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第1部
第83話 ファランさまの大事なご用
「でも、じゃあぁ、なんでここに?」
大広間じゃないと、名前はつけられない決まりとか?
「ああ、ずっと忘れていたわびをしようと思って」
わび? わびって? わさび、じゃなくて?
ぼくが、人質なのに王太子様にわがままなお願いをした罰で、わさびをたっぷり食べさせる刑に処す、とかではなく?
「わび、って――」
「心ばかりだが、少しもてなしを用意させた」
「もて、なし……?」
もってないしぃ、とかじゃなくて? もてなし?
「どうだろうか? 気に入ったか」
ファランさまが、手でこれーーっと指したのはテーブル。
「んん……?」
そういえば、立派なテーブルがあったな。
「気にいるってぇ、なに……」
そろーっとテーブルの上を見たると――
「わわわわ! わ、わーーー」
わ、しか言えない人みたいになったわけじゃなくて!
「すごい! これ、なんですか? わ、すごい!」
「サファの好きそうなものをいろいろ準備した。どうだ、気に入ったか?」
「ふぁぁぁぁ――」
体中がぴょんぴょんして、心臓もドキドキして、ちゃんと言葉にならなぃぃ。
だって、目の前には、テーブルいっぱいの、お菓子、お菓子、お菓子――
宝石みたいな小さな飴細工。
庭でみたような、いろいろなお花の形のマカロン?みたいなお菓子。
ツヤツヤの果物が乗った小さなタルト。
それに、テーブルの真ん中にドーンと置いてあるのは――
「わ、わ、これ、これ、ケーキ?」
「ああ、面白いだろう?」
「はい! すごい、これ、このケーキ、絵本? 絵本ですか?」
開いた本みたいな形をしたケーキ。
「ああ、そうだ」
「すごぉぉぉい! 絵がかいてある! 文字も! わああ!」
「ああ、それは職人が提案してくれたものだ」
「すごぉぉぉい! 本当に、ほんものの絵本みたい、でもケーキ! クリームだし、わああ!」
「気に入ったか?」
「はい! ほんとおおに、すごいですね、これ!」
頭も体も胸もぽかぽかでぴょんぴょんしそうで、すごい。
でも、そっかぁ、これ、そうなのかぁ。
「ファランさま」
「どうした?」
「これ、これ、ぼくの……ために?」
……ってこと、だよね、たぶん。こんな立派なお部屋に、こんなたくさんのかわいくておいしそうなお菓子をたくさん。
「ああ、名前を考えるのが遅くなった代わりに、喜んでくれそうなものを用意した」
「わ……」
そんな、名前のことだってぼくのお願いだし、わがままかもって思ったのに……
「お茶をしながらゆっくり名前を考えよう」
「わあ……あ、ありがとうございます!!」
すごい、すごい……ぼく、こんな、怒られるとおもって、うさたん没収だと思ってきたのに。
「どれから食べる?」
「えっとえっと、じゃあ、そのお花のを、いただきます!」
「ケーキはあとにするか?」
「はい! 絵本がもったいないので、たくさん見てから食べますっ!」
「そうか。じゃあ、先にこっちの花のマカロンを……こっちがいいか? それともこっちの花か?」
「あ、はい! それをいただきますっ」
え……そっかぁ、罰じゃないんだ。
処されるんでもないんだ。
そっかあ……
ぼくのわがままに付き合ってくれるんだぁ。
こんな、お城のパーティでも出てこないみたいな、すごいかわいいお菓子まで用意してくれて。
遅くなってごめんって、だって、ぼくが勝手にお願いしてただけなのに。
「さあ、どうぞ」
「わああ、ありがとうございますっ!」
「私は……そうだな、これにしようか」
「ふふふ」
「どうした?」
「えへへ、ありがとうございますっ」
「はは、随分気に入ったようだ。よかった」
「はいっ!」
「さて、じゃあ、さっそくその、うさたんの名前を考えようか」
「はいっ!!」
罰じゃなくておもてなし。
うさたんとバイバイじゃなくて、うさたんのお名前会議。
えへへ、ふふふ……よかったああ。
「私が少し考えてきたのは――」
「はい!」
「もこもこの毛並みから……もこちゃん、もしくは今のうさたん、の呼び名に寄せてもこたん」
「わぁぁ!」
「それから、ふわふわの手触りから……ふわわ、あとは……真っ白なのでしろちゃん……」
「ふふふ……かぁわいい」
「あとは――」
***
「……と、私が考えたのはこれくらいだ」
「わぁぁ、みんな可愛い名前、ですねえ!」
「そうか、気に入ったのがありそうなら良かった」
「はい! みんなよくて迷いますっ」
「サファは? なにか考えている名前はあるのか?」
「あ、ぼくは、ええと――」
ふふふ、どうしよかなぁぁ?
ってね、ホントはもう決めたんだぁ。
ファランさまがぁ、最初に考えてくれてやつ。
うさたん、きみのぉ、名前が決まったよぉぉ!
「ファランさま! ぼくぅ、さっきのがいいと思いますっ!」
「さっきのというと、それは――」
「はい! このうさたんの名前は、今日から『もこたん』ですっ!」
うさたん、きみはきょうから「もこたん」。
でも、たまに今までみたいにうさたん、って呼んでもいいよね。
えへへ、これからもたっくさん、よろしくね。
大広間じゃないと、名前はつけられない決まりとか?
