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「いやまじ、こんなん初めて見たけど、涼っち、隠しとったん?」
「だから、吹部の伝統的なオアソビなんだってば」
「しっかしまー、こんなカッコしたら涼っちはほんま、ふっつーに女の子やなあ」
「こんなん着たら誰でも女の子です! たまたまコレ一着しか存在しなくて、それが細めだから仕方なく僕が着てるだけだし。えなが着たって絶対女の子になれるもん」
膨れながら涼が主張するが、実際恵那が着ても似合いそうな気は響にもした。ただ、大柄な女にしかならないだろうから、美人ではあるだろうがこの“天使のような”可愛さは演出できないだろう。
「だから、お願いします! この、一着しか存在しない制服を着た佐竹先輩をぜひ、もう一度見せて頂きたい! 写真に納めて、全世界に発信したいんです!」
恵那みたいなことを言う。
「全世界はどうかと思うけど、コレって吹部の物だから僕の一存でどうにかできるもんじゃないし」
「吹部の物だと言うなら、吹部の上の方を説得します! ですから写真部の未来のために、どうか先輩のお力添えをお願いしたいんです!」
川島が必死な声で嘆願すると、他の部員も頭を下げた。
「涼っち……どないすんねん? コレ、もうおまえ、着てやらんと終わらんで?」
もはや土下座までしている川島に、「いやだ」なんて言える状況でもなくて。
「別に、着るのは構わないけど。でも、僕ってわかんないようにして欲しいなー、できれば」
「え! ……涼、いいのか?」驚いたのは土岐で。まさか涼が引き受けるなんて思ってもみなかった様子で目を見開いた。
「ん? まあ、別に。えながいつも言ってんだよね。人に姫扱いされるのはイヤだけど、自分が姫になりきるのは楽しんでしまえばどってことないって。つまりは気の持ちようってヤツだから、僕としてはもう、そのカッコは慣れたし」
多分、コレを二回以上着た生徒は誰もいないだろう。ならば開き直って、どうだ僕の姫、可愛いでしょ、なんてやってしまった方が、全然いい。恵那とこれだけ一緒にいれば、ドヤって見せるのも慣れたものだ。
「涼……」
「せっかくだからさ、もう僕じゃなくてただの“アイドル佐竹涼”になりきって、女装して女の子のフリしたげるよ。あ、てことは、ひょっとしてファンクラブさんだったりする?」
遠くから常に見守ってくれているらしいファンクラブ会員さんたちの存在は、涼としてはもう「勝手にやっといてください」と放置しているから。
「あ、僕、会員です。こないだのクイーン投票にも一票入れてますし、先輩がクイーンになってめちゃくちゃ嬉しいです」
川島の横にいたメガネの男がそう手を上げた。
「うわ、まじでいた。僕、幹部さん以外は会ったことないから、初めて見たよー」
ほんとに存在してるんだー、なんて涼がくすくす笑って。面白いから握手なんてしてやる。すると彼は真っ赤になってその場に崩れ落ちる。
「え?」
「涼様に、握手して貰った……この右手、僕は一生洗わない」
その右手を大切そうに抱え込むから「やめて、そんな汚いことしないで」ととりあえずツッコんでおいた。
「えと……ちょっと、待って。涼……おまえ、面白がってないか?」
土岐が唖然とした表情のまま呟くように言った。
「なんかねー。えなといると、こんなの全然当たり前になっちゃって。最初、声掛けられた時は一瞬泣きそうになったけど、ほら、土岐たち来てくれたから」
何よりもその場を楽しむ恵那が、涼のマイナス思考をかなりプラス方向へと導いてくれたみたいで。
女みたいだと揶揄されるならば立ち向かって行くけれど、こうして女のコみたいに可愛いなんてもてはやしてくれるのならば、ノっかって楽しんだ方がいい。
自分が華奢であることはもう覆せない事実で。いつだって、誰にだって開口一番“可愛い”なんて言われてしまうのだから、だったらそれを嫌がるんじゃなくて、逆手にとってドヤってしまえばいい。
恵那がそうやって、自分を強くしてくれた。
だから、今はこんな風に笑ってこの場を楽しめる。
笑っている涼に、響も肩の力が抜ける。
「涼っちが楽しんでるならええねんけどな」
「ん。心配してくれてありがと。でも、大丈夫だよ。実際にモデルやる時には、きっとえなもくっついてくるだろうしねー」
