【完結】うちのお嬢様が婚約者の第2王子から溺愛されているのに真実の愛を求めて婚約破棄しそうです。

みやこ嬢

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本編

53話:もうすぐ第1王子の結婚式が始まります

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 カリオンを通じ、ラシオスの側近ガロフには護衛を増やすように伝えた。どのタイミングで狙われるかは分からない。密かに毒味役をつけ、移動の際も必ず腕の立つ者を同伴させる等の対策が取られた。

 貴族学院にいる間は、常にヴァインの側でカラバスが見張りについている。エリルも交代で見張り役を買って出た。幸いヴァインには気に入られている。怖い男カラバスと睨み合うよりはマシ、といった程度ではあるが。

 このままラシオスを守り抜けばいい。
 ローガンとヴァインが帰国してしまえば、こんな風に警戒する日々も終わる。それはそれで寂しくなるかもしれない。ひやりとさせられることの方が多かったが、悪びれずに笑顔で声を掛けてくる彼は何故か憎めない。
 無表情の下で、そうエリルは思っていた。






「いよいよ明日ですね、結婚式」
「ええ」
「祝いの席では大人しくしているので、式を見学しても構いませんか」
「参列するローガン様に付いて会場に入られるのでしょう? 我々も止めはしませんよ」
「ありがとう」
「……?」

 改まった様子で申し出るヴァインに違和感を覚える。正式に招待されている客とその護衛だ。何もしないのなら会場入りを拒否する理由はない。
 というか、そんな権限はない。

「貴女も参加するんですか」
「いえ、私はただのメイドですので」
「着飾った姿を見てみたかったんですが」
「会場に入れたとしても給仕係ですよ」
「……そうですか、残念です」

 王宮には行く予定がある。主人であるフィーリアに付いて身支度を手伝うためだ。その後で式場やパーティー会場には密かに潜入するつもりだが、警戒対象にわざわざ言うこともない。
 言葉を濁して答えれば、寂しそうな反応が返ってきた。

 ヴァインが何を考えているのか、エリルには分からない。ただ、今の言葉だけは嘘ではないように思えた。







 翌日。
 スパルジア侯爵家は早朝から慌ただしかった。
 侯爵夫妻とフィーリアは今日の午後から行われる結婚式とその後の披露宴、そして夜会に出席する。それぞれのパーティーに応じたドレスやアクセサリー、靴、化粧道具などを予備も含めて馬車に積み込んでいく。

 フィーリア専属メイドのエリルとミントも供をする。王宮の一室を借り、そこで着替えなどの身支度をするのだ。化粧や髪のセットは手先が器用なミントの担当である。

「それも化粧道具?」

 道具箱とは別に、小瓶や布きれを小さなポーチに詰めているところを見掛け、エリルが尋ねた。

「ちょっと違うけど、必要なものよ~」
「ふうん?」

 アイデルベルド王国の情報を集めた後、ミントは密かに動いていた。何をしているのかは知らないが、彼女もフィーリアのために動いているのは確か。エリルはそれ以上尋ねることはしなかった。

 全ての支度を終えてから、エリルたちも王宮行きの馬車へと乗り込んだ。
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