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その日、市内でもかなり大きなホールでコンサートが開催されていた。
午前は中学校、午後は高校、そして夕方以降は大学から一般の吹奏楽部が一同に会し、交流を兼ねて演奏を披露するコンサートであり、当然恵那たちも参加していた。
出番が午後の終盤で、他団体の演奏の鑑賞は個人の自由。当日リハも演奏の三十分前に地下にある小ホールで各団体持ち時間十分なんてものだから、恵那はホールの横にある公園で徹たち数人とまったりしていた。
当然、真面目が服を着ているという涼だから、がっつりホールで全演奏を聴くということで、別行動である。
「やっぱM女は顔面偏差値高けーなー」
演奏が終わると解散という団体が多い中、JKが数人ずつで――恐らくパート毎で――行儀よくホールを去って行く姿を見て、徹が呟いた。
「それな。あれ、クラリネットだろ? なんつーか、演奏してる姿だけ見てもお嬢様っぽいよなー」
恵那が首肯する。
大型楽器以外は手持ちで移動、なんてのはどこも同じだろう。小ぶりな楽器ケースからその担当楽器がわかる。
「俺さ、ウチのガッコは勿論吹部で選んだし、やってることも当然望んでることだけどさ、唯一女子がいねーっつのがもお、痛くてしょーがねーっつーか」
「おめえが言ってんじゃねーよ、恵那。四六時中かっわいいの侍らせてるじゃねーか」
鼻で笑って言うのは、テナーサックスの二年生である郡山辰巳。同じサックスパートの徹と仲が良く、もう一人恵那と同じ中学出身のパーカッション担当湯山奏といつだって三人でつるんでいる。
恵那を可愛がってくれているその三人の先輩と、「ホールで何時間もじっと座ってらんねー」と抜け出しているわけだが。
時々目当ての演奏だけは聴きに入っていて、コンクールでもよく競合しているM女子高校の演奏だけは四人もしっかり聴いていた。そして、その演奏が終わってホールを出ると、クダンのお嬢様がわらわらと解散している様子が目に入り。
「いくら可愛くても、涼はオトコだからなー。あれを彼女にするってわけにはいかねーだろ」
「いいじゃん、可愛けりゃオトコでも。うちのガッコ、当たり前に付き合ってんのいるぜ?」
奏がスティックで教科書をカタカタ叩きながら言う。
練習かと思いきや、ただの手クセらしい。手持ち無沙汰に授業中だってエアドラムをやっているから、今日みたいにスティックを持っていられる状況なら当たり前にそれでカタカタやっているのだ。
「ま、付き合ってる、つったって一緒に登下校したりメシ食ったり、仲良しこよしなだけだろうけどさ」
徹が突っ込むと「男同士でナニするってわけでもねーだろ」と辰巳が鼻で笑う。
「わかんねーよ? 俺、佐竹相手ならちゅうくらいイケる気がするなあ」
「あれ、奏先輩って涼、好みのタイプなんスか?」
「タイプ、タイプ。あの目はヤバい。くりんくりんに丸いわ、睫毛バサバサだわ、女子でもいいじゃんって顔してんじゃん」
へらへら笑う。
とは言え、本気じゃないのなんて、三人ともわかっている。だってこの中で唯一の彼女持ちだから。
「そゆことゆってっと、愛美ちゃんにチクるぞ?」
その彼女のことも知っている徹が言うと、
「やめてくれー。殺されるわー」相変わらずスティックを鳴らしながら天を仰いだ。
この男の発言は、基本的に掴めない。
その日、市内でもかなり大きなホールでコンサートが開催されていた。
午前は中学校、午後は高校、そして夕方以降は大学から一般の吹奏楽部が一同に会し、交流を兼ねて演奏を披露するコンサートであり、当然恵那たちも参加していた。
出番が午後の終盤で、他団体の演奏の鑑賞は個人の自由。当日リハも演奏の三十分前に地下にある小ホールで各団体持ち時間十分なんてものだから、恵那はホールの横にある公園で徹たち数人とまったりしていた。
当然、真面目が服を着ているという涼だから、がっつりホールで全演奏を聴くということで、別行動である。
「やっぱM女は顔面偏差値高けーなー」
演奏が終わると解散という団体が多い中、JKが数人ずつで――恐らくパート毎で――行儀よくホールを去って行く姿を見て、徹が呟いた。
「それな。あれ、クラリネットだろ? なんつーか、演奏してる姿だけ見てもお嬢様っぽいよなー」
恵那が首肯する。
大型楽器以外は手持ちで移動、なんてのはどこも同じだろう。小ぶりな楽器ケースからその担当楽器がわかる。
「俺さ、ウチのガッコは勿論吹部で選んだし、やってることも当然望んでることだけどさ、唯一女子がいねーっつのがもお、痛くてしょーがねーっつーか」
「おめえが言ってんじゃねーよ、恵那。四六時中かっわいいの侍らせてるじゃねーか」
鼻で笑って言うのは、テナーサックスの二年生である郡山辰巳。同じサックスパートの徹と仲が良く、もう一人恵那と同じ中学出身のパーカッション担当湯山奏といつだって三人でつるんでいる。
恵那を可愛がってくれているその三人の先輩と、「ホールで何時間もじっと座ってらんねー」と抜け出しているわけだが。
時々目当ての演奏だけは聴きに入っていて、コンクールでもよく競合しているM女子高校の演奏だけは四人もしっかり聴いていた。そして、その演奏が終わってホールを出ると、クダンのお嬢様がわらわらと解散している様子が目に入り。
「いくら可愛くても、涼はオトコだからなー。あれを彼女にするってわけにはいかねーだろ」
「いいじゃん、可愛けりゃオトコでも。うちのガッコ、当たり前に付き合ってんのいるぜ?」
奏がスティックで教科書をカタカタ叩きながら言う。
練習かと思いきや、ただの手クセらしい。手持ち無沙汰に授業中だってエアドラムをやっているから、今日みたいにスティックを持っていられる状況なら当たり前にそれでカタカタやっているのだ。
「ま、付き合ってる、つったって一緒に登下校したりメシ食ったり、仲良しこよしなだけだろうけどさ」
徹が突っ込むと「男同士でナニするってわけでもねーだろ」と辰巳が鼻で笑う。
「わかんねーよ? 俺、佐竹相手ならちゅうくらいイケる気がするなあ」
「あれ、奏先輩って涼、好みのタイプなんスか?」
「タイプ、タイプ。あの目はヤバい。くりんくりんに丸いわ、睫毛バサバサだわ、女子でもいいじゃんって顔してんじゃん」
へらへら笑う。
とは言え、本気じゃないのなんて、三人ともわかっている。だってこの中で唯一の彼女持ちだから。
「そゆことゆってっと、愛美ちゃんにチクるぞ?」
その彼女のことも知っている徹が言うと、
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