コレは誰の姫ですか?

月那

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☆☆☆

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「……涼に、さ。ストーカーしてるヤツがいたんだよ。そいつと、ちょっとやり合った」
 ため息を吐いて、仕方なくそう話すと。
「だから、相手は誰?」
 徹が問い質す。

「いんだよ。話はもう、ついてるから。もう二度と涼には近付かせないし。ヤツも相当な怪我、してっしさ。俺だってやられてばっかじゃねえよ」
「そういう問題じゃないだろう。だいたいおまえ、定演まで二か月もないこの状況で一切楽器触れないって、どういうことかわかってんのかよ?」
「あ、それ。徹先輩ありがと。センセにソロ、没収されるトコだったわー」
 掴みかからんばかりの徹に向かってへらへらと言うから。
「恵那!」
 さすがに辰巳が声を荒らげた。

「ふざけてんなよ。おまえがそんな顔してんの、俺らがどんな気持ちで見てると思ってんだよ」
「相手の名前、おまえが言わなくても俺らで探し出すぞ?」
 辰巳に続いて奏が低い声で言った。

「勘弁してよー。俺は俺なりに涼、護りたかっただけだしさ。こんなんかすり傷、かすり傷。多少の傷、ハクが付いて男前度、アップしてっしさ」
「恵那。まじな話、その傷作った相手、俺らがボコってやりたいって、わかるか?」
「…………」
 普段恵那と同じようにただただへらへらしている奏。それは、元来目つきがあまり良くないから、下手に真面目な表情をして見せたり、ちょっとでもキツい顔をしたならば確実に相手を睨んでいるとしか見えない。
 喧嘩を売ってるわけじゃないから、といつだってへらへら笑っている奏だから。
 こうして、本気で睨むように見ればかなりの強面になる。

「俺らが今、運動部にとって大事な大会前と同じ状況だってことは、このガッコの連中なら大抵わかってるハズだよな? その吹部の大事な利き腕が、使い物にならねえ状態になるっつーのはさ、部員全員がキれるトコだ」
「いや、奏先輩、それは俺もよくわかってる。こいつを負傷したのは純粋に俺のミスだ。それに、喧嘩したってことが公になったら定演さえできなくなる。それもあるから、これはただの俺の不注意ってことにしてんだよ」


 藤堂に説き伏せられ、嘉山とも話し合ってお互いにそう決めた。
 恵那にしてみれば吹部が涼の次に大事なわけで、嘉山は嘉山で大学受験の推薦が取り消しになっても困る状況だから。
 
「ごめん。全部わかってて、でもどうしても、止めらんなかった。ちゃんと、話し合って解決させるべきだったって、今ならわかるよ。でも……ごめん。俺、そこまで冷静になれんかったわ」
 喧嘩を売られて、つい買ってしまったのは自分で。
 だからこんな怪我をしているのは全部自分が悪いわけで。
 涼の“自業自得”ってセリフが身に染みる。

「おまえが佐竹を大事に想ってるのは、知ってる」
 徹が大きくため息を吐いて。
「その大事な佐竹、護りたいって気持ち、わかるよ。だから、もう自分を責めなくていい」
「俺ら、別に恵那を責めてるわけじゃねーよ」
 辰巳が徹に続く。そして、おまえ殴ったヤツが赦せないだけだ、と小さく呟いた。

「辰巳先輩も、ごめん。俺、思ったより敵いたんだなーってちょっと反省してる」
「なん、それ? 相手はおまえのこと、わかった上で殴って来たのか?」
 奏が再び目つきをキツくするから、慌てて「いや、まあそりゃ、可愛いアイドル涼ちゃんの傍にいる目障りなヤツってことでさ」軽く笑って手をひらひらと振ってみせた。

「だから、ほんと。二週間くらいかなー、先輩ら、ちょーっと寂しいかもしんねーけど、ま、暫く我慢してね、俺いないの」
 わざと明るく、涼のマネをして“可愛い”フリをしてみせて。
 でも、三人とも苦い顔をしているのを消せないでいるから。
「も、怖い顔してんじゃねーよ。ほら、パー練あんだろ? 山中たち、待ってっから」
 行こ、行こ、と三人の背中を押して教室を出る。

「心配かけて、ごめん。ありがと」
 その背中に、小さく、けれども真剣な声で言うと。
「じゃ、俺、帰るし。みんなによろしくー」
 いつものように明るい笑顔を、傷だらけの顔で見せて手を振った。
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