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「前のクリスマスはさ、俺店で仕事しながら腐ってたんだよね。トモさんがどんなヤツとイブ過ごしてるんだろって、気になって仕事に集中できてなくて広香に睨まれてたし」
「ああ、そう言えば自分も友達と予定入ってたからな。ひーさん、忙しいけど無理してくれてたんだろ」
「かもねー。でもまだ俺一人じゃ、心許ないのは確かだったし」
今でこそ、女将さんと二人で繁忙もこなせるけれど、その頃はまだそうもいかなくて。卒業を控え、バイトもほぼ卒業していたけれど、たまにヘルプで入ってくれていた広香に無理を言って出て貰ったのだ。
「トモさん、彼女と過ごしてるんだろうなって思ったら、なんか悔しくて」
「いや、彼女なんかいないから。普通にオトコばっかでメシ食って、虚しくなって家帰ってぼっちで過ごしてただけだし」
さみしーく家でネット動画見てただけです。と言うと、
「どんなAV?」ほのかがニヤリと嗤う。
「なんでAVなんだよ!」
「彼女いねーんだったら、そーゆーもんなんじゃねーの?」
「なわけねーだろ!」
「ヒトヅマ系? 巨乳系?」
「違うし! ただのライブ動画だし!」
「櫂斗が趣味ってことは、あれだな、ロリロリな可愛い系だな?」
ほのかのそれには櫂斗から鉄拳が飛ぶ。
「もお! トモさんイジっていいのは俺だけ!」
「いいじゃん、ちょっとした余興だよ、余興」
「そゆこと言ってると、俺がほのかイジるよ?」
朋樹を護るようにその腕を羽交い絞めにしてほのかを睨む。が、鼻でフンっと嗤って舌を出しただけで。
こうなったら逆襲だと、櫂斗は
「そいえばこないだのクリスマス、ほのかは? キョウさんと過ごしたんだろ?」と問いかけた。
杏輔との関係はもう明かしたんだから堂々とノロケろ、と。
するとどうやらそれは、なかなかのクリティカルヒットだったらしく。
ほのかが表情を変えた。……女の子へ、と。
「ええ……それ、訊く?」ちょっとはにかんだ様子で目を逸らすから。
「聞かせろよ。今度はほのかの番なんだから」
ふざけてはいるけれど、でもきっと幸せな話だから聞いてやりたいと思う。
「別にどってこと、ないけど……なんかさ、結構イイ酒用意してくれてて。あいつんちで、デリバリーで料理とかも用意してくれてたからさ、酒、進んじゃって」
ほのかが口ごもった。
「ん? 何? そのまま押し倒した?」櫂斗がニマニマしながら問うと。
「潰してしまった」
「は?」
「いや、自分も結構飲んだんだけどさ。でも、なんか、勢い付いてあいつのグラスにも注ぎまくってたら、気付いたら死んでた」
クリスマスイブ、なんてカップルにとってはキラッキラな夜。
ムードのいいお店なんてのに連れて行こうと思っていた杏輔だったが、ほのかが「思い切り飲めるからキョウさんちでいい」と言ったので。
それならば、と独身貴族としては財力に任せて素敵なお取り寄せグルメを準備して、ほのかを家に招いた。
そこへ持ってきて、これなら勝てるかも、と思ったらしい杏輔が飲みやすいけどそこそこ値の張るシャンパンを何本か用意していたらしく。
ビール以外は弱い。
が。
ほのかいの言う“弱い”という認識は、そもそも杏輔の感覚とは完全にズレているわけで。
旨い旨いと料理と一緒に酒が進むと楽しんでいたら、いつの間にか杏輔は酔い潰れて爆睡していたのだ。
「ほのか?」苦い表情をしたほのかを櫂斗が覗き込む。
クリスマスイブの深夜、酔い潰れたカレシの横で一人、用意されていたちょっと昔の甘い恋愛映画なんて大画面で見ている状況にどれだけ虚しかったかを思い出すと、ほのかは頭を抱えたくなった。
「いんだよ、あの日のことはもう、記憶抹消案件だから」
「何で? ノロケろよ」
「ノロケられるような可愛い話なんか、こっちにはねーんだよ、ばーか」
「えー、ほのかが幸せなら可愛いとか可愛くないとか、関係ないじゃん」
「そうそう。俺、ほのかがノロケるのって聞いたことないから、聞きたい」
「おまえらに聞かせるノロケはねえ!」
言ってるけれど、ほのかが少し赤くなったのは絶対にアルコールのせいじゃないことは明白。
そして、そんなタイミングを見計らったかのようにほのかのスマホが鳴った。
「噂をすれば、ってヤツ?」
