【完結】かみなりのむすめ。

みやこ嬢

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未来のはじまり

第93話:再会

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「え、うそ、なんで」

 周りの人たちの視線が集まり、すぐに口を塞いでその場を離れる。

 あわあわと狼狽えるあたしの背中を夢路ちゃんが撫でて落ち着かせようとしてくれた。でも、全然震えが止まらない。




「相変わらずだね、榊之宮さかきのみやさん」




 後ろから声を掛けられて振り返ると、そこには真新しい制服を着た八十神やそがみくんが立っていた。

「や、八十神、くん?」
「ひさしぶり」
「なんでここに?」
「結局誠司せいじさんのお世話になることにしたんだ。この春から市内にアパート借りて暮らしてる」
「そ、そうだったんだ……」

 玲司さんのおじいさんが八十神くんの身元引受人になり、施設から出て暮らし始めたらしい。

 また一人暮らしなんだ。
 寂しくないのかな。

「慣れてるから平気だよ」
「あ、もう! 考えてること読まないで!」
「読まなくても分かるよ、榊之宮さんすぐ顔に出るから」
「え、そう?」

 側にいる千景ちゃんたちに聞いてみたら、無言で何度も頷かれた。恥ずかしい。

 でも、もう転校とか引っ越しはしないんだよね。
 ずっとここにいるってことだよね。

「……!」

 急に八十神くんが驚いたように目を見開いた。
 どうしたんだろ。

「夕月、アンタなんで泣いてんの?」
「どこか痛い? 夕月ゆうづきちゃん」
「え? あ、やだ、なんで」

 あたしの目からはぼろぼろと涙が溢れていた。
 慌ててハンカチで拭う。
 うわあ恥ずかしい。周りの人たちからジロジロ見られてるし、今から入学式もあるのに!

「もう教室行かないと。行くよ夕月」
「わかった。じゃあ、またね八十神くん」
「うん、またね」

 同じ高校に通うなんて思わなかった。
 嬉しい。
 じゃあ、さっきの涙はきっと嬉し涙だ。






「まあっ、時哉ときやくんじゃないの! 元気だった? まさかこっちに引っ越してくるなんて! また会えて嬉しいわ!!」

 入学式を終えた後、お母さんは八十神やそがみくんを見つけて抱き着き、彼はまた顔を真っ赤にしていた。必ず遊びにくるようにと無理やり約束させられていたけど、なんだか嬉しそう。

 その後、帰る前に少しだけ二人で話をした。

「僕、榊之宮さかきのみやさんちの子に生まれたかったな」
「それお母さんに直接言いなよ、喜ぶよ」
「はは、そうかな」

 彼はお兄ちゃんと同じで、生まれた時から普通の人には見えない存在モノが見えていた。それが原因で生みの親に捨てられて児童養護施設に入っていた。
 現在は、事情を知った玲司れいじさんのおじいさんが彼を保護して生活の面倒を見ている。

 同じように生まれたのに、お兄ちゃんと八十神くんは環境によって全く違う人生を歩んだ。

 母親の深い愛情と美味しいごはん。
 それは八十神くんが憧れてやまないものだった。

 校舎の壁に背を預け、他愛のない話をして笑い合う。

 こんな風に自然に話せるようになって嬉しい。
 八十神くんが同じ学校で嬉しい。

 そう思っていたのが伝わったのか、八十神くんがあたしを見て目を細めて笑った。

「……本当に君はそういう人間なんだね」
「はい?」

 なんだか前にも同じようなことを言われた気がする。その時は心底呆れたような顔をされたけど、今は違う。穏やかな笑顔だ。

「僕に酷いことされたの、もう忘れたの?」
「わ、忘れてはないけど、あれは八十神くんのお仕事だったんでしょ? それに、最後は助けてもらったし」
「お人好し過ぎるって言われない?」
「……いっつも言われる」
「はは、だろうね」

 また笑われた。

「僕の夢と君の夢を同時に叶える方法が一つだけあるんだよね」
「へ?」

 そう言い残し、八十神くんはあたしの肩を軽く叩いてから離れていった。




 あたしの夢は可愛いおばあちゃんになること。

 八十神くんの夢は……うちの子になること。




「……どういう意味???」

 彼の言葉の意味を理解出来ず、千景ちゃんたちが探しに来てくれるまでその場に立ち尽くした。
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