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恵那の“吹奏楽部なのに陸上部より足が速い”という驚異的な事実に注目が集まるせいで忘れられがちではあるが、実際その双子の弟であるところの土岐の足の速さも、なかなかのモノである。
バスケ部だから当然だと言われてしまえばそれまでだが、陸上部やサッカー部という足の速さがもてはやされる部活の影に隠れているけれど、バスケ部なんてのはその瞬発力と持久力において、それらの部活には決して引けを取らない。
故に、今グランドをバスケットボールをリレーのバトンと見立てて――各部活何かしらの用具をバトンにしている――響から受け取って全力疾走している土岐は、陸上部を追い抜こうとしていて。
誰の口からも「速ええ!」の声が出る。
「土岐、響、頑張れー!」と、声高に応援する涼を、恵那はちょっとだけジェラな感情を持って遠目に見る。
とりあえず、部活対抗リレーのBGMはブラス隊の見せ場でもあるから。
吹部という看板を背負って、走る、とはまだ別の方法でこのリレーに参加しているのだ。
まさにスカパラの「Paradise Has NO BORDER」をカッコよく決めていて、ノリノリで楽しんでいる様子は今年もしっかりと場を盛り上げていて。
本来吹部専用の演奏ブースという名のテントがあるのだが、ブラス隊はその場に収まっていられるメンバーじゃなくて。ドラムだけは移動できないからそこにいるけれど、ブラスメンバーはトラックのすぐ傍で踊りながら演奏していて、それに併せて部外者も歌で参加する。
辰巳たちも今年は歌で参加して一緒に盛り上がっていた。
「ブラス隊がこれだけ盛り上がるのって、去年かららしいよ」
と、充樹が一年のテントで、ブラス隊の盛り上がりを遠目に見ながら日向に言った。
「俺らさ、やっぱ期末もあるしビビって参加できなかったけど、悠平見てたら参加しとけばよかったって後悔だよ」
「恵那先輩ってなんだかんだ、すげーよなー。あんだけ盛り上げててさ、いざ自分がリレーに出たら、サッカー部とか平気で抜き去るもんなー」
当初否定的な目で見ていた日向も、もはや恵那のファンとでも言いたいくらいその魅力に憑りつかれていて。
あらゆる人間をいつの間にか巻き込んでその場を盛り上げると、誰もがただただ“楽しい”という感情で溢れるから、きっと誰もがあの無鉄砲で傍若無人な恵那に惹かれてしまうのだ。
いつだって俺様恵那様な態度なのに、結局みんなそれを笑って赦している。
「あんな喧嘩売ってた悠平が、今や恵那先輩の隣で嬉しそうに笑ってるもんなー」
サックスの三人が目を合わせて奏でる音楽は、聴いている者の笑顔を引き出す。
恵那先輩のふざけた言動は、でもちゃんと彼の誠実さを裏に込めているから。
結局のところ、知れば知るほど深みにハマる。
徹たち三年の先輩たちが恵那先輩を可愛がっている理由が、わかる。
「あの重いバリサク抱えてあんだけノリノリで演奏しててさ、なのに次あの人、クラス対抗リレーで走るらしいんだよ。バケモンかよ」
日向が言うと、充樹が“うへー”と天を仰いだ。
「まあでも、その次の二人三脚で多分佐竹先輩とラブラブなトコ見せつけてくんだろーなー」
「あーやりそう。カップル枠じゃん、ただの」
二人が仲良くイチャイチャしてる姿も、吹部にいれば見慣れたもの。もはや誰もからかうことすらしない。
「してみるとさ、体育祭って恵那先輩の独壇場ってヤツ?」
日向のセリフに「まさにそれな」と充樹が頷いた。
「何が怖いって、走れる吹部なだけじゃなくてこないだの期末、あの人トップテン入りしたって」
土岐が三位で恵那はギリ十位、という結果が二学年棟に貼りだされていたと聞いた吹部の一年が、もうぐうの音も出なかったという。
