【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま

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第一部 そのモフモフは無自覚に世界を救う?

21 称号を与えられた

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 ここは何処だろう。すごく寒い。
 目の前は一面氷の世界で、あったかそうなお布団もコタツもない。ただ青白くて寒そうな、氷ばかりの光景が広がっている。

(まるで南極みたい。いつの間にこんな場所に来ちゃったんだろう? 私は体育館の裏で、爽真に告白してたはずなんだけど)
 動かそうと思っても体が動かない。まるで重たい何かが体の上に乗っているみたいだ。重い。重い。

『重い……!』
『あら。目が覚めましたの?』
『……ん?』

 目を開けた途端、長毛種の猫の顔が飛び込んできた。私はベッドの端っこで寝ていたが、布団の上から猫がのっしりと乗っている。誰だっけ。なんで猫が喋ってるんだっけ。

『あっ、レティシア! セル様は!? 無事だった?』
『無事もなにも、あーたがちゃんと守ったじゃありませんの。何も覚えてないなんて鳥頭ですこと』

 レティシアは相変わらず嫌味っぽく呟き、ベッドの横に置かれた椅子の上に飛び移った。

『セルディス様は気づいておられないけど、あの不思議な力はあーたでしょう。アタクシは勘が鋭いから分かります』
『そうなのかな……自分じゃわかんないけど』
『ペペ』
『……ハイ?』

 レティシアがすっと背筋を伸ばし、片手を前に出した。何だろう、あの仕草は。やけにもったいぶった感じを受ける。

『よくぞセルディス様を守りましたわね。あーたに勇者の称号を与えましょう……!』

『いきなりなに言っちゃってんの!? 何の設定で喋ってんの!?』

『えぇいッ、細かい鳥だわね! ちょっとやってみただけでしょ。そんなにノリが悪いと世間は渡れませんわよ!』

『す……すんません……?』
 今って乗るべきトコだった? 猫の悪ふざけにも乗ってやらないといけないなんて世知辛いわ。

 レティシアはすたっと床に降り、ドアに向かって歩き出した。そしてくるりと振り返り。

『あーたの功績は認めるけど、セルディス様のお膝はアタクシの場所よ。それを忘れないことね!』

 捨て台詞を吐いてペット用ドアから出て行き、廊下でナァーオ、ナァーオと鳴いている。しばらくするとドアが開き、ハル様とセル様が部屋にやって来た。レティ姐さんはハル様たちを呼んでいたらしい。

「目が覚めたんだね……! 良かったぁ。心配したんだよ」
「ペエ」

 セル様は涙で目をウルウルさせながら私を抱っこした。どこにも怪我はない様子でほっとしていると、ハル様が私の頭を優しく撫でる。

「体を張ってセルディスを守ろうとするなんて、ペペは勇気があるな。まだ雛鳥なのにたいした度胸の持ち主だ」
「ペ……ペへへ」
(ハル様みたいな凄い人に褒められると嬉しいなぁ……。私はスライディングして寝ちゃっただけなんだけど)

 レティシアの言葉が嘘とは思わないけど、セル様の体が浮いた件に関して私は半信半疑であった。私の短いフリッパーは結局届かなかったし、スライディングしただけで疲れて寝てしまうとは情けない。

(もっと体力つけなくちゃ……! もっともっとたくさん食べなくちゃ!)
 なんて考えていると、お腹がぐぅ~と音を鳴らす。

「お腹すいたんだね。僕たちはもう夕食を済ませたけど、ペペの分はちゃんと用意してあるよ。食べに行こうね」
「ペエ!」

 三人で食堂に行くと窓の外は真っ暗で、もう誰もいなかった。食事のとき親ビンたちはきっとしょげていた事だろう。セル様を守ろうと頑張ったのに、窓の外から指を咥えて見ていることしか出来なかったんだから……。明日になったら励ましてあげよう。

「お待たせいたしました。コックが食事を温めなおしてくれましたよ」

 カムロンさんがトレイにあったかい食事を載せて運んできてくれた。白い湯気がほわほわと立ち昇っている。私は頂きますの挨拶をしてから食べ始めた。チキンの丸焼きに、思いっきりガブリと。

「おいしい?」
「ペエッ!」
「いつも思うが、この量を食べきる雛はそうそういないよな……。成人男性と同じ量だぞ」

「ペペは雛だから食欲旺盛なんだよ。きっとさ、すっごく大きな鳥さんになるんだよ」
(セル様いいこと言った!)
 なんて素晴らしいフォローなの。セル様は空気が読める子……!

 夕食をぺろりと平らげると、ハル様が椅子から立ち上がって私を腕に抱き上げる。
「今夜は俺がペペと一緒に寝てもいいか?」
「いいよ。兄上がペットと寝るなんて珍しいね」
「ペエッ……!?」
(ま、マジですか……!?)

 いやでも、前も一緒に寝たことあるし。今さら動揺することじゃないでしょ。お風呂だって一緒に入ったんだからさ……!
 うだうだ考えている内に、ハル様の部屋に着いてしまった。パタンとドアが閉じられて、ハル様がそっと私をベッドに乗せ――

「ペギャッ!?」
 服を脱ぎ始めたではありませんか。なんという事でしょう。視点をどこに合わせればいいのでしょうか。
 私は耐え切れなくなり、フリッパーでぎゅっと目を隠した。何も見ない。何も聞こえない!
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