コレは誰の姫ですか?

月那

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「どうしましょうかねえ」
 涼の部屋の前、馬場が呟いた。
 学校から一人で帰って来るなり、部屋に籠ってしまった涼。
 しっかりした防音設備が整っている部屋だから、何も聴こえてはこない。
 呼ばれるまでは入って行くことも許されない。
 でも、様子がおかしかったから、気になって仕方がない。

「恐らく、恵那さんのせいでしょうね」
 藤堂が腕を組んで眉根を寄せる。
 あの日、涼の部屋に泊まると言っていたのに、一人で部屋を出て行った恵那に藤堂が気付いた。
 時間が時間なだけに、「家までお送りしましょうか」と言ったけれど、小さく首を振って一人で走って行ってしまった。

 だから、恐らくこんな“クリスマスイブ”なんて華やかな日に“涼は俺のだ”なんていつも大口叩いていた恵那が、涼を放置しているという事実に、その原因が恵那であることは間違いない。

「喧嘩、ですかね?」
「でしょうな。誰とも喧嘩しないって約束していたハズなのに。よりにもよって涼様と喧嘩するなんて」
 恵那が涼の傍にいる、という事実にもあまりいい感情は頂いていなかった藤堂である。
 でも、だからと言って涼が寂しく泣いているのなんて、あり得ないから。
 なんだってあの男は、涼様を泣かすんだ? と、心の底から憎たらしいと思ってしまう。

「まあ、男の子なんて喧嘩して仲良くなるって言いますからねえ」
「……喧嘩はご法度だと、恵那さんには言っておいたんですが」
「そういうイミでの喧嘩は、しないですよあの二人は」
 恵那が涼に手を出すなんてあり得ない。
 涼に降りかかる火の粉はどんな小さなものでも振り払うし、その為に命を張ってしまうくらいの愛情。馬場は恵那からそんな意気込みを感じていたから。

 あの日。
 満身創痍で、でも当たり前だけれど涼には指一本も触れさせていなかった。
 自分の血まみれになった手、それにさえも触れさせない。
 涼を汚さない、涼を穢さない。その意気込みは、あんなにも傷だらけになっていたのに、全身の毛を逆立てるようにして相手の男に対峙していたから。

 馬場の知る恵那は、涼を護る番犬のようなもので。
 きっと、ご主人様に嫌われたと拗ねてしまったのだろう。
「どうせ、またすぐに懐いて、この家にもやってきますよ、あのコは」
 馬場がふふ、と笑った。

「どっちでもいいですよ。涼様が泣かないで過ごされるんでしたらね」
 藤堂が、小さくため息を吐きながら言った。
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