【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま

文字の大きさ
22 / 115
第一部 そのモフモフは無自覚に世界を救う?

22 不埒者め

しおりを挟む
「おまえは本当に人間みたいな奴だな。ほら、着替え終わったぞ」
「ペエ?」
 着替え終わったハル様はパジャマのような薄っぺらい服を着ている。裸になったわけではないらしい。

(なぁんだ、パジャマ着ただけか……って、私はなにを期待しているのか! この不埒者めッ!)

「なにをジタバタしてるんだ? ほら、おいで」
 フリッパーでベッドをばしばし叩いていると、後ろから持ち上げられて温かい場所にすぽんと収まる。ハル様の腕の中だ。私の顔とハル様の顔がくっついて……はがぁあ!

「ペッ、ペグフゥッ! ペハァァアアッ……!」
(心頭滅却! 私はただのペンギンだ! ペンギンの雛だぁあッ……!)

「おまえは温かいなぁ……。セルディスがペットと寝る理由が分かるような気がする。ペペは賢い鳥だから、この屋敷に動物がたくさんいる理由も分かってるんだろう?」

「ペ? ペエ」
 ハル様が真面目な雰囲気で話しだしたので、私は素直にこくりと頷いた。大切な話をするために、私をこの部屋へ連れてきたらしい。一人で身もだえしてる場合じゃなかった。

「俺たちの両親は三年前に事故で死んでしまってな……。あの子が寂しくないように、犬や猫を飼うようになった。本当ならセルディスはまだ親に甘えたい年頃だろうが、俺では代わりにすらなってやれない。多忙でしょっちゅう家を空けているしな……」

「ペエ……」
(そんな事ないよ。ハル様はセル様のために、大急ぎで帰ってきてたでしょ。まぁプロクス戦闘機はかなり怖かったけどね)

 セル様は心からお兄さんを慕っている。他人から見たらそれが分かるのに、ハル様は自信が持てない様子だ。ああ、もどかしい。

「さらに困ったことに、俺が公爵位を継いでからこの屋敷に令嬢たちが押しかけて来るようになってしまったんだ。三公の妻になるなんて色めきたって、セルディスを困らせているらしい。なんで俺じゃなくて弟に詰め寄るのか分からん」

「ペ…………」
(ほ、本気で言ってるの?)

 どうやらハル様は女心がお分かりにならないらしい。ハル様が自分より弟を優先してるから、あの女の子たもセル様に気に入られようと必死なんだと思うけど。
 このように整ったお顔を持ちながら女心が分からないなんて気の毒な人だ。ハル様が鈍い分、親ビンたちとレティシアが奮闘しているのかも。

「今日は不思議な力がセルディスを守ってくれたんだってな。令嬢たちはセルディスの力だと思ったようだが、あいつにはまだ結界を操るような事は出来ないんだ。だから……あれはおまえの力なんだろう?」

「ペ……ペェェ?」
 よく分からないです。私はスライディングしただけなんで。

「首を傾げている様子からして、自分でもよく分かってないみたいだな。俺は今日の話を聞いて、今までの不思議な出来事を思い出したよ。おまえを見つけて保護してから、森の中でいちども魔物に遭遇しなかっただろう」

「ペエ」
 そうでしたね。村のなかで牛とか豚は見たけど。

「帰り道も順調すぎるぐらい何事もなく支部に到着した。リーディガーに帰って来てからは、なぜかセルディスの病状が軽くなってきている。熱を出したのに一晩で下がるなんてどう考えてもおかしい。そして今日の事件だ」

「ペエッ!?」
 ぶつぶつと言葉を並べまくっていたハル様は、急に手を動かして私の体を持ち上げた。至近距離からプール色の目が私をじっと見ている。
(ひぃい……! 改めて見るとすごい色!)

「ペペが聖獣の雛かどうかは不明として、特別な生き物だというのは間違いない。きっとおまえには聖なる力が宿っているんだ。ペペ……俺に力を貸してくれないか?」

「ペ?」
「俺はロイウェルをブルギーニュと同じように発展した国にしたい。でも邪魔する奴がいて、思うように進まなくてな……。おまえに囮役をやってほしいんだ。いいか?」

「ペエ! ペェッ、ペペエ!」
(いいですよ。私でお役に立てる事なら、なんだってやります!)

「ありがとう。明日になったらおまえを王太子殿下に会わせよう。忙しくなりそうだな……セルディスは怒るだろうか……」

 ハル様は不安そうに呟くと、私を抱っこしたまま寝てしまった。この人の世界は本当に弟中心に回っているらしい。
(どうしよ。さっきまで寝てたせいか、あんまり眠くないかも……。うう、頭の上にハル様の息がかかってるぅ)

 ハル様が健やかな寝息を立てるたびに、私の綿みたいな羽毛がそよそよと揺れている。はぁ、心臓が痛い。ドッキンドッキンうるさい。
 こんなんじゃ眠れないよぉ……!――と思っていた私だったが、目を閉じてるうちに眠くなり、いつの間にか寝てしまった。成長期だからかもしれない。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...