【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

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追加エピソード

第1話:同居開始

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*同居開始~本編最終話ラストに至るまでの話*


 なし崩し的に始まった同居は意外と快適だった。

「家賃いくら払えばいい?」
「要らん」

 龍之介りゅうのすけはこのマンションの部屋を元々貯めていた結婚資金と眞耶まやの親から無理やり渡された手切れ金で購入している。半ばヤケクソで全財産突っ込んだのだ。故に月々の家賃支払いは無く管理費と修繕積立金のみ。

「じゃあ食費(酒代含む)と光熱費」
「ん」

 金の話はこれで終わった。

 そもそも龍之介は謙太けんたがここに長居するとは思っていない。寧花ねいかとの離婚の傷が癒えたら勝手に出て行くだろうと予想していた。今はただ独りで寂しい気持ちを友人に埋めてもらっているだけ。そう考えていた。

 しかし、謙太は出て行くつもりはなかった。

「今朝ゴミ出し行ったら管理人さんに会ってさあ、つい話し込んじゃって電車一本乗り遅れた」
「なにを話すことがあんだよ」
「リュウんちに住むことになったから挨拶。そしたら届け出が要るからって言われて、週末に手続きしに行く約束した」
「ふーん……、……は???」

 確かに、同居人が増える場合は申告しなくてはならない。一時的なものだったり、週に一日二日程度ならしなくてもいい場合もあるが、ずっと暮らす予定ならきちんと手続きをする決まりだ。
 謙太との暮らしは一時的なものだと思っていた龍之介には管理人に申告するという考えすらなかった。

「そんで、リュウも一緒に来てほしーんだけど。いい?」
「あ、ああ……分かった」

 じわじわと外堀を埋められていくようで、龍之介はやや引いた。




 平日の夕食は龍之介の担当だ。一人の時は適当に済ませていたが、今は謙太がいる。謙太は好き嫌いがない。何でも美味いと言ってよく食べる。少しだけ気合いの入ったメニューにしてしまうのは、やはり一緒に食べる相手がいる嬉しさからだろうか。

 お互いストレスになるのではと恐れていたのが馬鹿らしく思えるくらい、二人での生活は当たり前のように馴染んでいった。

 皮肉なことに、離婚の話を会社にした途端に謙太は完全に残業と接待がない元の部署へと異動となった。もちろん離婚原因云々は伏せている。

 新婚、それも子どもが生まれたばかりの社員に無理を強いたせいだと上司と人事部が責任を感じたらしい。地方の会社にありがちな、新婚やマイホームを持ったばかりの社員に無茶な仕事を振る悪習。謙太の離婚の原因はソレではないが、今後のためにもパワハラじみた慣習は無くなった方がいい。

 おかげで謙太は毎日ほぼ定時で上がれるようになった。その代わり月に一、二度出張がある。

「オレ明後日から泊まりで出張。二泊三日で仙台」
「ん、わかった」
「土産なにがいい?」
「仙台ってなにがあんの」
「んー……ずんだ餅とか、牛タン?」
「甘いものより肉かな」
「りょーかい」

 他愛ない会話をしながら食事をして、龍之介が片付けをしている間に謙太が風呂の支度をする。風呂上がりに軽く晩酌をして同じベッドで眠る。

 そんな日々にもだんだんと慣れていった。
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