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「ララや。おまえに婚約の申し込みが来ておるぞ」
「はい、お祖父様」
はぁ、また婚約の釣書がきたの。
面倒だわね。
心の中で愚痴をつぶやき、釣書に手を伸ばす。
私はララシーナ・セラフ・ロイツ。
世界最大宗教であるガイア教の総本山、ロイツ聖国の巫女姫だ。
薄荷緑を帯びた銀髪に青葉のような翠の瞳を持つなかなかの美少女なんだけど、草木に混ざると背景に溶け込んでしまうという弱点を持つ。いっそ髪を染めてしまいたい。
翠の髪と瞳こそ巫女姫の特徴と言われているが、この色のせいで『大地の巫女』なんて呼ばれることもあるのだ。
もう少しお洒落な呼び方はないのかと思う。
私は今、ロイツ大聖堂内にあるサロンでお祖父様が差し出した釣書を見ている。
お祖父様は教皇であり、幼い頃に両親を亡くした私にとっては育ての親でもあった。
「ララも、もう17か。早いものじゃなぁ……」
向かい側でお祖父様がしみじみと言う。
ロイツでは17になると一人前と認められ、婚約の申し込みが始まる。
巫女姫はガイア教の象徴ではあるけど、特別な力を持つわけではない。17になったら他の貴族と同じように他国へ嫁ぐこともできる。
但し、巫女姫の特徴を持つ女の子が生まれたら、ロイツに預けるという条件つきで。
「うーん……。国内からの申し込みが少ないですね」
「巫女姫を迎えるとなると、屋敷の中に礼拝堂を用意せねばならんからのぅ。そんな余裕がある者は、大貴族か他国の王族ぐらいのものじゃ」
どいつもこいつも似たりよったりじゃないの。
――なんて思っていた私だったが、一つの釣書でぴたりと手を止めた。
「これ……この方の名前、なぜか気になります」
「んん? どれどれ……。おお、エンヴィード皇国の第二皇子、フェリオス・アレス・エンヴィード殿下じゃな。肖像画も来とるが、見てみるかい?」
「ええ」
白い布で隠された肖像画が運ばれ、椅子の上に乗せられた。
その間も、何故か私の胸はドキドキしている。
どうしてなの?
なぜ私はこんなに緊張しているのかしら?
そして、ふぁさりと布が外され――。
「ああぁああーーっ!?」
「ララ!? どうしたんじゃ!?」
立ち上がった私の後ろで、椅子がガターン!と音を立てて倒れた。
一国の姫にあるまじき無作法であるが、今の私にそれを気にする余裕はない。
こっこの人―――この顔!!
金の煌びやかな額縁の中に、表情のない美しい青年が佇んでいる。
すっと通った高い鼻梁に滑らかな肌、酷薄そうな薄い唇。この大陸では珍しい漆黒の髪と瞳が、彼の強い眼差しを際立たせている。
忘れていた記憶が一気によみがえり、頭が割れそうなほどガンガンと痛む。
やっと思い出した。
前回の人生で、私はこの男に殺されたのだ。
「はい、お祖父様」
はぁ、また婚約の釣書がきたの。
面倒だわね。
心の中で愚痴をつぶやき、釣書に手を伸ばす。
私はララシーナ・セラフ・ロイツ。
世界最大宗教であるガイア教の総本山、ロイツ聖国の巫女姫だ。
薄荷緑を帯びた銀髪に青葉のような翠の瞳を持つなかなかの美少女なんだけど、草木に混ざると背景に溶け込んでしまうという弱点を持つ。いっそ髪を染めてしまいたい。
翠の髪と瞳こそ巫女姫の特徴と言われているが、この色のせいで『大地の巫女』なんて呼ばれることもあるのだ。
もう少しお洒落な呼び方はないのかと思う。
私は今、ロイツ大聖堂内にあるサロンでお祖父様が差し出した釣書を見ている。
お祖父様は教皇であり、幼い頃に両親を亡くした私にとっては育ての親でもあった。
「ララも、もう17か。早いものじゃなぁ……」
向かい側でお祖父様がしみじみと言う。
ロイツでは17になると一人前と認められ、婚約の申し込みが始まる。
巫女姫はガイア教の象徴ではあるけど、特別な力を持つわけではない。17になったら他の貴族と同じように他国へ嫁ぐこともできる。
但し、巫女姫の特徴を持つ女の子が生まれたら、ロイツに預けるという条件つきで。
「うーん……。国内からの申し込みが少ないですね」
「巫女姫を迎えるとなると、屋敷の中に礼拝堂を用意せねばならんからのぅ。そんな余裕がある者は、大貴族か他国の王族ぐらいのものじゃ」
どいつもこいつも似たりよったりじゃないの。
――なんて思っていた私だったが、一つの釣書でぴたりと手を止めた。
「これ……この方の名前、なぜか気になります」
「んん? どれどれ……。おお、エンヴィード皇国の第二皇子、フェリオス・アレス・エンヴィード殿下じゃな。肖像画も来とるが、見てみるかい?」
「ええ」
白い布で隠された肖像画が運ばれ、椅子の上に乗せられた。
その間も、何故か私の胸はドキドキしている。
どうしてなの?
なぜ私はこんなに緊張しているのかしら?
そして、ふぁさりと布が外され――。
「ああぁああーーっ!?」
「ララ!? どうしたんじゃ!?」
立ち上がった私の後ろで、椅子がガターン!と音を立てて倒れた。
一国の姫にあるまじき無作法であるが、今の私にそれを気にする余裕はない。
こっこの人―――この顔!!
金の煌びやかな額縁の中に、表情のない美しい青年が佇んでいる。
すっと通った高い鼻梁に滑らかな肌、酷薄そうな薄い唇。この大陸では珍しい漆黒の髪と瞳が、彼の強い眼差しを際立たせている。
忘れていた記憶が一気によみがえり、頭が割れそうなほどガンガンと痛む。
やっと思い出した。
前回の人生で、私はこの男に殺されたのだ。
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