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第一部 そのモフモフは無自覚に世界を救う?
54 キーファの罠
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しばらく森の中を歩いて行くと、巨岩から泉が湧き出している場所に出た。御神体として飾れそうなほど大きな岩だ。その岩の所々に亀裂が入り、チョロチョロと音を立てて水が湧き出している。周囲は深い森なので、神々しい雰囲気があった。あの巨岩にしめ縄をかけてみたい。
「ここで少し休憩しよう」
「ふいぃ。本当に魔物が出てきませんね。聖獣のオーラは効き目抜群ですね」
ネネさんは収納魔法に腕を突っ込み、牛乳瓶のようなグラスと粉末入りの袋を取り出した。そしてグラスに粉末を入れ、湧き水を注ぎ、シャカシャカと振って飲んでいる。沼みたいにドロドロした緑色の飲み物だ。
「青汁だ」
「青汁ペエ」
「アオジル? なんですかそれは。私が飲んでいるのは魔力を回復させる超ドリンクですよ。滋養強壮に良いとされる黄金ウコンの粉末に、万年雪を食べて育つといわれる幻の生き物ユキハリモグラの毛をブレンドし――」
「……まずそう」
ハル様まで小声で言うのでネネさんは沈黙し、寂しそうな顔になった。秘密兵器と楽しげに言ってたのは青汁のことだったのか。なんかゴメンナサイ。別の話題を振ったほうが良さそう。
「ネネさんが持ってる杖、カッコいいペエ。いかにも魔法使いって感じだペエ」
「不思議な色だよな。杖って焦げ茶色のイメージだったけど、ネネリムが持ってるのは……灰白色っていうのかな」
ネネさんが持っている灰白色の杖は長さが二メートル程で、上部はカタツムリのように渦を巻いている。渦の中心に嵌め込まれた真っ青な石がとても綺麗だ。
羽つき馬車の上でドンと音がしたのは、この杖で天板を突いた音だったんだろう。
「千年槻の杖だな」
「ツキ……欅のことですか?」
ハル様の発言に、爽真が優等生らしく何か察している。そしてハル様は優しげに奴に頷いている。ぐぬぬぅ……なぜか悔しい。
「欅は五百年を越すあたりから幹の色が変わり始め、千年経つとこの色になるんです。空気中の魔力粒子や瘴気を吸収するうちに色が変わるらしいですよ。魔力との親和性がとても高いため、魔法使いの杖として利用されてます。但し、お値段もピンキリです!」
「ネネさんの話からすると、白っぽいほど高いって事になるペエ」
「この杖は先生に買ってもらったので、私は一ディラも出してません」
「ひでぇ……。賢者レゲが可哀相だ」
爽真が言った瞬間、急にハル様とネネさんが立ち上がって剣と杖を構えた。爽真が「へ?」と間の抜けた声を出している。私にも何がなんだか分からない。
慌てて立ち上がった爽真が二人と同じ方向に視線をむけたとき、
「不思議な面子だなぁ。まさか家族に会えるとは思わなかった」
聞き覚えのある声がして、真っ黒なローブをまとった男が現れた。肩の辺りまであるウネウネしたワカメみたいな髪――セル様を誘拐した奴だ。
「……キーファ」
ハル様が低く呟いたかと思うと、ダン!と地面を踏み込むような音がして風が通り抜けた。気が付いた時にはハル様がキーファに斬りつけていて、切り落とされた奴の左腕が地面に落ちている。速すぎてわけが分からない。
「えっ? なにが起こったペエ?」
「瞬間移動したのか?」
「魔力で一時的に脚力を増強させたんでしょう。騎士の戦い方は物理系に特化してますね」
目を瞠る私と爽真の隣で、ネネさんがのんびりした口調で呟いた。左腕を失ったキーファは血を流しながら空中に浮いているけど、奴の体を虹色に光る球体が包んでいる。結界かもしれない。
キーファは斬られたというのにニタニタと笑っていて、ひどく不気味だった。
「ったた……。これだから騎士との戦闘は嫌なんだよな。気が短いからさぁ」
「黙れ」
ハル様は何もない場所に足をつき、強く蹴って再びキーファに斬りつけた。結界が攻撃を弾いてギィンと音を立てる。
「今日はあんたらと戦いに来た訳じゃないよ。ちょっと遊びに来ただけ。ほい、お土産だ」
ふざけた口調で黒っぽい袋を地面に投げると、「じゃあね」と言って消えた。どこかに転移したらしい。あのワカメ野郎め、また逃げたのか。私だってあいつの髪の毛をむしってやりたかった。
ハル様が空中にタン、タンと足を付いて地面に戻ってくる。
「どうやって何もないとこに足をついてるペエ?」
