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16 再会1
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「念のため、瞳が緑色のメイドを全員呼びました。お探しの娘はいますか?」
「そうだな…………」
オクタビアの声に続いて低く艶のある声が響き、シーナはハッと息を飲んだ。今の声は、あの人ではないのか。認めるのは怖いけれど、確かに聞き覚えのある声だった。
(ああ……。とうとうその時が来たんだわ……)
男性がふいにソファから立ち上がり、メイド達の方へ近づいてくる。ファニータ達が「ひゃあっ」と感極まった悲鳴を上げたが、シーナは真逆の気分だった。まるで断頭台へのぼっているような心地だ。
男性の上等な靴が一歩、また一歩と近づくたびに、死が迫っているような感覚。彼は真っすぐにシーナへ向かって歩いてくる。どうして気が付かなかったんだろう。今日やってくる客は、かなり身分の高い人だと分かっていたのに……。
やがてシーナの正面に立った彼は両手を伸ばし、シーナの白く小さな顔をそっと包み込んだ。ファニータの「は?」という呟きも、シーナには聞こえなかった。
「探したぞ――シーナ」
「……レクオン殿下…………」
三年ぶりに見るレクオンはさらに身長が伸びたらしく、真上から顔を覗きこまれるのは少し怖かった。精悍な顔立ちは変わりないが、どことなくやつれたようにも見える。やつれた――というより、疲れているような印象だ。
横に並んだメイドの誰かが、ぎりっと歯噛みする音が聞こえる。
「ご苦労だったな。他のメイドは下がれ」
レクオンがシーナの肩を抱きながら命じると、ファニータは小声で「なんでルシアが」と呟いた。しかし相手が王子である以上、無礼な真似は出来ないと判断したらしい。彼女たちはすごすごと部屋を出て行った。
「シーナ? ルシアの本当の名はシーナというのかい?」
「大奥様……。名を隠すような失礼をして、申し訳ありません」
シーナは深々と頭を下げ、目を丸くしているオクタビアに謝罪した。
「シーナは俺の婚約者だったルターナの妹で……義理の家族からひどい仕打ちを受けていたんだ。屋敷に残ったままだと、望まない結婚を強要される恐れがあった。だから見つからないように名前を変えて逃げたんだろう?」
「は……はい」
「そうだったのかい。可哀相に、名前さえ変えて逃げなきゃならないなんて……。でももう大丈夫だよ。これからは、殿下があなたを守ってくださるそうだ」
(……え?)
シーナは弾かれたように視線をあげ、レクオンを見つめた。目が合った彼は愛おしそうにシーナの髪を撫でたが、柘榴石の瞳は深い穴があいたように暗くて感情を読み取れない。ただ、シーナに対して底知れない執念――執着を抱いているように感じる。
(いいえ、わたしに対してじゃないわ……)
レクオンが王都から遠く離れたグラーダへわざわざやってきた意味が分かり、シーナはぎこちなく笑った。オクタビアは良かれと思ってレクオンを呼んでくれたのだから、無用な心配をかけるべきではない。
彼女はシーナの身を案じるがゆえに、伝手を使って安全な場所を探してくれたのだろう。それがレクオンの耳に入り、彼はシーナを迎えに来た。愛していた婚約者の大切な妹として――。
「ルシアは殿下の関係者だったのか。……はぁ、おかしいと思ったんだよな。こんな田舎に似つかわしくない美女だもんなぁ」
「こら、静かにおし。感動の再会を邪魔するんじゃないよ」
オクタビアとバージルのいつも通りの会話。そのほのぼのした雰囲気が、シーナにはひどく遠いものに感じられた。
「そうだな…………」
オクタビアの声に続いて低く艶のある声が響き、シーナはハッと息を飲んだ。今の声は、あの人ではないのか。認めるのは怖いけれど、確かに聞き覚えのある声だった。
(ああ……。とうとうその時が来たんだわ……)
男性がふいにソファから立ち上がり、メイド達の方へ近づいてくる。ファニータ達が「ひゃあっ」と感極まった悲鳴を上げたが、シーナは真逆の気分だった。まるで断頭台へのぼっているような心地だ。
男性の上等な靴が一歩、また一歩と近づくたびに、死が迫っているような感覚。彼は真っすぐにシーナへ向かって歩いてくる。どうして気が付かなかったんだろう。今日やってくる客は、かなり身分の高い人だと分かっていたのに……。
やがてシーナの正面に立った彼は両手を伸ばし、シーナの白く小さな顔をそっと包み込んだ。ファニータの「は?」という呟きも、シーナには聞こえなかった。
「探したぞ――シーナ」
「……レクオン殿下…………」
三年ぶりに見るレクオンはさらに身長が伸びたらしく、真上から顔を覗きこまれるのは少し怖かった。精悍な顔立ちは変わりないが、どことなくやつれたようにも見える。やつれた――というより、疲れているような印象だ。
横に並んだメイドの誰かが、ぎりっと歯噛みする音が聞こえる。
「ご苦労だったな。他のメイドは下がれ」
レクオンがシーナの肩を抱きながら命じると、ファニータは小声で「なんでルシアが」と呟いた。しかし相手が王子である以上、無礼な真似は出来ないと判断したらしい。彼女たちはすごすごと部屋を出て行った。
「シーナ? ルシアの本当の名はシーナというのかい?」
「大奥様……。名を隠すような失礼をして、申し訳ありません」
シーナは深々と頭を下げ、目を丸くしているオクタビアに謝罪した。
「シーナは俺の婚約者だったルターナの妹で……義理の家族からひどい仕打ちを受けていたんだ。屋敷に残ったままだと、望まない結婚を強要される恐れがあった。だから見つからないように名前を変えて逃げたんだろう?」
「は……はい」
「そうだったのかい。可哀相に、名前さえ変えて逃げなきゃならないなんて……。でももう大丈夫だよ。これからは、殿下があなたを守ってくださるそうだ」
(……え?)
シーナは弾かれたように視線をあげ、レクオンを見つめた。目が合った彼は愛おしそうにシーナの髪を撫でたが、柘榴石の瞳は深い穴があいたように暗くて感情を読み取れない。ただ、シーナに対して底知れない執念――執着を抱いているように感じる。
(いいえ、わたしに対してじゃないわ……)
レクオンが王都から遠く離れたグラーダへわざわざやってきた意味が分かり、シーナはぎこちなく笑った。オクタビアは良かれと思ってレクオンを呼んでくれたのだから、無用な心配をかけるべきではない。
彼女はシーナの身を案じるがゆえに、伝手を使って安全な場所を探してくれたのだろう。それがレクオンの耳に入り、彼はシーナを迎えに来た。愛していた婚約者の大切な妹として――。
「ルシアは殿下の関係者だったのか。……はぁ、おかしいと思ったんだよな。こんな田舎に似つかわしくない美女だもんなぁ」
「こら、静かにおし。感動の再会を邪魔するんじゃないよ」
オクタビアとバージルのいつも通りの会話。そのほのぼのした雰囲気が、シーナにはひどく遠いものに感じられた。
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