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王太子にえっちなおねだりを言わせてみました
しおりを挟むほど良く酔いが回って眠くなったようで、ローガン様が私の肩に頭を乗せてきた。
「そろそろお開きにしましょう」
「う~ん……」
声をかけても返事はない。うるさそうに唸るだけ。仕方ないので、抱き上げて寝台まで運ぶことにした。意識のない成人男性の体は重い。苦労して寝台の上に寝かせ、毛布をかけてから自室に戻ろうと踵を返した時だった。背後から服を引っ張られた。
「おや、起こしてしまいましたか」
上体を起こして私の服の裾を掴む姿に目を丸くしていると、ローガン様が不服そうに呟いた。
「……行くな、ヴァイン」
酔っているからか、頬が赤く染まっている。
「どうされました。後は寝るだけですよ」
「ならば一緒に眠ればいいだろう」
「ですが、私の部屋は隣にありますし」
どうやら私と一緒に寝たいらしい。昨夜は恐怖に怯えており、仕方なく狭い寝台で抱き合って眠ったが、今日は一人でも大丈夫そうだと思ったのに。
「言わねばわからんのか」
睨まれてしまったが、本当に意味がわからない。降参の意を示すために両手を上げ、教えを乞う。すると、ローガン様は赤い顔を更に赤くした。
「お、おまえが中途半端な触りかたをしたせいで、今頃どうしようもなくなっているのだ……!」
苦々しい表情で訴えられ、しばらく考え込む。
昨夜、宿屋に到着する前に馬車の中で射精直前まで追い込んでいた件だと思い出した。狭い寝台しかなく、しかも疲れていたので何もせずに眠っただけで終えている。あれから一日経ち、酔ったことで発散し損ねた熱が体内に燻り始めたといったところか。
「いつも勝手に触ってくるくせに、今日に限ってなぜなにもせずに離れようとする!」
「おやまあ」
私を責めることに必死で、ご自分がなにを口走っているか理解していないのだろう。上がりそうになる口角を押さえ込み、冷静さを心掛けながら寝台に腰を下ろした。
「もしかして、私に触ってほしかったのですか? お酒まで用意して、酔って前後不覚になったふりをして、私が手を出すのを期待していたのですか?」
ストレートに問えば、ローガン様は目に見えて狼狽し始めた。私の服を掴んでいた手を離し、わたわたと取り乱している。
「え、あっ、いやっ、そういうわけじゃ」
酒ではなく羞恥で真っ赤になりながら否定するローガン様。だが、素直に言葉にしないのなら、こちらも従う義理はない。
「そうですか。では、おやすみなさいませ」
寝台から離れ、恭しく頭を下げてから立ち去ろうとすれば、ローガン様が再び私の服を掴んで引き留めてきた。
「……なにか?」
「ッ」
わざと冷たく対応すると、ローガン様はびくりと体をこわばらせた。困惑した様子で私の顔色を窺っている。意地悪し過ぎたかもしれない。
「ローガン様。私にしてほしいことがあれば命じてください。言葉にしていただかなければ伝わりませんよ」
少しだけ柔らかい口調を心掛けて諭すと、ローガン様はキュッと唇を引き結んだ。彼の中では今、欲と矜持がせめぎ合っていることだろう。
しばらくの沈黙の後、ローガン様が口を開いた。
「ヴァイン、頼む」
「なにをでしょうか」
ローガン様自身が選び、ローガン様自身に求めてほしくて、察しの悪いふりをして問い返した。
──さあ、言って。
「…………さ、触ってほしい。気持ち良くしてくれ」
恥じらいながら、ローガン様は私に懇願してきた。
即座に襲い掛かりたい衝動に駆られるが、ここは我慢だ。頼まれて触っている、という体で行動せねばならない。
「かしこまりました。では、失礼します」
寝台の上に座り、ローガン様の頬へと手を伸ばす。羞恥と期待が入り混じった目が私の一挙手一投足を見守っている。赤く染まる頬を軽く撫でただけだというのに、ローガン様はびくんと肩をすくめた。
「どこをどのように触れてほしいですか?」
「えっ?」
私の問いに心底驚いた声が返ってくる。
今までは私から触っていた。だから、そういう流れになれば自然と行為が始まると思い込んでいたらしい。細かく要求しないとなにも進まないのだと悟り、またしてもローガン様は狼狽える羽目になった。
「え、えー……っと」
目を閉じて悩むローガン様。恐らく、過去の行為を思い出しているのだろう。初めて私に襲われた夜のことや、馬車の中でのあれこれを。挿入ではまだ快楽は得られない。手っ取り早く気持ち良くなりたいのなら男性器を触れと命じるはずだ。
しかし、ローガン様からの要求は予想と異なっていた。
「……く、口付けしてほしい。あの、深いやつ」
「ン゙ン゙ッ゙!!」
あまりにも可愛らしい要求に変な声が出てしまった。
まさか、ここにきて「口付け」だと?
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