恵那の“吹奏楽部なのに陸上部より足が速い”という驚異的な事実に注目が集まるせいで忘れられがちではあるが、実際その双子の弟であるところの土岐の足の速さも、なかなかのモノである。
バスケ部だから当然だと言われてしまえばそれまでだが、陸上部やサッカー部という足の速さがもてはやされる部活の影に隠れているけれど、バスケ部なんてのはその瞬発力と持久力において、それらの部活には決して引けを取らない。
故に、今グランドをバスケットボールをリレーのバトンと見立てて――各部活何かしらの用具をバトンにしている――響から受け取って全力疾走している土岐は、陸上部を追い抜こうとしていて。
誰の口からも「速ええ!」の声が出る。
「土岐、響、頑張れー!」と、声高に応援する涼を、恵那はちょっとだけジェラな感情を持って遠目に見る。
とりあえず、部活対抗リレーのBGMはブラス隊の見せ場でもあるから。
吹部という看板を背負って、走る、とはまだ別の方法でこのリレーに参加しているのだ。
まさにスカパラの「Paradise Has NO BORDER」をカッコよく決めていて、ノリノリで楽しんでいる様子は今年もしっかりと場を盛り上げていて。
本来吹部専用の演奏ブースという名のテントがあるのだが、ブラス隊はその場に収まっていられるメンバーじゃなくて。ドラムだけは移動できないからそこにいるけれど、ブラスメンバーはトラックのすぐ傍で踊りながら演奏していて、それに併せて部外者も歌で参加する。
辰巳たちも今年は歌で参加して一緒に盛り上がっていた。
「ブラス隊がこれだけ盛り上がるのって、去年かららしいよ」
と、充樹が一年のテントで、ブラス隊の盛り上がりを遠目に見ながら日向に言った。
「俺らさ、やっぱ期末もあるしビビって参加できなかったけど、悠平見てたら参加しとけばよかったって後悔だよ」
「恵那先輩ってなんだかんだ、すげーよなー。あんだけ盛り上げててさ、いざ自分がリレーに出たら、サッカー部とか平気で抜き去るもんなー」
当初否定的な目で見ていた日向も、もはや恵那のファンとでも言いたいくらいその魅力に憑りつかれていて。
あらゆる人間をいつの間にか巻き込んでその場を盛り上げると、誰もがただただ“楽しい”という感情で溢れるから、きっと誰もがあの無鉄砲で傍若無人な恵那に惹かれてしまうのだ。
いつだって俺様恵那様な態度なのに、結局みんなそれを笑って赦している。
「あんな喧嘩売ってた悠平が、今や恵那先輩の隣で嬉しそうに笑ってるもんなー」
サックスの三人が目を合わせて奏でる音楽は、聴いている者の笑顔を引き出す。
恵那先輩のふざけた言動は、でもちゃんと彼の誠実さを裏に込めているから。
結局のところ、知れば知るほど深みにハマる。
徹たち三年の先輩たちが恵那先輩を可愛がっている理由が、わかる。
「あの重いバリサク抱えてあんだけノリノリで演奏しててさ、なのに次あの人、クラス対抗リレーで走るらしいんだよ。バケモンかよ」
日向が言うと、充樹が“うへー”と天を仰いだ。
「まあでも、その次の二人三脚で多分佐竹先輩とラブラブなトコ見せつけてくんだろーなー」
「あーやりそう。カップル枠じゃん、ただの」
二人が仲良くイチャイチャしてる姿も、吹部にいれば見慣れたもの。もはや誰もからかうことすらしない。
「してみるとさ、体育祭って恵那先輩の独壇場ってヤツ?」
日向のセリフに「まさにそれな」と充樹が頷いた。
「何が怖いって、走れる吹部なだけじゃなくてこないだの期末、あの人トップテン入りしたって」
土岐が三位で恵那はギリ十位、という結果が二学年棟に貼りだされていたと聞いた吹部の一年が、もうぐうの音も出なかったという。
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