コレは誰の姫ですか?

月那

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 三月に入り、学年末考査期間となる為一週間強、部活動は一切の停止期間となる。
 当たり前のように恵那たちの家で四人、集まって勉強しているわけで。
「くっそ。怪我がもーちょっと長引けば、テストも逃げられたのになー」
 恵那が復活した左手で器用にシャーペンを回しながらボヤく。

「これ以上長引いたら、それこそ定期演奏会になんて出られないんだからね!」
 涼が諫めると恵那が舌を出して変顔で誤魔化した。

「全くもう。卒業式も出られないし、テスト期間合わせたら一か月近く楽器触れてないんだから。えなはもうちょっと反省しなさい」
 三月頭の卒業式、在校生として出席するのは生徒会役員や卒業式実行委員と、演奏担当の吹奏楽部のみ。だから、吹部だけは先輩を全員で見送ることができるわけで。
 なのに、部活出禁を食らった恵那は怪我こそ完治していたけれど卒業式には出席できなかったのだ。

「ま、三年みんな定演で会うし、どってことねーし」
「そういう問題じゃないでしょ。せっかく部員全員で送り出せるっていうのに、もう」
「涼っち、ぶちぶち言ってるけど、恵那にまいんち演奏聴かせたったんやろ。どんだけ甘やかしてんねん」
 響が、まーた痴話喧嘩始めよって、と苦笑する。
「だって……耳だけでも演奏に参加してた方がいいと思ったし」
 
 部活出禁の間、毎日合奏を録音しては恵那に聴かせる為に瑞浪家に足繁く通っていた涼である。
 利き腕が使えないのは不便だろうと食事も手伝うし、学校のノートも恵那の為にきちんととってそれをコピーして。
 献身的に恵那のお世話をしていた涼だから、恵那に対してお説教するのもただの愛情でしかない。

「しっかし、ほんまびっくりしたわー。恵那がお化けみたいな顔して“階段から落ちた”なんてふざけたことゆーてたんは」
「おまけに誰と喧嘩したか、絶対に口、割らないし」
 響と土岐に突っ込まれ、「だって階段から落ちただけだしー」とくふくふいつものようにいたずらっぽく恵那が嗤う。

「おまえ、それが通用すると思うか?」
「通用しねーと困るんだよ。ガッコにはそれで通してんだからさ」
 実際、通用するわけがないから。涼の家に泊まった翌日、学校から帰ると藤堂と母が難しい顔で話をしていて。
 いろいろオトナ事情を藤堂が掛け合って、なんとか不慮の事故として片付けていたけれど、それも含め、母親から鬼のように叱られた。

「ひっさびさにかーちゃんにガチで怒られた。あれはまじ、こえー」
 傷だらけだったから殴られることこそなかったけれど、涼の家に迷惑をかけたことを死ぬほど怒られ、相手については藤堂が頑なに口を割らなかったから、とにかくそれを問い詰められ。
 涼の母に平謝りして、逆に謝られたらしく、状況が飲み込めない母が冷静に怒るという状態は、とにかく精神的にかなりキツかったわけで。

「結局あれだろ? 藤堂さんが裏で全部片づけてくれたから普通に学校も行けてるんだろ?」
 土岐に言われ、曖昧に頷く。
「さすがに恵那もいい加減懲りたやろ? あかんで、大人しいしとかんと」
「反省してマス。もう二度とバカな真似はしません」
 藤堂に約束させられたから。
 それに。
 ちゃんとその約束を守らないと。このまま涼と付き合い続けることは赦されない。
 涼は本来ちゃんとしたイイトコのお坊ちゃまだから。
 
「そんなことより、試験終わってすぐ涼の誕生日だろ? うちで誕生日会しようぜ」
 もうその件をこれ以上ほじくられたくないから、恵那が話を変えて涼に笑いかけた。
「あ、覚えててくれたんだ」
 涼の表情が一気に華やぐ。
「当たり前。ホワイトデーだし、お返しもしないとな」
「涼っち、誕生日がホワイトデーなんや? ほしたら、今までチョコ貰ってもお返しとかしてきーひんやったん?」
「そもそも、本命チョコをバレンタインに貰ったこと、ないもん。身内とかギリとかだけだし」
 どーせモテませんよー、と軽く響を睨んで。

「え、まじで?」
「えーえー、モテモテえなとは違いますからねー」
「あー、女子にしてみりゃただのライバルかー」
 こんだけ可愛けりゃな、と恵那がうんうん頷くからとりあえず涼に叩かれるわけで。

「ホワイトデーかー。ほな、誕プレとは別に三人からなんかプレゼントしよっか? 涼っち、何欲しい?」
 響が問うと。
「えー……そおだなあ。あ、僕チョコ大好きだし、チョコレートケーキがいいな」
「お、あれ旨かったよ。涼が作ってくれたヤツ」
「ほんと? じゃあ、作ってよ」
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