「足を置くとこにだけ、小さな結界を張ってんだよ。でもあの速さで移動する人は初めて見た……。クエン先生でもあそこまで速くなかった」
ハル様とネネさんはキーファが残した袋に向かって歩いていく。ハル様が「ソーマ殿はそこにいてくれ」と言ったので、私たちは泉のそばに立ったままだ。
「ここで少し休憩しよう」
「ふいぃ。本当に魔物が出てきませんね。聖獣のオーラは効き目抜群ですね」
ネネさんは収納魔法に腕を突っ込み、牛乳瓶のようなグラスと粉末入りの袋を取り出した。そしてグラスに粉末を入れ、湧き水を注ぎ、シャカシャカと振って飲んでいる。沼みたいにドロドロした緑色の飲み物だ。
「青汁だ」
「青汁ペエ」
「アオジル? なんですかそれは。私が飲んでいるのは魔力を回復させる超ドリンクですよ。滋養強壮に良いとされる黄金ウコンの粉末に、万年雪を食べて育つといわれる幻の生き物ユキハリモグラの毛をブレンドし――」
「……まずそう」
ハル様まで小声で言うのでネネさんは沈黙し、寂しそうな顔になった。秘密兵器と楽しげに言ってたのは青汁のことだったのか。なんかゴメンナサイ。別の話題を振ったほうが良さそう。
「ネネさんが持ってる杖、カッコいいペエ。いかにも魔法使いって感じだペエ」
「不思議な色だよな。杖って焦げ茶色のイメージだったけど、ネネリムが持ってるのは……灰白色っていうのかな」
ネネさんが持っている灰白色の杖は長さが二メートル程で、上部はカタツムリのように渦を巻いている。渦の中心に嵌め込まれた真っ青な石がとても綺麗だ。
羽つき馬車の上でドンと音がしたのは、この杖で天板を突いた音だったんだろう。
「千年槻の杖だな」
「ツキ……欅のことですか?」
ハル様の発言に、爽真が優等生らしく何か察している。そしてハル様は優しげに奴に頷いている。ぐぬぬぅ……なぜか悔しい。
「欅は五百年を越すあたりから幹の色が変わり始め、千年経つとこの色になるんです。空気中の魔力粒子や瘴気を吸収するうちに色が変わるらしいですよ。魔力との親和性がとても高いため、魔法使いの杖として利用されてます。但し、お値段もピンキリです!」
「ネネさんの話からすると、白っぽいほど高いって事になるペエ」
「この杖は先生に買ってもらったので、私は一ディラも出してません」
「ひでぇ……。賢者レゲが可哀相だ」
爽真が言った瞬間、急にハル様とネネさんが立ち上がって剣と杖を構えた。爽真が「へ?」と間の抜けた声を出している。私にも何がなんだか分からない。
慌てて立ち上がった爽真が二人と同じ方向に視線をむけたとき、
「不思議な面子だなぁ。まさか家族に会えるとは思わなかった」
聞き覚えのある声がして、真っ黒なローブをまとった男が現れた。肩の辺りまであるウネウネしたワカメみたいな髪――セル様を誘拐した奴だ。
「……キーファ」
ハル様が低く呟いたかと思うと、ダン!と地面を踏み込むような音がして風が通り抜けた。気が付いた時にはハル様がキーファに斬りつけていて、切り落とされた奴の左腕が地面に落ちている。速すぎてわけが分からない。
「えっ? なにが起こったペエ?」
「瞬間移動したのか?」
「魔力で一時的に脚力を増強させたんでしょう。騎士の戦い方は物理系に特化してますね」
目を瞠る私と爽真の隣で、ネネさんがのんびりした口調で呟いた。左腕を失ったキーファは血を流しながら空中に浮いているけど、奴の体を虹色に光る球体が包んでいる。結界かもしれない。
キーファは斬られたというのにニタニタと笑っていて、ひどく不気味だった。
「ったた……。これだから騎士との戦闘は嫌なんだよな。気が短いからさぁ」
「黙れ」
ハル様は何もない場所に足をつき、強く蹴って再びキーファに斬りつけた。結界が攻撃を弾いてギィンと音を立てる。
「今日はあんたらと戦いに来た訳じゃないよ。ちょっと遊びに来ただけ。ほい、お土産だ」
ふざけた口調で黒っぽい袋を地面に投げると、「じゃあね」と言って消えた。どこかに転移したらしい。あのワカメ野郎め、また逃げたのか。私だってあいつの髪の毛をむしってやりたかった。
ハル様が空中にタン、タンと足を付いて地面に戻ってくる。
「どうやって何もないとこに足をついてるペエ?」
「足を置くとこにだけ、小さな結界を張ってんだよ。でもあの速さで移動する人は初めて見た……。クエン先生でもあそこまで速くなかった」
ハル様とネネさんはキーファが残した袋に向かって歩いていく。ハル様が「ソーマ殿はそこにいてくれ」と言ったので、私たちは泉のそばに立ったままだ。
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