どうだ俺の涼可愛いだろ、と誰よりもドヤ顔でふんぞり返っている恵那が響たちにも想像できたから。三人でひとしきり笑って。
詳細についてはまた改めて連絡する、と川島が言って解放してくれたので、三人でバス停まで歩いた。
「だから、吹部の伝統的なオアソビなんだってば」
「しっかしまー、こんなカッコしたら涼っちはほんま、ふっつーに女の子やなあ」
「こんなん着たら誰でも女の子です! たまたまコレ一着しか存在しなくて、それが細めだから仕方なく僕が着てるだけだし。えなが着たって絶対女の子になれるもん」
膨れながら涼が主張するが、実際恵那が着ても似合いそうな気は響にもした。ただ、大柄な女にしかならないだろうから、美人ではあるだろうがこの“天使のような”可愛さは演出できないだろう。
「だから、お願いします! この、一着しか存在しない制服を着た佐竹先輩をぜひ、もう一度見せて頂きたい! 写真に納めて、全世界に発信したいんです!」
恵那みたいなことを言う。
「全世界はどうかと思うけど、コレって吹部の物だから僕の一存でどうにかできるもんじゃないし」
「吹部の物だと言うなら、吹部の上の方を説得します! ですから写真部の未来のために、どうか先輩のお力添えをお願いしたいんです!」
川島が必死な声で嘆願すると、他の部員も頭を下げた。
「涼っち……どないすんねん? コレ、もうおまえ、着てやらんと終わらんで?」
もはや土下座までしている川島に、「いやだ」なんて言える状況でもなくて。
「別に、着るのは構わないけど。でも、僕ってわかんないようにして欲しいなー、できれば」
「え! ……涼、いいのか?」驚いたのは土岐で。まさか涼が引き受けるなんて思ってもみなかった様子で目を見開いた。
「ん? まあ、別に。えながいつも言ってんだよね。人に姫扱いされるのはイヤだけど、自分が姫になりきるのは楽しんでしまえばどってことないって。つまりは気の持ちようってヤツだから、僕としてはもう、そのカッコは慣れたし」
多分、コレを二回以上着た生徒は誰もいないだろう。ならば開き直って、どうだ僕の姫、可愛いでしょ、なんてやってしまった方が、全然いい。恵那とこれだけ一緒にいれば、ドヤって見せるのも慣れたものだ。
「涼……」
「せっかくだからさ、もう僕じゃなくてただの“アイドル佐竹涼”になりきって、女装して女の子のフリしたげるよ。あ、てことは、ひょっとしてファンクラブさんだったりする?」
遠くから常に見守ってくれているらしいファンクラブ会員さんたちの存在は、涼としてはもう「勝手にやっといてください」と放置しているから。
「あ、僕、会員です。こないだのクイーン投票にも一票入れてますし、先輩がクイーンになってめちゃくちゃ嬉しいです」
川島の横にいたメガネの男がそう手を上げた。
「うわ、まじでいた。僕、幹部さん以外は会ったことないから、初めて見たよー」
ほんとに存在してるんだー、なんて涼がくすくす笑って。面白いから握手なんてしてやる。すると彼は真っ赤になってその場に崩れ落ちる。
「え?」
「涼様に、握手して貰った……この右手、僕は一生洗わない」
その右手を大切そうに抱え込むから「やめて、そんな汚いことしないで」ととりあえずツッコんでおいた。
「えと……ちょっと、待って。涼……おまえ、面白がってないか?」
土岐が唖然とした表情のまま呟くように言った。
「なんかねー。えなといると、こんなの全然当たり前になっちゃって。最初、声掛けられた時は一瞬泣きそうになったけど、ほら、土岐たち来てくれたから」
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女みたいだと揶揄されるならば立ち向かって行くけれど、こうして女のコみたいに可愛いなんてもてはやしてくれるのならば、ノっかって楽しんだ方がいい。
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恵那がそうやって、自分を強くしてくれた。
だから、今はこんな風に笑ってこの場を楽しめる。
笑っている涼に、響も肩の力が抜ける。
「涼っちが楽しんでるならええねんけどな」
「ん。心配してくれてありがと。でも、大丈夫だよ。実際にモデルやる時には、きっとえなもくっついてくるだろうしねー」
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