【完結】世界の涯てで君と踊る

みやこ嬢

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67話・動き出した状況と内容不明の手紙

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 辺境の町バルガードに派遣していた隊長が部下の兵士とともにデオガルドに帰還した。誰一人欠けることなく無傷である。早速屋敷の一階にある応接室に関係者が集められた。

「アーネスト様からお預かりした書簡と道具をバルガード代表サフール殿にお渡しし、任務を遂行していただきました。我らはバルガードにて待機していたため魔族との間でどのようなやり取りがあったかはわかりかねますが、サフール殿は無事に女たちを保護して連れ帰りました。女たちは現在バルガードで世話になっております」

 女たちを魔族の手から取り戻した。作戦は問題なく成功している。隊長からの報告に、一同は安堵の息をついた。

「では早速男たちに伝えよう。きっと喜ぶ」
「ええ、すぐにでも」

 フィッツの言葉にトーレスが笑顔で頷く。

 山奥から助け出した男たちは現在デオガルド内にある宿を一棟貸し切って住まわせている。元いた西の集落は結界装置を壊された上に魔族の拠点にされているせいで戻れなかったからだ。このままデオガルドまたは他の大陸内部の別の集落に住むか、再び辺境に戻るかは本人の意思を尊重するという。

 今後の生活は女たちが無事に戻るか否かで左右される。魔族に攫われたことで辺境から離れたいと願う者も現れるだろうし、身内が辺境にいるのなら戻りたいと選択する場合もある。たとえどちらを選んだとしても生活が安定するまでは教会が支援すると決めているらしい。

 しかし、喜んでばかりはいられない。

「サフール殿によると、アーネスト様から賜った道具を使って魔族をうまく出し抜いたとのことです。魔族の怒りを買う結果になりましたので、おそらく今度は聖都へ攻め込んで来るのではないか、と」

 隊長からの補足に応接室の空気が一気に重くなる。せっかく人間の集落を奪って拠点を構え、女も確保したというのに、これからという時に奪い返されてしまったのだ。バアルたちはさぞかし怒っていることだろう。

 繁殖のための女がいなくなれば、次は半魔族を取り返しに聖都を狙うに違いない。半魔族同士を掛け合わせれば半々の可能性で魔族が生まれるのだ。種の存続のため、必ず行動を起こすはずだ。

「それで、サフール殿からアーネスト様にお手紙をお預かりしております。どうぞ」

 懐から取り出した封筒を恭しく両手で差し出す隊長。笑顔で礼を言って受け取り、ギルはすぐに封筒の裏面を確認した。しっかり閉じられた上に封蝋が押されている状態だ。

「隊長さん、中は見ていませんね?」
「は、それはもちろん」
「そうですか。なら良いのです」

 ギルは受け取った封筒をその場で開けず、すぐに自分の懐へと仕舞い込んだ。疑問に思ったが、どうせ作戦が成功したという報告だろう。今は他に考えるべきことがあるのだから、と深く考えなかった。

「魔族に捕らわれていた住民は全員救い出しました。これで憂いなく次の段階に進めますね」

 ギルの放ったひと言で、フィッツたちやトーレス、隊長の表情がこわばる。そう、まだ終わりではない。むしろこれから魔族との戦いが始まるのだ。

 ちょうどその時、応接室に兵士が飛び込んできた。

「聖都のイムノス様より連絡がありました。指定箇所の街道の封鎖が完了したとのことです!」

 おお、と全員から声が上がった。

 現在イムノスはギルの指示で聖都に出向いている。分家当主の権限で街道の封鎖を手配しに行ったのだ。難しい仕事だが、きっちり役割を全うして報告を寄越してきた。

「アーネスト様。私はこれからデオガルドを発ち、封鎖区間の街道にある休憩施設から結界装置を撤去する作業に移ります」
「お願いします、トーレス様」

 トーレスは自分に割り振られた役割を果たすため、隊長を引き連れて応接室から出て行った。

 街道を封鎖し、結界装置を撤去することで聖都に魔族を誘き寄せる。イムノスとトーレスという協力者がいなければ実行できない作戦だ。

「ギルバート。私たちは聖都に向かえば良いのだな」
「ええ。準備出来次第出発しましょう」

 フィッツも覚悟を決めたようだ。真顔でギルと頷き合い、護衛のマリクたちと共に出て行った。応接室に残されたのは俺とギルの二人だけ。使用人たちは馬車の手配や旅支度を整えるために慌ただしく屋敷中を走り回っている。

「ギル。サフールからの手紙は読まなくていいのか?」
「後で確認します」
「……ふうん」

 素っ気なく返され、それ以上聞けなくなった。やはりギルはなにかを隠している。でも、俺にはそれがなんなのか全く見当もつかなかった。

「聖都は久々ですね。あなたと旅に出て以来です」
「なんだ、家が恋しくなったか?」

 重い空気を打破しようと軽口を叩いたつもりだったが、どうやら失敗したらしい。しまったと思いながら反応を窺うと、ギルは冷たい笑みを浮かべていた。

「あれを自分の家だと思ったことはありませんよ」

 笑顔で返された言葉に、俺はなにも言えなくなってしまった。

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