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「それはそうとひかるくん、今日何日目だっけ?」
ふと気付いたように紀子が問う。
「え?」
「一週間、って期限付きじゃなかったっけ? 明がひかるくんになったのって十七日だよね?」
「うん、月曜日だった」
「じゃあ五日目か。あと二日だね」
紀子の言葉に、ひかるはふと現実を思い出す。
確かに早瀬たちが言っていたのは一週間だ。
それを過ぎたら存在を消される、とか言ってなかったっけ?
「連絡は?」
朋之が今度はまじめな顔で訊いてきた。
「まだない。輝の準備ができたら連絡するって言ってたから、たぶんまだ準備ができてないんだと思う」
「まあ、あと二日あるしな」
あと二日ある。
言葉ではそう言っているけれど、朋之の声はもう二日しかない、と言っていて。
ひかるは少し切ない目をして朋之を見た。
「ほらほらほら、そんな目しないの。二人共、あと二日しっかり楽しみなさいよ」
「紀子……」
「ちゃんとあたし、今日帰るし。泊まるつもりなんてないわよ。二人の最後のらぶらぶ、邪魔する気ないもん」
「紀ちゃん……」
「おまえ、優しいんだか酷いんだか」
内容は優しいけれど、“最後”なんて言うかなりキツイ単語を使ってくれる。
「丁度良かったじゃん、土日だし。心行くまでえっちでもしてれば?」
そのはすっぱな口調が、紀子が自分もひかると別れることの寂しさを感じているからだと気付いたひかるは、箸を置いて紀子を見つめた。
「紀子」
「あー、カニおいし。あ、ひかるくんカキフライもう食べないの? あたし、もらっちゃうよ?」
ひかるは紀子のそんな言葉を放って彼女の背後に回り、ぎゅっと抱きしめた。
「ち、ちょおっとひかるくん! こーゆーことする対象が違うでしょ。あたしはキミの“紀子”じゃないってば」
「紀子だよ」
朋之も優しい目でひかると紀子の抱擁を見つめる。
そこには嫉妬心なんてなかった。
「ひかるくん」
「やっぱり、紀子は紀子だよ。ありがとう、いろいろ」
ひかるの言葉に、紀子は少し照れたように笑い、自分を包み込んでいるひかるの腕を軽くぽんぽんと叩いた。
「ごめんね、ひかるくん」
「何が?」
「あたしが“紀子”じゃなくて」
ひかるは首を横に振ると、
「いいんだよ。紀子は“紀子”とは違うけど、でもちゃんと紀子だから」
自分でもわからないようなことを言ってしまう。
言いたいことがちゃんと言えなかったけれど、それでも気持ちだけは伝わったらしい。
紀子は軽く頷いた。
「さ。そろそろあたし、帰るよ。しっかり食べたし」
ひかるの腕を解き、紀子は立ち上がった。
「最後、見送らないよ?」
「ん。大丈夫」
「気を付けて、って言葉はおかしいか。でも、なんて言ったらいいんだろう?」
「いいよ、何も言わなくて。今度会う時はもうちゃんと“あきら”だから」
「そっか……わかんないけど、じゃあ、またね」
いつも明たちと遊んだ後に言うように、紀子はそう言って朋之の部屋を出て行った。
ふと気付いたように紀子が問う。
「え?」
「一週間、って期限付きじゃなかったっけ? 明がひかるくんになったのって十七日だよね?」
「うん、月曜日だった」
「じゃあ五日目か。あと二日だね」
紀子の言葉に、ひかるはふと現実を思い出す。
確かに早瀬たちが言っていたのは一週間だ。
それを過ぎたら存在を消される、とか言ってなかったっけ?
「連絡は?」
朋之が今度はまじめな顔で訊いてきた。
「まだない。輝の準備ができたら連絡するって言ってたから、たぶんまだ準備ができてないんだと思う」
「まあ、あと二日あるしな」
あと二日ある。
言葉ではそう言っているけれど、朋之の声はもう二日しかない、と言っていて。
ひかるは少し切ない目をして朋之を見た。
「ほらほらほら、そんな目しないの。二人共、あと二日しっかり楽しみなさいよ」
「紀子……」
「ちゃんとあたし、今日帰るし。泊まるつもりなんてないわよ。二人の最後のらぶらぶ、邪魔する気ないもん」
「紀ちゃん……」
「おまえ、優しいんだか酷いんだか」
内容は優しいけれど、“最後”なんて言うかなりキツイ単語を使ってくれる。
「丁度良かったじゃん、土日だし。心行くまでえっちでもしてれば?」
そのはすっぱな口調が、紀子が自分もひかると別れることの寂しさを感じているからだと気付いたひかるは、箸を置いて紀子を見つめた。
「紀子」
「あー、カニおいし。あ、ひかるくんカキフライもう食べないの? あたし、もらっちゃうよ?」
ひかるは紀子のそんな言葉を放って彼女の背後に回り、ぎゅっと抱きしめた。
「ち、ちょおっとひかるくん! こーゆーことする対象が違うでしょ。あたしはキミの“紀子”じゃないってば」
「紀子だよ」
朋之も優しい目でひかると紀子の抱擁を見つめる。
そこには嫉妬心なんてなかった。
「ひかるくん」
「やっぱり、紀子は紀子だよ。ありがとう、いろいろ」
ひかるの言葉に、紀子は少し照れたように笑い、自分を包み込んでいるひかるの腕を軽くぽんぽんと叩いた。
「ごめんね、ひかるくん」
「何が?」
「あたしが“紀子”じゃなくて」
ひかるは首を横に振ると、
「いいんだよ。紀子は“紀子”とは違うけど、でもちゃんと紀子だから」
自分でもわからないようなことを言ってしまう。
言いたいことがちゃんと言えなかったけれど、それでも気持ちだけは伝わったらしい。
紀子は軽く頷いた。
「さ。そろそろあたし、帰るよ。しっかり食べたし」
ひかるの腕を解き、紀子は立ち上がった。
「最後、見送らないよ?」
「ん。大丈夫」
「気を付けて、って言葉はおかしいか。でも、なんて言ったらいいんだろう?」
「いいよ、何も言わなくて。今度会う時はもうちゃんと“あきら”だから」
「そっか……わかんないけど、じゃあ、またね」
いつも明たちと遊んだ後に言うように、紀子はそう言って朋之の部屋を出て行った。
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