「ああ、ずっと忘れていたわびをしようと思って」
わび? わびって? わさび、じゃなくて?
ぼくが、人質なのに王太子様にわがままなお願いをした罰で、わさびをたっぷり食べさせる刑に処す、とかではなく?
「わび、って――」
「心ばかりだが、少しもてなしを用意させた」
「もて、なし……?」
もってないしぃ、とかじゃなくて? もてなし?
「どうだろうか? 気に入ったか」
ファランさまが、手でこれーーっと指したのはテーブル。
「んん……?」
そういえば、立派なテーブルがあったな。
「気にいるってぇ、なに……」
そろーっとテーブルの上を見たると――
「わわわわ! わ、わーーー」
わ、しか言えない人みたいになったわけじゃなくて!
「すごい! これ、なんですか? わ、すごい!」
「サファの好きそうなものをいろいろ準備した。どうだ、気に入ったか?」
「ふぁぁぁぁ――」
体中がぴょんぴょんして、心臓もドキドキして、ちゃんと言葉にならなぃぃ。
だって、目の前には、テーブルいっぱいの、お菓子、お菓子、お菓子――
宝石みたいな小さな飴細工。
庭でみたような、いろいろなお花の形のマカロン?みたいなお菓子。
ツヤツヤの果物が乗った小さなタルト。
それに、テーブルの真ん中にドーンと置いてあるのは――
「わ、わ、これ、これ、ケーキ?」
「ああ、面白いだろう?」
「はい! すごい、これ、このケーキ、絵本? 絵本ですか?」
開いた本みたいな形をしたケーキ。
「ああ、そうだ」
「すごぉぉぉい! 絵がかいてある! 文字も! わああ!」
「ああ、それは職人が提案してくれたものだ」
「すごぉぉぉい! 本当に、ほんものの絵本みたい、でもケーキ! クリームだし、わああ!」
「気に入ったか?」
「はい! ほんとおおに、すごいですね、これ!」
頭も体も胸もぽかぽかでぴょんぴょんしそうで、すごい。
でも、そっかぁ、これ、そうなのかぁ。
「ファランさま」
「どうした?」
「これ、これ、ぼくの……ために?」
……ってこと、だよね、たぶん。こんな立派なお部屋に、こんなたくさんのかわいくておいしそうなお菓子をたくさん。
「ああ、名前を考えるのが遅くなった代わりに、喜んでくれそうなものを用意した」
「わ……」
そんな、名前のことだってぼくのお願いだし、わがままかもって思ったのに……
「お茶をしながらゆっくり名前を考えよう」
「わあ……あ、ありがとうございます!!」
すごい、すごい……ぼく、こんな、怒られるとおもって、うさたん没収だと思ってきたのに。
「どれから食べる?」
「えっとえっと、じゃあ、そのお花のを、いただきます!」
「ケーキはあとにするか?」
「はい! 絵本がもったいないので、たくさん見てから食べますっ!」
「そうか。じゃあ、先にこっちの花のマカロンを……こっちがいいか? それともこっちの花か?」
「あ、はい! それをいただきますっ」
え……そっかぁ、罰じゃないんだ。
処されるんでもないんだ。
そっかあ……
ぼくのわがままに付き合ってくれるんだぁ。
こんな、お城のパーティでも出てこないみたいな、すごいかわいいお菓子まで用意してくれて。
遅くなってごめんって、だって、ぼくが勝手にお願いしてただけなのに。
「さあ、どうぞ」
「わああ、ありがとうございますっ!」
「私は……そうだな、これにしようか」
「ふふふ」
「どうした?」
「えへへ、ありがとうございますっ」
「はは、随分気に入ったようだ。よかった」
「はいっ!」
「さて、じゃあ、さっそくその、うさたんの名前を考えようか」
「はいっ!!」
罰じゃなくておもてなし。
うさたんとバイバイじゃなくて、うさたんのお名前会議。
えへへ、ふふふ……よかったああ。
「私が少し考えてきたのは――」
「はい!」
「もこもこの毛並みから……もこちゃん、もしくは今のうさたん、の呼び名に寄せてもこたん」
「わぁぁ!」
「それから、ふわふわの手触りから……ふわわ、あとは……真っ白なのでしろちゃん……」
「ふふふ……かぁわいい」
「あとは――」
***
「……と、私が考えたのはこれくらいだ」
「わぁぁ、みんな可愛い名前、ですねえ!」
「そうか、気に入ったのがありそうなら良かった」
「はい! みんなよくて迷いますっ」
「サファは? なにか考えている名前はあるのか?」
「あ、ぼくは、ええと――」
ふふふ、どうしよかなぁぁ?
ってね、ホントはもう決めたんだぁ。
ファランさまがぁ、最初に考えてくれてやつ。
うさたん、きみのぉ、名前が決まったよぉぉ!
「ファランさま! ぼくぅ、さっきのがいいと思いますっ!」
「さっきのというと、それは――」
「はい! このうさたんの名前は、今日から『もこたん』ですっ!」
うさたん、きみはきょうから「もこたん」。
でも、たまに今までみたいにうさたん、って呼んでもいいよね。
えへへ、これからもたっくさん、よろしくね。
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