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月那

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 朋之と寝てしまったことは、紀子には何も言わなくてもばれてしまっていた。
「何でだ?」
 翌日は金曜日で、二人で仲良く朋之の車で出勤した後、電話で連絡を取り合って三人で朋之の部屋へとやってきたのであった。
「当たり前じゃない。二人の顔が違う、顔が」
 帰りに鍋の材料を買い込み、本日は鍋パーティである。
 誰より炊事に慣れている朋之が先導して準備をすると、完全に何もしない女王様である紀子が真っ先に鍋の中のカニに手を出し、つまみとして買っていたスーパーのカキフライをもそもそと食べながらビールを飲んでいたひかるをカニで指差した。
「顔?」
「朋くんはニヤけてるし、ひかるくんはぼやけてる」
「何だよ、そのぼやけてるってのは」
 鍋の準備が整って、二人がいざ「デキちゃいました」宣言をする前に紀子が「ヤったでしょ?」なんてはっきりと言ってくれたのである。
「だって、初めて明が朋くんに抱かれた時も、おんなじような表情してたしさ。照れてんだか、喜んでんだかわかんないような顔」
 カニをほじくりながら紀子はさらりと言う。
「こうなることはね、わかってたのよ。だってさ、ひかるくんは結局のところ“明”なわけだし、明は朋くんに惚れちゃってるんだから」
 朋之がカニを解し、ひかるの皿へと入れる。
 その甲斐甲斐しい姿は、紀子としても既に見飽きたもの。
 朋之という男はひかるを甘やかさないではいられないのである。
「気持ちいいんでしょ、朋くんのえっちって。明がいつもゆってた。も、蕩けるって」
 自分のセリフではないけれど、ひかるは一気に赤面した。
「やーだ、ひかるくんが何で照れるのよ?」
「おまえ、はっきりモノ言い過ぎ! それでもオンナかよお?」
「オンナだからよ。すごいわよお、女の子同士のえっちの話って。喋り始めたらとことんまで話すもの。ひかるくんも、きっとキミの“紀子”の友人にはえっちの詳細は全部流れてるわよ」
 真剣な顔でそんなことを言う紀子に、ひかるは複雑な表情をした。
 どうも、この紀子と話をしていると現実の“紀子”が遠ざかってしまう。
 おまけに今の自分は朋之に抱かれた事実の方がリアルで、紀子を抱いていたという事実が遠いことのようで。
「俺、おまえといると“紀子”のこと忘れそう」
「いいじゃないか、ひかる。そのまま忘れちまえって。もうおまえは俺のモンなんだから」
「えー? なんかそれ、ヤだ。朋之のモンってのはヤだ」
「何でだよ? 昨夜はちゃんと俺のモンだって言ったら頷いただろ?」
「最中の話なんかするな! このエロじじい!」
 二人に寄ってたかって遊ばれたひかるは拗ねてそっぽを向き、カニの入った皿を持ってベッドルームの方へと逃げていった。
「おいおいひかる、どこ行ってるんだよ」
「うるせえ。おまえらなんか嫌いだ!」
 言いながらもひかるは皿の中のカニを食べ尽くすだけ食べて、すぐにダイニングテーブルへと戻ってくる。
「ほら、次何食うんだ?」
「えび。あとしらたきとえのき」
「はいはい」
 紀子はカニと格闘しながら二人のらぶらぶな様子を笑いながら見ていた。
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