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第一部 そのモフモフは無自覚に世界を救う?
24 王子と会う
「お疲れさまです。そいつが噂のペペですか? うわぁ、可愛いなぁ」
「撫でてもいいですか?」
「ああ」
ガタイのいい二人のお兄さんが、頬を染めながら私の頭をモフモフと撫でている。ペンギン化してから私のモテっぷりがすごい。
お兄さん達は持っていた袋からクッキーみたいなお菓子を出して、私のくちばしに入れてくれた。バターの香りと仄かな甘みがおいしい焼き菓子だ。素晴らしい。もっとください。
「ペペエ」
「あっ、お辞儀したぞ。もしかしてお礼を言ったんじゃないか?」
「噂どおりの賢さだな。なんて可愛いんだ!」
「……もういいか? そろそろ行かないと」
名残惜しそうなお兄さんたちを残し、ハル様が廊下を歩き始めた。サクサクしたクッキー、もっと食べたかったんですが。
「おまえちょっと食べすぎじゃないか? 朝食だって俺と同じ量を食べていたよな」
「ペエ?」
「……その円らな瞳が曲者なんだよな……。可愛さで誤魔化そうとしてるだろ?」
「ペッヘヘェ」
(バレちゃった。ハル様には私のあざとさが分かっちゃうのね)
ペペは見た目こそ雛だが、中身は十七歳の女子高生である。ペペとなってすでに三日たち、私は自分の愛らしさをいかに有効活用するべきか考えていた。この体はきっと神様からの贈り物だ。モフモフとふわふわで、世界に愛を振りまいてみせましょう。
ハル様はしばらく廊下を歩いていたけど、急に方向転換して階段を降り始めた。
「このまま騎士団本部をうろうろしていたら、ペペ狙いの奴らに取り囲まれるかもしれない。そのたびに撫でたりクッキーをやったりされたら時間の無駄だ。地下から行こう」
「ペェエ~……」
「そう不満そうにするな。目的地に着いたらお菓子をやるから」
「ペエ!」
じゃあいい子で待ってます。
私はくちばしを閉じて階段の先に視線を向けた。ハル様の足が一段、また一段と降りるたびにざわざわとした喧騒が近づいてくる。
「ペエ……!」
(地下に街があるんだ!)
階段を降りた先は地下街のように通路が張り巡らされ、道の両側には小さな店がずらりと並んでいた。綺麗な服を店頭に並べている店、魚を売っている店、焼いたパンを売っている店……まるでショッピングモールのような雰囲気だ。
「王都の地上部は城と家屋で埋め尽くされて、空き地がほとんどないんだ。それで商店街は地下に作ることになったらしい。この辺りはちょうど王宮の真下だが、塔の頂点に配置されたクリスタルから陽光を取り込んでいるから明るいだろう。ほら、あれだ」
「ペエ」
ハル様が天井を指差すのでそちらを見ると、等間隔に電球みたいな丸い水晶が嵌められている。それが電灯のようにキラキラと光るので地下でも暗くないというわけだ。
広い通路の突き当りには両開きの巨大な扉があり、左右にごつい体のお兄さんが立っている。手に長い槍を持っているから見張りかもしれない。ハル様が扉の前まで来ると、二人のお兄さんは軽く会釈した。
「お疲れさまです、閣下」
「王太子殿下はどちらにおられる?」
「今の時間であれば、王太子宮で執務をされているはずです」
「そうか」
お兄さん達は私をチラチラと見ながら扉を開けてくれた。明らかに「見たことない鳥だな」と不審げな顔をしていたけど、ハル様が抱っこしているから何も言えないらしい。
(ハル様ってこの国ではかなり偉い人なんだな……。王様がいる場所に顔パスで入るなんて、なかなか凄いことだよね)
これが例えば私ひとりだったら、ブルギーニュの時のように「迷い込むなよ」と追い出されていた事だろう。
ハル様は私を抱っこしたまま何の遠慮もない様子で階段を上がり、通路に出てからも慣れた様子で歩いていく。そして一つの扉の前で立ち止まり、私に言った。
「いきなり見せると有り難味が薄れそうだな……。ペペ、しばらくマントの中に隠れていてくれ」
「ペ? ペフゥッ!」
何のことやらと思っているうちに私は黒いマントの中に包まれ、そっと片手に抱っこされた。風呂敷に包まれたお歳暮状態。冬ギフトですか?
