引きこもり令嬢エスリーンの逆襲 婚約破棄・追放からの逆転人生の答えは魔導書にあった!

らんた

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第二章

第九話

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「失礼します」

「どうぞ」

校長室こそ執務室に入ったエスリーンが見たものは豪華三段ラックのケーキラックだった。ケーキはもちろんお菓子がたくさん積まれていた。ザ・乙女ゲームのお茶会シーンそのもの。

「どうぞ、お待ちしておりました」

「長い会話になるだろうから茶葉もたくさん用意した。それではごゆっくり」

ドアが閉まる。

「あら、作法を身に着けたのね。偉いわ」

「ええ……」

そう、これが最初のお茶会だったらまずかった。アイザックに感謝だわ。

「このケーキラック見ればわかるけど食料が大増産で飢餓の恐怖も消えたの。我が国は世界有数の食糧庫となったの」

「すごいですね」

「でもね、同時に人口爆発が起きたわ」

「……」

(そっか、医療も充実して食料が充実するとそうなってしまうのか)

「そしてあなたの発明した電動コンバインが農業者の失業を招いたの」

「ごめんなさい」

「いいえ、これは我が国が強国になるための試練なの」

「えっ!?」

「我が国は貴族共和国制。知ってるわよね?」

「はい」

「その小貴族が学校を作れば失業者の受け皿を作れる。しかも児童労働を防げる」

(――!!)

「私はこの国に『児童』という概念を導入するべきと思うの」

「そうですか……」

「そして児童を指導する教師も大量に必要なの」

(そっか!)

「そこであなたに案だけでいいの。どんな教育制度が必要なのかって」

 とっさに言われたエスリーンは前世の日本の教育制度、つまり幼稚園3年、小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年、修士2年、博士3年を書いた。

「そして義務教育は……」

「小学校6年、中学校3年」の部分に「義務教育期間」と書いた。

「なるほど。これだけじゃ失業者の受け皿として足らないわ」

(思いだすんだ、現代日本ではどうだったのかを……。そうか!)

「聖女様、年金制度と病院の建設という手もあります」

「年金?」

「高齢者になったら誰もが給付できるものです。現役世代の時に積立します。そうすれば高齢者になっても生活に困りません。もちろん医療保険も全員に導入します」

「おもしろいわね」

「人口爆発はあくまで一時的なものです。それに医療が整ってないからまだまだ多産多死社会なのです。医療が整えば人間は多数産む行為がなくなります」

(社会科の授業ってこういう内容だったよな。文系でよかった)

「さらにこの文明に適した成人教育を推進するべく職業訓練も行います。万が一失業しても一定期間雇用保険が支給されます」

「エスリーン……」

(まずい、頭おかしいのかとか言われそう!! 調子に乗ったか!?)

「それ、盟主様に言って議題に載せてくれないかしら」

「へっ?」

「なので夏休みは無しね」

(えっ?)

「水晶玉使ってヴァースキにさっそく問い合わせるわ」

(しまったー!!)

「それともう一つ」

「えっ?」

「我が国はそれほどでもありませんが西方教会で動乱が起きそうです」

「どういうこと?」

「もとからアレンジ……いいえ、本来の教えをかなり捻じ曲げた宗派で我が国にも襲撃したぐらいの宗派ですが腐敗が激しい宗派でした。その宗派が廉価で普及した本と本を片手に説教するものが多数現れて混乱に陥ってるとのこと」

(ばかな!?)

「だから北方王国も含めて危機的なのです。かの国は西方教会派です」

「世界的な宗教戦争にならなければいいのですが」

「……」

「そして説教する者がロロ大公国から来てるともっぱらの噂」

(なんで?)

「まあ、深刻な顔しないで。お菓子でも食べて頂戴」

「ええ……」

「エスリーンの魔導は軍事に転用可能なのかしら?」

(そういえば軍事に転用するなんてこと考えたことなかったわ!!)

「いいえ……」

「そうですか」

「異常です。銀狼級のみ夏休み特別講義を継続します」

(この誰もいない校舎で?しかも地下の教室で?)

「エスリーン、膨大な命がかかってるの。理解して」

(しまった、顔に出たか!?)

「大丈夫よ。これまで通り土日と午後はお昼寝タイムよ。ただし夜は鍛錬タイムですが」

「ええ~!?」

「我々教授陣が徹底的に講義して万が一の戦争に備えます」

ノック音がした。

「どうぞ」

いつものメンバー。ザック、マリアンヌ、エリックだった。

「政変が起きそうなの。急遽『銀狼級』継続よ」

「「はいっ!」」

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