テーブルに置いてあったから画面の表示を櫂斗が見つけてニヤリと嗤う。
「ああ、そう言えば自分も友達と予定入ってたからな。ひーさん、忙しいけど無理してくれてたんだろ」
「かもねー。でもまだ俺一人じゃ、心許ないのは確かだったし」
今でこそ、女将さんと二人で繁忙もこなせるけれど、その頃はまだそうもいかなくて。卒業を控え、バイトもほぼ卒業していたけれど、たまにヘルプで入ってくれていた広香に無理を言って出て貰ったのだ。
「トモさん、彼女と過ごしてるんだろうなって思ったら、なんか悔しくて」
「いや、彼女なんかいないから。普通にオトコばっかでメシ食って、虚しくなって家帰ってぼっちで過ごしてただけだし」
さみしーく家でネット動画見てただけです。と言うと、
「どんなAV?」ほのかがニヤリと嗤う。
「なんでAVなんだよ!」
「彼女いねーんだったら、そーゆーもんなんじゃねーの?」
「なわけねーだろ!」
「ヒトヅマ系? 巨乳系?」
「違うし! ただのライブ動画だし!」
「櫂斗が趣味ってことは、あれだな、ロリロリな可愛い系だな?」
ほのかのそれには櫂斗から鉄拳が飛ぶ。
「もお! トモさんイジっていいのは俺だけ!」
「いいじゃん、ちょっとした余興だよ、余興」
「そゆこと言ってると、俺がほのかイジるよ?」
朋樹を護るようにその腕を羽交い絞めにしてほのかを睨む。が、鼻でフンっと嗤って舌を出しただけで。
こうなったら逆襲だと、櫂斗は
「そいえばこないだのクリスマス、ほのかは? キョウさんと過ごしたんだろ?」と問いかけた。
杏輔との関係はもう明かしたんだから堂々とノロケろ、と。
するとどうやらそれは、なかなかのクリティカルヒットだったらしく。
ほのかが表情を変えた。……女の子へ、と。
「ええ……それ、訊く?」ちょっとはにかんだ様子で目を逸らすから。
「聞かせろよ。今度はほのかの番なんだから」
ふざけてはいるけれど、でもきっと幸せな話だから聞いてやりたいと思う。
「別にどってこと、ないけど……なんかさ、結構イイ酒用意してくれてて。あいつんちで、デリバリーで料理とかも用意してくれてたからさ、酒、進んじゃって」
ほのかが口ごもった。
「ん? 何? そのまま押し倒した?」櫂斗がニマニマしながら問うと。
「潰してしまった」
「は?」
「いや、自分も結構飲んだんだけどさ。でも、なんか、勢い付いてあいつのグラスにも注ぎまくってたら、気付いたら死んでた」
クリスマスイブ、なんてカップルにとってはキラッキラな夜。
ムードのいいお店なんてのに連れて行こうと思っていた杏輔だったが、ほのかが「思い切り飲めるからキョウさんちでいい」と言ったので。
それならば、と独身貴族としては財力に任せて素敵なお取り寄せグルメを準備して、ほのかを家に招いた。
そこへ持ってきて、これなら勝てるかも、と思ったらしい杏輔が飲みやすいけどそこそこ値の張るシャンパンを何本か用意していたらしく。
ビール以外は弱い。
が。
ほのかいの言う“弱い”という認識は、そもそも杏輔の感覚とは完全にズレているわけで。
旨い旨いと料理と一緒に酒が進むと楽しんでいたら、いつの間にか杏輔は酔い潰れて爆睡していたのだ。
「ほのか?」苦い表情をしたほのかを櫂斗が覗き込む。
クリスマスイブの深夜、酔い潰れたカレシの横で一人、用意されていたちょっと昔の甘い恋愛映画なんて大画面で見ている状況にどれだけ虚しかったかを思い出すと、ほのかは頭を抱えたくなった。
「いんだよ、あの日のことはもう、記憶抹消案件だから」
「何で? ノロケろよ」
「ノロケられるような可愛い話なんか、こっちにはねーんだよ、ばーか」
「えー、ほのかが幸せなら可愛いとか可愛くないとか、関係ないじゃん」
「そうそう。俺、ほのかがノロケるのって聞いたことないから、聞きたい」
「おまえらに聞かせるノロケはねえ!」
言ってるけれど、ほのかが少し赤くなったのは絶対にアルコールのせいじゃないことは明白。
そして、そんなタイミングを見計らったかのようにほのかのスマホが鳴った。
「噂をすれば、ってヤツ?」
テーブルに置いてあったから画面の表示を櫂斗が見つけてニヤリと嗤う。
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