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涼は完全に固まっていた。
日焼け防止の為の帽子の下にタオルを被り、その上から黄色いハチマキをして。
まるっきり場違いな自分が、グランドという名の戦場で騎手になっていることに、まだ半分理解が追い付いていない。
が、そんな涼を支えている三人の馬たちは、気合十分である。
その戦場を見渡せる場所では、ブラス隊がファンファーレを演奏していた。
当然ながら、その中にはニヤついている恵那の姿もある。
時代に則ったルールということで、平和に、騎手同士がハチマキを奪い合い、それが残っている騎馬の数で勝敗を決めるという、騎馬戦。なので、特に大将がいるわけでもなければ、無理矢理馬上から引きずり降ろせ、なんてことも、今ではもうない。
が。
そこは男子校の騎馬戦である。
血気盛んなヤツらで組まれた騎馬に関しては、このファンファーレの時間に既に睨み合いが始まっているし、馬たちも鼻息荒く気合を入れているわけで。
そんな中。
どうして僕が? と涼が茫然と馬上で戸惑っているわけで。
委員長と恵那が、涼を乗せる馬たちに気合を入れていたのは数分前。
「おまえら、わかってんだろうな? おまえらが乗せるのは騎手じゃあない。姫だ。わかるか? うちの大事な大事なお姫様だ。とにかく、護れ。死守しろ。死ぬ気で護れ。いや、死んでも護れ。おまえらの骨は俺たちが拾ってやる」
騙し討ちのように恵那と委員長が結託して涼を騎馬戦にエントリーしたのには理由がある。
各クラス、騎馬は三頭というルール。五分間という決められた時間内に騎手のハチマキを奪い合い、ハチマキを取られた馬は死。そして生き残っている騎馬の数が多いチームが勝つというこの騎馬戦。
基本的に一年なんて捨てゴマであるのは必至。てことは、一年の中で一頭だけでも残っていれば俄然優位であることは確かであり。
一年C組としては、とにかく一頭だけ死守して生き残るという作戦を立て、この絶対死守する馬に涼を乗せることにしたのである。
涼を乗せる馬には、涼にほのかな恋心を抱いている猛者を選んだ。涼の為なら死ねるという者を選び、文字通り涼の為に命を張って涼を護らせるという手段に出たのだ。
残る二頭にはこの姫を乗せた馬を護る為に戦ってもらう。
実際、この涼に手出しできる人間がいるハズもないだろうから、姫を護ることはそう難しい課題ではないと踏んだわけである。
そして、前もって涼にそのことを告げれば確実に逃げられるだろうから、当然エントリーしていることは完全に秘密である。
結果、競技直前に「涼、ちょっと来て」と恵那が何の気なしに誘い、組んだ馬の上に抱っこして乗せると、「頑張れ」とだけ告げて戦場へと送り出した。
ということで、荒野の中ただ馬上で茫然としている涼がいるのである。
ファンファーレが終わり、実行委員のピストルで戦いが開始された。
涼の馬はただひたすらに、逃げることに専念している。まあ、涼は軽いからガタイのいい男三人で抱えてしまえば殆ど負荷なんてない。加えて、姫である涼に対して闘争心を向けて来る勇気のあるバカなんて基本的にいない。
ということで、委員長の行った「ちょっとハードな乗馬体験」というのもあながち間違っていないわけで。
戦場のあちこちで繰り広げられる小競り合いを尻目に、ただひたすらに走り回って逃げまくるすばしっこい馬に乗せられて、涼は内心“えなのばか、えなのばか、えなのばか”と呟いていた。
競技後、怒り狂った涼に恵那と委員長が土下座する姿を見た者は皆、“ご愁傷様”と内心鼻で笑って呟いていたという。
涼は完全に固まっていた。
日焼け防止の為の帽子の下にタオルを被り、その上から黄色いハチマキをして。
まるっきり場違いな自分が、グランドという名の戦場で騎手になっていることに、まだ半分理解が追い付いていない。
が、そんな涼を支えている三人の馬たちは、気合十分である。
その戦場を見渡せる場所では、ブラス隊がファンファーレを演奏していた。
当然ながら、その中にはニヤついている恵那の姿もある。
時代に則ったルールということで、平和に、騎手同士がハチマキを奪い合い、それが残っている騎馬の数で勝敗を決めるという、騎馬戦。なので、特に大将がいるわけでもなければ、無理矢理馬上から引きずり降ろせ、なんてことも、今ではもうない。
が。
そこは男子校の騎馬戦である。
血気盛んなヤツらで組まれた騎馬に関しては、このファンファーレの時間に既に睨み合いが始まっているし、馬たちも鼻息荒く気合を入れているわけで。
そんな中。
どうして僕が? と涼が茫然と馬上で戸惑っているわけで。
委員長と恵那が、涼を乗せる馬たちに気合を入れていたのは数分前。
「おまえら、わかってんだろうな? おまえらが乗せるのは騎手じゃあない。姫だ。わかるか? うちの大事な大事なお姫様だ。とにかく、護れ。死守しろ。死ぬ気で護れ。いや、死んでも護れ。おまえらの骨は俺たちが拾ってやる」
騙し討ちのように恵那と委員長が結託して涼を騎馬戦にエントリーしたのには理由がある。
各クラス、騎馬は三頭というルール。五分間という決められた時間内に騎手のハチマキを奪い合い、ハチマキを取られた馬は死。そして生き残っている騎馬の数が多いチームが勝つというこの騎馬戦。
基本的に一年なんて捨てゴマであるのは必至。てことは、一年の中で一頭だけでも残っていれば俄然優位であることは確かであり。
一年C組としては、とにかく一頭だけ死守して生き残るという作戦を立て、この絶対死守する馬に涼を乗せることにしたのである。
涼を乗せる馬には、涼にほのかな恋心を抱いている猛者を選んだ。涼の為なら死ねるという者を選び、文字通り涼の為に命を張って涼を護らせるという手段に出たのだ。
残る二頭にはこの姫を乗せた馬を護る為に戦ってもらう。
実際、この涼に手出しできる人間がいるハズもないだろうから、姫を護ることはそう難しい課題ではないと踏んだわけである。
そして、前もって涼にそのことを告げれば確実に逃げられるだろうから、当然エントリーしていることは完全に秘密である。
結果、競技直前に「涼、ちょっと来て」と恵那が何の気なしに誘い、組んだ馬の上に抱っこして乗せると、「頑張れ」とだけ告げて戦場へと送り出した。
ということで、荒野の中ただ馬上で茫然としている涼がいるのである。
ファンファーレが終わり、実行委員のピストルで戦いが開始された。
涼の馬はただひたすらに、逃げることに専念している。まあ、涼は軽いからガタイのいい男三人で抱えてしまえば殆ど負荷なんてない。加えて、姫である涼に対して闘争心を向けて来る勇気のあるバカなんて基本的にいない。
ということで、委員長の行った「ちょっとハードな乗馬体験」というのもあながち間違っていないわけで。
戦場のあちこちで繰り広げられる小競り合いを尻目に、ただひたすらに走り回って逃げまくるすばしっこい馬に乗せられて、涼は内心“えなのばか、えなのばか、えなのばか”と呟いていた。
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