「失礼します」
「ん? おお、ハルディアか! 遠征から戻ったばかりなのにもう仕事してるなんて、そなたも真面目な奴だなぁ。仕事中毒か? ハハハ!」
風呂敷――じゃなくてマントの向こうから男性の声がする。結構声のデカい人だ。雰囲気からするとアラサーっぽい印象を受けるから、ハル様とは年が近いのかもしれない。
「撫でてもいいですか?」
「ああ」
ガタイのいい二人のお兄さんが、頬を染めながら私の頭をモフモフと撫でている。ペンギン化してから私のモテっぷりがすごい。
お兄さん達は持っていた袋からクッキーみたいなお菓子を出して、私のくちばしに入れてくれた。バターの香りと仄かな甘みがおいしい焼き菓子だ。素晴らしい。もっとください。
「ペペエ」
「あっ、お辞儀したぞ。もしかしてお礼を言ったんじゃないか?」
「噂どおりの賢さだな。なんて可愛いんだ!」
「……もういいか? そろそろ行かないと」
名残惜しそうなお兄さんたちを残し、ハル様が廊下を歩き始めた。サクサクしたクッキー、もっと食べたかったんですが。
「おまえちょっと食べすぎじゃないか? 朝食だって俺と同じ量を食べていたよな」
「ペエ?」
「……その円らな瞳が曲者なんだよな……。可愛さで誤魔化そうとしてるだろ?」
「ペッヘヘェ」
(バレちゃった。ハル様には私のあざとさが分かっちゃうのね)
ペペは見た目こそ雛だが、中身は十七歳の女子高生である。ペペとなってすでに三日たち、私は自分の愛らしさをいかに有効活用するべきか考えていた。この体はきっと神様からの贈り物だ。モフモフとふわふわで、世界に愛を振りまいてみせましょう。
ハル様はしばらく廊下を歩いていたけど、急に方向転換して階段を降り始めた。
「このまま騎士団本部をうろうろしていたら、ペペ狙いの奴らに取り囲まれるかもしれない。そのたびに撫でたりクッキーをやったりされたら時間の無駄だ。地下から行こう」
「ペェエ~……」
「そう不満そうにするな。目的地に着いたらお菓子をやるから」
「ペエ!」
じゃあいい子で待ってます。
私はくちばしを閉じて階段の先に視線を向けた。ハル様の足が一段、また一段と降りるたびにざわざわとした喧騒が近づいてくる。
「ペエ……!」
(地下に街があるんだ!)
階段を降りた先は地下街のように通路が張り巡らされ、道の両側には小さな店がずらりと並んでいた。綺麗な服を店頭に並べている店、魚を売っている店、焼いたパンを売っている店……まるでショッピングモールのような雰囲気だ。
「王都の地上部は城と家屋で埋め尽くされて、空き地がほとんどないんだ。それで商店街は地下に作ることになったらしい。この辺りはちょうど王宮の真下だが、塔の頂点に配置されたクリスタルから陽光を取り込んでいるから明るいだろう。ほら、あれだ」
「ペエ」
ハル様が天井を指差すのでそちらを見ると、等間隔に電球みたいな丸い水晶が嵌められている。それが電灯のようにキラキラと光るので地下でも暗くないというわけだ。
広い通路の突き当りには両開きの巨大な扉があり、左右にごつい体のお兄さんが立っている。手に長い槍を持っているから見張りかもしれない。ハル様が扉の前まで来ると、二人のお兄さんは軽く会釈した。
「お疲れさまです、閣下」
「王太子殿下はどちらにおられる?」
「今の時間であれば、王太子宮で執務をされているはずです」
「そうか」
お兄さん達は私をチラチラと見ながら扉を開けてくれた。明らかに「見たことない鳥だな」と不審げな顔をしていたけど、ハル様が抱っこしているから何も言えないらしい。
(ハル様ってこの国ではかなり偉い人なんだな……。王様がいる場所に顔パスで入るなんて、なかなか凄いことだよね)
これが例えば私ひとりだったら、ブルギーニュの時のように「迷い込むなよ」と追い出されていた事だろう。
ハル様は私を抱っこしたまま何の遠慮もない様子で階段を上がり、通路に出てからも慣れた様子で歩いていく。そして一つの扉の前で立ち止まり、私に言った。
「いきなり見せると有り難味が薄れそうだな……。ペペ、しばらくマントの中に隠れていてくれ」
「ペ? ペフゥッ!」
何のことやらと思っているうちに私は黒いマントの中に包まれ、そっと片手に抱っこされた。風呂敷に包まれたお歳暮状態。冬ギフトですか?
「失礼します」
「ん? おお、ハルディアか! 遠征から戻ったばかりなのにもう仕事してるなんて、そなたも真面目な奴だなぁ。仕事中毒か? ハハハ!」
風呂敷――じゃなくてマントの向こうから男性の声がする。結構声のデカい人だ。雰囲気からするとアラサーっぽい印象を受けるから、ハル様とは年が近いのかもしれない。
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