ローズマリーと犬

無名

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後章

Side T 12

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いつきが帰ったあとはまた一段と酷かった。
身体中が燃えるように熱くて、苦しい。
インフルエンザみたいなのにただただ性欲が渦巻いてどうにかなりそうだった。


「うっ…くぅぅぅ…っはあ…あっあっ…」


布団が汚れるのが嫌なので床のうえでのたうち回る。
えげつない角度のディルドで内壁をえぐっても、一度いつきに抱かれてからは以前のように満足しなかった。
ただただ苦しい。足りない。さびしい。おなかが寂しい。

素直に服を何着かくれと言えたらどれだけよかったか。
いつきはヒートのときに帰ってくればいいと思っているのだろうけど、今こんな状態になっていることは知らない。
オカズにするから服をくれなんて、言えるわけがない。

床に頭をこすりつけると摩擦でちりちりと皮が痛んだ。
けれどそれで正気になれるほどではない。

いつき。いつき。いつき。


こんなことになっていると知ったら嫌がるだろうか。
笑って、また甘やかしてくれそうだ。
困ったような表情と、いつくしむ目元、欲を抑えた声。
太くてしっかりした腕でおれを抱きとめる。
あんなびくりとも動かないのは怖いはずなのに、なぜか安心する。
こんなに想像出来るのが心底いやになる、とピンク色にチカチカする視界をゆがめながら笑った。

欲しい。お前のものになりたい。けど怖い。
お前に捨てられるのが怖い。

お前セックス慣れてただろ。何度かしたことあっただろ。
何人付き合ったことあるんだ。
おれに運命の番だとか甘いこと言って、…いつかほかの誰かに目移りするんじゃないのか。


「あっあっ…ひうっ…んん…あああっ」


どれだけ自分で慰めても、身体の熱は冷めやらぬ一方で心は黒くて冷たい方向に引っ張られる。
おれがお前を好きで、抱かれたくて、お前のものになりたい一方で、お前に捨てられるのが怖くて、離れたくて、ここで諦めないともっとくるしいだろと踏ん張りたがる。
全身が四方八方に引き裂かれそうだ。


「いつき…ッ! あっああああっ!!!」


前を痛いほどきつくこすりあげると、はたから見たらやばいだろってくらい身体が痙攣して達した。
…けれどまだ寂しい。足りない。苦しい。


この日は今までで一番長い夜だった。
とっとと関係を切っちゃえば楽なのに、とうなされながら思い、切れる程度の関係なら楽だろうよと自嘲がこぼれた。

どちらにも動けない。


朝方、ようやく正常に視界が開けてきたころ、やたら愛おしそうにおれを見る顔を思い出しながら意識を飛ばした。
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