コレは誰の姫ですか?

月那

文字の大きさ
214 / 231
<6>

☆☆☆

しおりを挟む
 実際のトコ、恵那だって悠平のことは今吹部で一番可愛がっていると言っても過言ではない。
 こっちのやりたいことをすぐに察して動いてくれるし、時々煮詰まってたらちゃんと面白い意見も出してくれる。
 だからこそ育てたいと思ったし、サポートして欲しいと思っていて。
 プライベートだって、こっちが触れてほしくないトコには突っ込まないでくれたし、ただ黙って一緒にいてくれて。
 それが居心地イイからいつだって一緒にいたし、何より涼のことを考えないでいられたのが癒しになっていたのは確かで。

 くっそ、徹先輩のせいだ。
 と、内心毒づく。
 あの人たちがいらないお節介を焼いて、だからこの真っ正直なピュアピュアボーイがこうして斬り込んで来たわけで。
 ……こいつも、涼に負けず劣らず“ピュアピュア”なヤツだな、と思わぬ二人の共通点が見つかり、恵那としてはこの状況だというのに“可愛いヤツめ”なんて思ってしまう。

「恵那。俺、でもまじだから」
 とりあえず、さっきまでの興奮は深呼吸で落ち着いたらしい悠平が、小さく呟くように言った。

「あんたが、佐竹先輩のこと想って泣いてるの、もう見たくない」
「……泣いてねーし」
「泣いてんだっつの。あれだろ、クリスマスイブにフられたんだろ? あん時からずっと、あんたぼやっとして佐竹先輩の前では空元気でバカみたいに笑って。それ、見てて痛々しいんだよ」
「……ちげーし。フられたの、俺の誕生日だし」

 思い出したら、本気で泣けてくる。
 なんだって、俺は自分の誕生日に好きなヤツにフられて、夜中に二時間近くも全力疾走しなきゃなんなかったんだろう。
 ほんと、最悪な誕生日。
 素直にグチると。

「恵那……可哀想」なんて憐憫の目を向けて来た。
「うっせー、ばーか!」
 憐れまれると余計に傷付く。から、ムカついてとりあえず睨んでおく。

「だから。俺にしろっつってんだよ。俺なら、あんたのこと泣かせねーし。こっから先のあんたの誕生日、毎年隣にいてやるし」
「おいおい、まじで口説いてんじゃねーよ。そーゆーセリフは女の子相手に言うもんだっつの」
「女の子じゃなくても、恵那は姫だし」
「はあ? まだ言うか!」
「姫だよ。俺にとってはもう、絶対に姫だ」
「だから喧嘩売ってんのかっつの。ほんと、まじムカつくヤロウだな」

 人から“姫”扱いされるのが一番ムカつく恵那だから、イラついて拳を構える。
「久々に勝負でもするか? 二度と俺のこと、姫扱いさせねーぞ?」

「……わかった。恵那が嫌がるなら、もう言わない。でも、俺にとってはあんたは大事な存在だ」
 頭にきて構えたファイティングポーズだったけれど、悠平が掌でそれを包み込んだ。

「あんたにとって佐竹先輩が絶対的な姫だったんだろうけど、俺にはあんたがそういう存在なんだ。だから……俺はあんたを泣かせたくない」
 悠平は、冷静な声で言ってそっと恵那を抱きしめた。
 さすがにさっきのように興奮した様子ではなくて、まだ友達の“ハグ”に近いものを感じたから、恵那も振り解くことなくその腕に包まれる。

「今すぐ、俺に惚れろとは言わない。あんたが佐竹先輩のこと好きだって気持ちが大きかった分、それが消えるのに時間かかるのも、わかる」
 静かに背中を撫でている悠平の手が暖かくて。
 されるがままに、身を預ける。

「だから、頑張ってあの人の横で笑ってんだったら、俺の腕ん中でいくらでも泣いたらいい。そんで、いっぱい泣いて涙枯れたら、そん時には俺のこと、多分好きになってっから」
 結構な自信過剰だな、と言いかけて。でも、飲み込む。自分だって、似たようなモンだし。
 きっと、こいつは俺に似てる。そして、どこか涼にも似ていて。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー

夏目碧央
BL
 強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。  一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

処理中です...