コレは誰の姫ですか?

月那

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 夕食後、再び恵那と響がバトルを始め、結局「もう、泊ってけば?」と母が言い出したのもあり、とりあえず明日は土曜日だから部活だけだしまあいっか、とばかりに涼もソファで寛いでいると。
「あー、そいえば土岐、こないだの化学の実験結果見せてんか? 俺らの班、あん時失敗したやん? 正解のデータ見せて貰おう思てたんやった」
 やっと恵那を倒した響が、四人分のカフェオレなんぞを用意していた土岐に言った。

「部屋にあるから勝手に持ってけ」
 濃い目のコーヒーをしっかりドリップさせている手を止めず、顎で促す。
 台所は母が既に片付けて、彼女は寝室で映画を観るから邪魔するなと言って部屋に籠ったのだ。
 父であるダンナはどうやら今日も午前様らしい。営業マンだから帰宅時間なんて読めないから放置している。

「はいよ」
 当たり前に土岐の部屋に向かい――二人の個室と両親の寝室は二階にある――、バトルに負けて悔しがっていた恵那が「涼のは甘めにしてやれよ」と土岐に伝えた。

「練乳使おうか?」ふ、と笑いながら土岐が涼に問いかけた。
「そこまで甘くなくても大丈夫だよ。ブラックでは飲めないけど、ミルクたっぷりのコーヒーは砂糖なくても飲めるし」
「土岐、カフェオレ作るの上手いよ。なんか、知り合いにコツ聞いて豆だって専用のをキープしてるし。な?」
 とりあえずゲームはひと段落。片付けてソファの涼の隣に座る。
「コツ、っていうほどのモンじゃないけどな。この豆で濃い目に淹れたコーヒーで作るのが、俺が気に入ってるだけの話で」
 温めたミルクと合わせて四つのカップに注ぐと、トレイに載せてリビングのローテーブルへ。

「はい。これにはちょっとだけ砂糖入れてる」
 涼は手渡されたカップをありがとうと受け取ると、思っていたより熱かったので一度テーブルに置いた。
 そして羽織っていた恵那の大き目ジャージの袖口を徐に引っ張り出して。
 再度袖越しに両掌で包み込むと、唇を突き出して“ふー、ふー”なんて息を吹きかけて軽く冷ます。
 目を細めて香を確かめ、そのほんのり甘味のあるコーヒーの優しさにふわ、と微笑んで。
 そっと唇をカップに付けると。
「あつ……」なんて小さく呟いてから、一口飲んだ。

 その一連の動きを双子が凝視していて。

「おいし……ん? 何?」
「いや……まじでカ……」
 可愛い過ぎるだろ、と恵那が言いかけて慌てて口を噤む。

 一個一個の動作が、見ている者を魅了する。しかも本人、何とも思っていないし、普通に自分の感覚で当たり前にやっているだけの仕草だから。
 キョトン、と二人を見ると、
「どうかした?」と首を傾げて。

 故意にやってるなら、まだ、いいのだ。そのあざとさを笑ってツッコんでやれる。
 でもあまりにもそれは自然で、ホットカフェオレで温まったせいで頬が少し赤く上気しているのが更に可愛さを倍増していて。

「おまえ……ねえ」
 どこからどうみても、ちょっとした美少女が半分眠い目をしてぽやんとしてるとしか、思えないから。
 恵那が呆れ返ってため息を吐いた。

「土岐ーこれ、借りる。明日コンビニでコピってくるから……ってどしたん? 二人してボけて」
 響がリビングの扉を開けながら二人を見ると。
「いや、ちょっと……」毒気に当てられた土岐が目の周りを少し赤くして一つ咳払いして。

「あ、土岐のカフェオレやん。俺も飲むー」
 と響が何気なく近寄って来た。
 そして、ソファにちょこんと座っている涼の美少女ぶりを目にして、二人の様子の意味を知る。
「……っと。おお、これはあれやな。破壊的」と苦笑して。

「涼っち、おまえ眠いんか? 可愛さマシマシでヤバいで?」
「へ?」
「いやいや。まじでかーわいいなあ」
 響が本音をぺろっと吐くと、
「僕、可愛くないし」いつものようにぷ、と膨れる。

「響、土岐の部屋には勝手に入るんだ?」
 涼一人だけ何もわかっていないから、自分を取り巻くわけのわからない空気を払拭するように話を変えた。

「そりゃ、付き合い長いし。今日かて俺は土岐の部屋に泊まるし、涼は恵那の部屋やろ? 四人一緒に寝るには狭過ぎるしな」
「ああ、そのつもりだ。でも逆に恵那の部屋、響は入ったことないんじゃないか?」
 涼の殺人的な可愛さに惑わされていた土岐が軽く首を振って、気を取り直す。
「言われてみりゃ、そーかもなあ」
「ホント? 僕、そいえば土岐の部屋は入ったこと、ない」
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