コレは誰の姫ですか?

月那

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 ミニコンサートはツツガナク、何の波風も立たないまま無情に終わり、辰巳や徹たちは項垂れてM女のハイレベルJKをただ見送ることしかできなかった。
 そう、JKとのラブ、なんて大それたことはともかく、会話一つ交わすこともできなかったのだ。
 いや挨拶くらいはしたけれど。
 所詮、男子校のモテないくんには、お嬢様JKは敷居が高すぎた。

 が、そんなことに構っていられる吹部ではない。
 月末の支部大会では、何としてでも勝ち上がって全国大会に出場したいと誰もが意気込んでいるわけで。

「油断するな! そこ! フレーズの途中でブレスしてんじゃねえ! 一息で吹ききれねーなら腹筋鍛えて出直して来い!」
 といった怒号が毎日絶え間なく響き渡る第一音楽室。
 普段はまったり天然タイプの監督――顧問の音楽教諭――も、さすがに本番が近付くにつれて気合が満ち溢れているから、一音一音への集中力が凄まじい。

Gゲーのメロディはフルートだ! それ以外はハーモニーだけ丁寧に響かせるだけで、目立つんじゃねえ! 喧しい!」
 指揮棒が飛んできそうな勢いで低音部が睨まれる。
 ここまで勝ち上がって来た演奏だけでは通じないのはみんなわかっている。プラスアルファをどれだけ出せるか。楽譜通りに楽譜以上のものを響かせる為に、個人個人がどう演奏すればいいか。
 全員が必死で合奏に集中しているから、時間の経過なんて構っていられなくて。
 ここのところ、吹部の下校時間はかなり遅くなっていた。


「お疲れ。かなりしんどそうだな、恵那」
 さすがに部活終わりに遊んでいられるほどの元気はなく、当たり前に一人で帰宅すると土岐が労ってくれた。
 バスケ部は夏休みの頭にインターハイ予選で惜しくも県代表を逃してしまい。代替わりして次の大会に向けての夏特訓は始まっているものの、吹部のような逼迫感はない。

 帰宅するなりソファにぐったりと沈み込んだ恵那に、
「コーヒー淹れてやろうか?」と声を掛けてきた。

「飲み物より食いモンがいい。腹減って死にそう」
 現在既に二十二時になろうとしている時間で、瑞浪家の夕食時間は終わっている。
 それでも吹部の現状は母もわかっているし、父もいつ帰宅するやらわからない状態なので、土岐と母が二人で夕食を済ませた後、ちゃんとそれなりに夕食は残されてはいるわけで。

「母さん今風呂入ってる。冷やし中華だし、冷蔵庫から出せば食えるハズだ」
「じゃあ出してきてー」
 調子に乗って甘ったれたことを言うと、
「はあ? それくらい自分でしろよ」と返された。

「土岐、マンガ読んでるだけだろ? それくらい、大事なオニイチャンの為にやれよー」
「下らんトコで兄貴風吹かせてんじゃねーよ」
「俺は今、ちょーお疲れなんだよ。コーヒー淹れてくれるくらいなら、冷やし中華冷蔵庫から出すくらいしてくれてもいいじゃん」
「コーヒー淹れるのは好きな作業だけど、おまえのメシの支度は好きな作業じゃねーし」

 いつもの、しょーもない口喧嘩だけれど。

「別に、いいじゃんか。台所に立つことには代わりないんだからさ」
 ちょっとだけ、いつもより恵那の口調がキツイ。
 それが疲れているせいだということは土岐だってわかっているけれど。
「好きなことやる為の動作と、したくないことをする為の動作、どっちがめんどくさいかくらい、わかるだろ」
 自分もお気に入りマンガの新刊を楽しんでいただけに、ちょっとムっとしてしまって。

「でも実際コーヒー淹れる作業のが時間かかるし、俺のメシ冷蔵庫から出すだけなんて、秒じゃねーかよ」
「だからそんな秒で終わる作業くらい、自分でやれよって話だろ」
「こっちは疲れきって帰って来てんだから、それくらいしてくれたっていいだろって」
「俺だって部活で疲れて帰って来て、母さんのメシの支度とか手伝ってるし」
「部活、つったってヒマだろ、今は。もう大会終わってんだしよ」
 さすがに、恵那のこのセリフには土岐も黙っていられなくて。

「はあ? 何が終わった、だ?」
 ムっとした土岐がそう言い放つ。
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