【完結】世界の涯てで君と踊る

みやこ嬢

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46話・住民を救出するための作戦会議

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 予想より早くイムノスがやってきた。

 カダロードからデオガルドまでは馬車で丸二日以上かかる距離だ。俺たちに頼まれたトーレスが早馬を出した。知らせを受けてから支度をして馬車で移動を開始すれば、早馬を出してからイムノスがこちらに来るまで最低四日はかかるだろうと考えていた。

 しかし、イムノスは昼夜を問わず馬を走らせ、たった二日で到着したのである。馬車ではなく自分で馬に乗り、同じく馬に乗った兵士十数名を引き連れて現れたため、デオガルドの門番はさぞ驚いたことだろう。

「カダロードから兵士を連れてきたぞぃ! とは言っても、装備品なんかは後から荷馬車で運ばれてくるんだがのぉ」

 幾ら結界に守られた地域だろうが、年齢的にも立場的にも無茶し過ぎだと思う。トーレスは絶句していたが、ギルやフィッツは「やると思った」みたいな顔して受け入れている。

「ギルバート、無事か? 怪我はないな?」
「落ち着いてくださいイムノス様。見ての通り、私もレイも怪我ひとつありません」
「魔族に遭遇したと聞いて、居ても立っても居られんかったわぃ! 顔を見るまで気が気ではなかったぞ!」
「ご心配をおかけいたしました」

 ギルの周りをぐるぐる歩き回りながら怪我の有無を確認するイムノス。一昼夜休みなく馬を走らせてきたとは思えないほど元気でテンションが高い。あまりにも騒がしいので、トーレスが誘導して椅子に座らせ、飲み物を与えて黙らせた。

 トーレスの屋敷の応接室で、改めて今回の件を詳しく話した。バルガードと西の集落の諍い。魔族との取り引き。連れ去られた西の集落の住民。山奥にある魔族の拠点。ギルが時系列にそって起きた出来事を説明していくと、全員暗い顔で黙り込んでしまった。

 一番衝撃を受けた理由は、やはり住民が連れ去られたことだろう。

「早急に住民たちを助け出さねばのぉ」
「しかし、山の中は結界の効果範囲外です。道も整備されていない。うまく救い出せたとして、数十人を連れてどう山を降りるかが問題ですよ」
「魔物だけでなく複数の魔族がいるのだろう? 勝てる見込みがないと救出には行けん」

 イムノスとトーレスが相談しているが、話はまとまらない。フィッツは結界の効果範囲内で行動しており、護衛は野盗などの人間を想定している。魔物ならともかく魔族と戦った経験はないという。

「そもそも人間が魔族からの侵攻を防ぐ手段は結界しかない。その結界がない場所ではどうしようもない」
「グレフ神の像を山へ運び入れてはどうか」
「あんな大きなもの、馬車がなければ運べぬぞ。険しい山道で万が一破損してしまったら取り返しがつかん」

 意見は全然まとまらない。ギルとフィッツは黙って聞いている。俺と護衛たちは口を挟む立場ではないので、やはり黙って聞くしかできない。

「よろしいですか」

 しばらくして、ギルが挙手して発言した。全員の視線がギルに集中する。

「魔族の拠点には私とレイで行きます。なんとかして住民を解放するので、フィッツたちには住民の保護をお願いします。イムノス様とトーレス様は兵士と馬車を数台用意し、ふもとで待機させていただきたいのですが」

 まさかの提案に、イムノスが「は?」と声を上げた。

「馬鹿を言うでない。ギルバートにそんな危ない真似をさせられるか!」
「そうですとも。アーネスト様はグレフ神の血を引く尊き御方。みすみす魔族の元になど行かせられません!」

 イムノスに続き、トーレスも異議を唱えた。当たり前だ。グレフ神の末裔は本来一番安全な聖都で守られるべき存在であり、辺境の住民を救うために危険に晒すなど言語道断。流石に『それなら住民を見捨てよう』とは誰も口に出さなかったが、天秤にかければギルが載せられた皿が下がることは明白。

 だからこそ、ギルは自分から申し出た。

「もちろん無策で挑むつもりはありません。私が結界の仕組みを研究していることはご存知ですよね? イムノス様がデオガルドに来られるまでの間、色々と作っていたのです」

 そう言って、懐から小さな丸いものを幾つか取り出し、テーブルの上に並べていく。魔物の骨で作った御守りだ。以前俺が貰ったものよりやや細工が粗い。

「簡易結界装置です。効果範囲が非常に狭いので使いどころが難しいのですが」
「おお……!」
「効果が無限に続くわけではありません。この大きさだと長くても数十分程度。時間稼ぎの足止めにしか使えません」

 実際、これを使ってバアルたちを足止めして山を降りてきたのだ。簡易結界装置さえ所持していれば生存率は跳ね上がる。救出作戦に希望が見え、全員の表情に希望が宿った。

「よろしいですか、アーネスト様」

 フィッツの護衛の一人が手を挙げて発言の許可を求めた。イムノスやトーレスが参加する会議だからか、俺の前での砕けた口調ではなくきちんとした言葉遣いをしている。コイツらは一応貴族の出らしいので礼儀作法は問題ない。

「半魔ぞ……レイを連れていくとのことですが、戦力としては心許ないと思います」
「我々との手合わせではなかなかの動きを見せましたが、一人でアーネスト様を守るなど荷が重いかと」

 要は、ギルが唯一連れていく護衛として俺一人では不安だと言いたいのだろう。文句をつけたいだけかと思ったのだが……。

「そこで、我々もアーネスト様の護衛として同行させていただけないでしょうか」

 まさかの申し出に、俺とギルは顔を見合わせた。

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