コレは誰の姫ですか?

月那

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 出会った瞬間こそ、響に対して硬直していた涼だったが、慣れてしまえば二人は気が合うようで。
りょっち、なんでわざわざココ入ったん? バス通って、家から結構遠くね?」
 昼食は基本的に四人で学食や中庭で採るようになっていた。
 学食のランチはお弁当として注文すれば外でも食べられるし、涼以外は自宅から持ってくるお弁当の方がメインだったので、最近では涼も自宅から昼食を用意してくることもある。

「ここって、建物結構変わってるでしょ? 五百藏大悟いおろぎだいごがデザインしたの、知ってた?」
 涼が、ここ数年でかなり有名になった建築家の名前を口にした。
「え? 知らんかった」
 響が目を丸くする。

「四つの校舎が俯瞰で見たら円になってて、中庭の植栽も四季の花を順番にずっと楽しめるように配置されてて。グランドとか体育館とか、そゆの全部五百藏大悟が計算してるんだよ。動線も見た目も、機能性も全部計算されてるって、すごくない?」
 鼻息荒く涼が言うから、
「そんなこと詳しいの、おまえだけだよ、涼」
 恵那が笑った。

「来年新しく建つホテルの建築さ、五百蔵大悟に依頼かけたらしくて、その話聞いてからいろいろ勉強してたらすっごいおもしろくなっっちゃって」
「ホテル?」
「うん。ほら、H市内の駅前」
 涼が言うと、響と土岐の動きが止まる。

「言ってなかったっけ? 涼ん家、あの佐竹グループ。こいつ、ボンボンだから」
「ボンボンじゃないし。親がホテルと旅館経営してるってだけだし」
「十分ボンボンだっつの。なー土岐。俺ら、学食代すら小遣いからやりくりしろって言われてるっつの」

 私立高校に双子で入ってるってだけでかなりの贅沢なんだから、と母にいつも言われている恵那たちである。
 しかも、中学で専願に決めて推薦貰って、一応学業特待の奨学金貰うまでが進学条件で。
 そんな超が付くほどのド平民からしてみれば、毎日バス通で昼は学食その上プラス小遣いなんて生活、羨ましいにも程がある。

「そんなんどおでも良くない? それよか、この学校の建築デザインが五百藏大悟だったから、そんなステキ建物で生活できるって、ちょお楽しくない? だからここ、来たかったの」
 うっとり、なんて表情で涼が言う。

「高校選ぶのに、その建物で選ぶって結構珍しいと思うけど」
「そりゃ、こんな近くにあるから。通えない距離じゃないし、偏差値もちょっと頑張れば大丈夫かなって感じだったし……」
 もう一つ理由はあったけれど、それには口を噤んだ。

「涼?」恵那が訝しげに首を傾げた。が、
「んーん。それにここ、吹部も盛んだったしね」と誤魔化した。

「それはある。俺は吹部目当て」
「受験前にゆーとったな、そいえば。コンクール、地区予選ではいつも金賞やし県大会どころか全国も行っとるよな、ここ」
 中学三年間恵那と同級生だった響が思い出す。
「かーちゃん、説得すんの頑張ったからなー、俺」恵那が腕を組んだ。

「でも兄弟割があるって情報仕入れたら、じゃあついでに土岐もって。あの人何考えてんだか」
「いや実際学費ゆーんは、親んとっちゃ太いんちゃうか」
「でも響は? おまえんトコは一人っ子だし、逆に言えばどこでも良かったろ?」
「ウチはほら、中学ん時にこっち引っ越して来とるし、あんまし知り合いのいーひんトコで、おかんが土岐の母ちゃんと仲ええから、一緒がいいゆーて。したらクラスまで一緒んなってもーて、笑けるわー」
「いや、おまえの意思は?」
「俺? 別にどこでん良かったし。土岐と一緒にバスケやんの、面白そうや思たし」
 黙ったまま三人の会話を聞いていた土岐が、急に話を向けられて目を丸くした。

「ま、俺も別にどこでも。決めた時点で推薦貰えるってなったら、ラクだと思ったし」
 土岐が口を開いた。
 あまり喋らないから、涼としてはまだ数えるほどしか声を聴いていない。
 恵那の声と、似てると言えば似てる。気がする。
 まだ声変わりすらしていない涼の高い声とは、全然違う。
 思いつくままに話をする恵那と違い、土岐は一言一言考えながら喋っている感じがするから、口の重い涼としては自分に近い物を感じた。

「腹立つけど、土岐は勉強はできるからな、俺と違って」
 悔しそうな恵那が、涼には可愛く見えたから少し笑った。
 双子だから、ライバル心もあるのかな、と。

「響んトコ、午後何?」
「リーダー。の後現代文。眠いシリーズやから地獄やわ。恵那んトコは?」
「物理からの数学。超絶理系シリーズ。嫌いじゃねーけど、物理が実験絡まないからこっちも眠いだろーなー」
 涼と二人でため息。
「とりあえず、お互い睡魔との闘い、頑張ろなー」

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