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19 王子の秘密
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「なにか、脚に当たってるんですけど……」
手を伸ばしてその物体に触れようとすると、イグニスが慌てたようにルルシェの手を取った。
「さわるな!」
「え?」
こんなに慌てているイグニスを見たのは初めてだ。呆然と彼の顔を見ると、イグニスは目を逸らしながらひどく小さな声で言った。
「それは、俺の…………男の象徴だ」
「…………」
ルルシェはもう一度身を起こそうと努力したが、筋肉が引きつるように痛んで無理だった。
(やだ、やだ! 男のアレが当たってるなんてやだ!!)
「そんなに嫌がるなよ……おまえは男になりたかったんだろ。男には皆これが付いているんだぞ」
傷つきました、と言うような暗い声だった。ルルシェは小声で「すみません」と謝り、ちらりと下を覗く。確かに何かある。水面が揺れてるせいではっきりとは見えないけど。
「さ、さっきの……“治った”というのは何ですか?」
「ああ、まだおまえには話していなかったな。おまえの秘密は知ってしまったし、話してもいいかもな……」
イグニスはしばらく水面を見つめていたが、やがて暗い表情で話し出した。
「俺が後宮で暮らしていた頃――十二歳のときだ。後宮にいたメイドの一人が、夜這いをしようと夜中に襲ってきて」
「よ、夜這いって……十二の男の子にですか?」
「そのメイドには俺が男に見えたんだろう。でも他の人間にとっては十二の男なんて子供みたいなものだ。だからみな油断していて……夜中に息苦しくて目を覚ますと、俺の上にメイド服を着た女が馬乗りになっていた。気持ち悪くて必死に暴れたよ」
「…………」
「すぐに侍従と騎士がきて女は捕らえられた。だが俺はその日以来、女が苦手になってしまってな……」
「女ぎらいって、そういう事だったんですか」
「ああ。しばらくは女にふれるのも見るのも嫌だった。何年かたって少しずつ治ってきたが、どうも体が反応しなくて……もう不能になったのかと……」
だから結婚を嫌がっていたのか。ようやく長年の謎が解け、すっきりした。
イグニスは後ろから抱き付いてきて、ルルシェの肩にキスをする。
「おまえのおかげだ。俺は何故だか、おまえの体に触れるのは嫌じゃない。もう少しだけ――俺の女嫌いが治るまで、傍にいてくれないか? おまえ達のことは俺が守るから」
「……わかりました」
伯爵家の秘密を知った上でイグニスが守ってくれると言うのなら好都合だ。あとは彼の女嫌いを治し、無事に結婚させれば何の問題もない。
(まあ、具体的にどうすればいいかはよく分からないけど……。秘密を守ってくれるなら協力してもいいかも)
イグニスはルルシェを抱き上げてお湯から上がり、小屋へ戻った。床の上に布を敷き、その上にルルシェを座らせる。
疲れて立てないルルシェは、座ったままイグニスに背を向けて体を拭いた。見るのも見られるのも嫌だった。座っているせいで目線が低いから、余計なものを――アレを視界に入れそうになる。
のろのろと着替えかけたとき、後ろから肩にマントを掛けられ、くるんと包まれて横抱きにされた。
「ま、まだ裸なんですけど」
「あとは寝るだけだからいいだろ。俺が運んでやる」
誰にも会いませんように――。ルルシェは冷や冷やしながらイグニスに運ばれた。歩く振動が伝わるせいか徐々に眠くなり、広い肩にもたれていつしか眠ってしまった。
手を伸ばしてその物体に触れようとすると、イグニスが慌てたようにルルシェの手を取った。
「さわるな!」
「え?」
こんなに慌てているイグニスを見たのは初めてだ。呆然と彼の顔を見ると、イグニスは目を逸らしながらひどく小さな声で言った。
「それは、俺の…………男の象徴だ」
「…………」
ルルシェはもう一度身を起こそうと努力したが、筋肉が引きつるように痛んで無理だった。
(やだ、やだ! 男のアレが当たってるなんてやだ!!)
「そんなに嫌がるなよ……おまえは男になりたかったんだろ。男には皆これが付いているんだぞ」
傷つきました、と言うような暗い声だった。ルルシェは小声で「すみません」と謝り、ちらりと下を覗く。確かに何かある。水面が揺れてるせいではっきりとは見えないけど。
「さ、さっきの……“治った”というのは何ですか?」
「ああ、まだおまえには話していなかったな。おまえの秘密は知ってしまったし、話してもいいかもな……」
イグニスはしばらく水面を見つめていたが、やがて暗い表情で話し出した。
「俺が後宮で暮らしていた頃――十二歳のときだ。後宮にいたメイドの一人が、夜這いをしようと夜中に襲ってきて」
「よ、夜這いって……十二の男の子にですか?」
「そのメイドには俺が男に見えたんだろう。でも他の人間にとっては十二の男なんて子供みたいなものだ。だからみな油断していて……夜中に息苦しくて目を覚ますと、俺の上にメイド服を着た女が馬乗りになっていた。気持ち悪くて必死に暴れたよ」
「…………」
「すぐに侍従と騎士がきて女は捕らえられた。だが俺はその日以来、女が苦手になってしまってな……」
「女ぎらいって、そういう事だったんですか」
「ああ。しばらくは女にふれるのも見るのも嫌だった。何年かたって少しずつ治ってきたが、どうも体が反応しなくて……もう不能になったのかと……」
だから結婚を嫌がっていたのか。ようやく長年の謎が解け、すっきりした。
イグニスは後ろから抱き付いてきて、ルルシェの肩にキスをする。
「おまえのおかげだ。俺は何故だか、おまえの体に触れるのは嫌じゃない。もう少しだけ――俺の女嫌いが治るまで、傍にいてくれないか? おまえ達のことは俺が守るから」
「……わかりました」
伯爵家の秘密を知った上でイグニスが守ってくれると言うのなら好都合だ。あとは彼の女嫌いを治し、無事に結婚させれば何の問題もない。
(まあ、具体的にどうすればいいかはよく分からないけど……。秘密を守ってくれるなら協力してもいいかも)
イグニスはルルシェを抱き上げてお湯から上がり、小屋へ戻った。床の上に布を敷き、その上にルルシェを座らせる。
疲れて立てないルルシェは、座ったままイグニスに背を向けて体を拭いた。見るのも見られるのも嫌だった。座っているせいで目線が低いから、余計なものを――アレを視界に入れそうになる。
のろのろと着替えかけたとき、後ろから肩にマントを掛けられ、くるんと包まれて横抱きにされた。
「ま、まだ裸なんですけど」
「あとは寝るだけだからいいだろ。俺が運んでやる」
誰にも会いませんように――。ルルシェは冷や冷やしながらイグニスに運ばれた。歩く振動が伝わるせいか徐々に眠くなり、広い肩にもたれていつしか眠ってしまった。
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