affection

月那

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消えない想い

消えない想い -1-

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「だからー、水曜日の朝から集まって、現代美術館に行こう、ってのはどーよ?」
 坂本が、いつものファミレスでいつものように、夕飯を食べた後、力説した。
 来週から後期が始まるし、週末には深月は県外にある一人暮らしの家に戻るというので、できればそれまでにまた集まりたいという希望を叶える為、サークルのない水曜日に集まれるメンバーだけでも集まろうという話になったのである。
「現代美術館? あの、H市にある?」
「そう。ほら、高木圓山がデザインした奴」
 ここ数年話題に上ることの多い国際的有名建築家が、若者たちにも興味も持って貰えるような美術館を、と隣の市に新しくできた美術館である。(と、建築史で習ったばかりだったりする)
「なんか、今近現代建築展ての、やってるらしいからさ。殿山先生にもちょっとネタ振れそうじゃね?」
 前期だけでなく、後期にも勿論建築史の授業はあるわけで。
「俺や佐竹はいいけどさ、それって女子はどうかと思うけど」
 建築に関しての展示物なんて、興味のない女子たちには全く面白味のないものだろう。
「それがさ。あの美術館、中庭に写真撮影可の面白いコーナーがあるらしいんだよ」
「何それ?」
「その名もでっかいシリーズ」
「はあ?」
「何か、日用品とか身の回りにある物がやたらとでっかいオブジェになってるらしくて、最初は子供向けだったらしいんだけど、最近女子たちが写真映えするっつってSNS受けがいいみたいでさ」
「あー、なんか聞いたことあるなあ、それドデカイカップ麺だとか、ドデカイ歯ブラシだとかがあって、コビト気分を味わえる、的な」
 なんとなく、ローカル番組で見たような気がする。
「そうそう。しいちゃんも面白そうって言ってたし。快速で三十分くらいで、H駅には着くだろ? で、そっから歩いて行けるみたいだからさ、そこの駅で集合すればいいし」
「あー、うん。じゃあそれで決定しよう。水曜日、メンバーってどうなってるっけ?」
「それがさ、土岐は学校があるらしいんだよ。前倒しで始まってる授業があるらしくて。で、涼も土岐が行かないなら行かないって。しいちゃんと成瀬は来るってゆってたけど、入江ちゃんと櫻子ちゃんは別件でアウトだって」
「何それ? じゃあ、四人だけじゃん」
「うん。結果そうなった。けど、成瀬の都合と俺たちの都合優先したら、もう他無理だし」
「…………まあ、深月は遠いからなー。次また帰省した時にも集まれたらいいだろうし、とりあえず、今回は四人でいっか」
 週末となるとどうしてもサークルとバイトで埋まるし、仕方ないか。
「うん。だからさ、ダブルデートな」
「は? 何言ってんの?」
「だって。俺としいちゃん、成瀬とルカじゃん」
 言われて思い出す、高校時代そのメンバーで正にダブルデート、だったことを。
「…………懐かしいけどな、でもそれ言い出したら多分深月は嫌がると思う」
「何で? 俺たちみたく、そっちもヨリ戻しちゃえばいいじゃん」
 坂本が軽く言った。
 が、ルカは大きくため息を吐いて坂本を睨む。
「あり得ないから。お前、何ゆってんのさ? お前らがうまく行ってるのはそりゃ、全然いいことだけどさ、俺と深月はそんなん絶対にないから!」
「何でさー。ルカだって失恋の傷を癒すのに、成瀬と付き合うのって丁度よくね?」
 自分が“非モテ男子”という自覚があるルカである。明るい性格で割と華やかな雰囲気のある坂本だからこそ、簡単に篠田とヨリを戻せたのであって。
 誰もがそんなに簡単に、以前フられた女に相手にされると思うなよ。
 ましてや、その辺にいる一般女子ならともかく、誰もが振り返る美少女が相手だ。相手にされるどころか、嫌な気にさせるのがオチである。
「友達だから、会ってんだよ。それ以上なんて、あり得ないから。深月に対しても失礼だし、俺だってまだそんな気にはなれないって、前に話しただろ」
 そう。まだまだ、ゆかりで頭の中は埋め尽くされているのだ。なまじ、頻繁に会える状況だけに、消そうにも消せない想いが燻っているのだ。
「逆に、成瀬だからいんじゃねーの?」
「はあ?」
「成瀬は昔のルカのことも知ってるし、まあ高校の時はダメになったけどさ。失恋したルカなら、前みたいに曖昧に付き合うとかってこともないだろうし、しっかり向き合えると思うけど」
「ないな。うん、ないない。俺も、もう深月のことは友達としか見てないし」
「えー。成瀬はでもルカのこと好きかもしれないじゃん」
「だからないっつの。お前、しつこい。自分が幸せだからって浮かれてんじゃねーよ」
 売り言葉に。
「はあ? 誰が浮かれてんだよ! いい加減切り替えろって言ってんだよ!」
 買い言葉。
 である。
 いつも温厚な二人だが、さすがに頭に血が上ったようで。
「帰る」
「俺も帰る」
 無言で会計を済ませると、二人とも口をきかないまま帰宅したのだった。
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