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未来のはじまり
第92話:季節は巡る
しおりを挟む夏休みはほぼ勉強で終わった。
こう見えて受験生だもん。まあ隣の市にある高校一択だし、よほどのことがなければ受かるんだけど。
うちや千景ちゃんちに集まって勉強会を開いて、お兄ちゃんに勉強を教えてもらったりした。なんと、歩香ちゃんや深雪ちゃんも一緒に。
あれから色々あって、元のように仲良くなれたんだ。叶恵ちゃんが裏で努力してくれたみたい。
そういえば、あの一件以来、玲司さんが今までより更に遊びに来るようになった。相変わらずお兄ちゃんからは冷たくあしらわれてるけど、それでもめげず、手土産を持参してやってくる。
「おまえ、やっぱ大学に友達いないんだろ」
「失礼な! てか、朝陽も元気になったんならウチの大学に編入してくりゃいーじゃん!」
「やだよ面倒くさい。家から通えないし」
「朝陽が来てくれたら寮出てアパート借りようかな。一緒に住もうぜ~!」
「絶っっっ対イヤだ!!」
そんな様子を微笑ましく眺めていると、不意に玲司さんと目が合った。一瞬だけ真面目な顔をするからドキッとしたけど、すぐにいつもの明るい笑顔に戻る。
「夕月ちゃんからも朝陽に言ってやってよ~。一緒の大学行こって!」
「バカ玲司! 夕月を巻き込むな!」
「いーじゃんいーじゃん! ね、頼むよ~」
いっつもこんな感じ。気の置けないやり取りが出来るのも二人が仲がいいからだ。親友ってやつだね、と言ったらお兄ちゃんは嫌がるんだろうな。
騒がしい夏は終わり、あっという間に秋になった。
秋といえばお祭りの季節。
近所の神社では田舎らしく五穀豊穰のお祭りが行われる。
普段はいない神主さんが来て拝殿の扉が開け放たれ、氏子の人たちが慌ただしく祭りの支度に駆け回っている。
倉庫からは小さな御神輿が出され、埃を払ってからキレイに飾り付けがされた。
境内では町内会の人たちが屋台を出す準備をしている。
「……お祭り、見たいって言ってた癖に」
楽しいはずなのに、なんで悲しくなるんだろう。
いつもと違う境内を並んで歩きたかった。
屋台で買い食いしたりしたかった。
一緒に御神輿担いでみたかった。
「夕月、御神輿出るってー!」
「今行くー!」
千景ちゃんに呼ばれて境内を横断した時、人混みの中に彼の姿があった気がして立ち止まる。あたしの願望が見せた幻だったみたいで、その後いくら探しても見つからなかった。
秋も終わって寒い冬が来て、春になった。
その間にあたしはひとつ歳を取った。
十五歳。
七回の前世では十四までに必ず命を落としていたから、ここから先は完全に未知の領域。なんだか緊張しちゃう。
お兄ちゃんからも注意されたけど、お役目が解かれたからって必ず長生きできるわけではないらしい。病気になったり怪我をしたり、事故に遭う可能性だってある。健康に気を付けて慎重に生活しないと。
それと、『自己犠牲』プログラム。
これは魂に刻まれちゃってるから外せないんだって。だから、うっかりするとまた危ないことに首を突っ込んでしまいそうになる。まあ、ここまできたら、あたしの性分みたいなものだし仕方ないよね。
「この先も毎年一緒に祝おうな」
「うんっ!」
みんながくれた未来だもん。
大事に大事に生きていくよ。
桜が舞い散る高校の入学式。
真新しい制服を着て、みんなでキャーキャー騒ぎながらクラス発表の名簿を確認する。運良く千景ちゃんや夢路ちゃんと同じクラスになれて、ホッと息をついた。
「……あれ?」
「どうしたの千景ちゃん」
「夕月、見て。隣のクラスの名簿」
「え?」
千景ちゃんが指差す先。
そこに知ってる名前を見つけて、あたしは思わず悲鳴のような声を上げてしまった。
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