴である。凱旋でも出発の式典でもないため、四人とも貴族の正装のような衣服を着せられている。
堅苦しい服装が苦手な由宇斗は早々に上着を脱ぎ、タイを外してしまっているが、咎める者はいない。彼が世界の危機を救った勇者だからだ。早速立食形式の料理を食べまくっている。
将子は肩と膝下を露出したドレスを身に纏っている。一般的なドレスは袖も裾も長いが、動きにくいからとその場で丈を切って仕立て直しさせたらしい。髪の毛はいつものポニーテールに編み込みを足してアレンジされている。
戸惑ってばかりの諒真と違い、創吾はきちんとした正装がよく似合う。精緻な刺繍が施された高貴な衣装に全く負けていない。華やかな会場や貴族たちにも臆することなく堂々と振る舞い、受け答えや物腰もサマになっている。
「おまえ貴族とか似合いそうだな」
「柄じゃありませんよ。……あれ、なんか良い匂いしますね諒真くん」
「風呂に花が浮かべられてたんだよ」
「へえ、香水かと思いました」
「こら嗅ぐな」
四人は一緒に祝宴会場を回りながら、次から次に挨拶に訪れる招待客の相手をした。
10
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
転生×召喚
135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。
周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。
これはオマケの子イベント?!
既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。
主人公総受けです、ご注意ください。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
婚約破棄されて森に捨てられたら、フェンリルの長に一目惚れされたよ
ミクリ21 (新)
BL
婚約破棄されて森に捨てられてしまったバジル・ハラルド。
バジルはフェンリルの長ルディガー・シュヴァに一目惚れされて、フェンリルの村で暮らすことになった。
おしまいのそのあとは
makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……
オレの番になって──異世界に行って愛猫の番にされる話
まめ
BL
不慮の事故により、異世界に転移することになった神木周。
心残りは、唯一の家族だった愛猫・ネロのことだけだった。
──目覚めた草原で再会したのは、見覚えのある大きな黒い獣。ネロが追いかけてきてくれたのだ。
わからないことばかりの異世界だけど、ネロがいるからきっと大丈夫。
少しずつ心をほどき、神に招かれた世界で穏やかな毎日を楽しむ周たち。
しかし、そんな彼らに不穏な気配が忍び寄る――
一人と一匹がいちゃいちゃしながら紡ぐ、ほのぼの異世界BLファンタジー。
こんにちは異世界編 1-9 話
不穏の足音編 10-18話
首都編 19-28話
番──つがい編 29話以降
全32話
執着溺愛猫獣人×気弱男子
他サイトにも掲載しています。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
