幻魔少女物語〜神様の失敗で人間から異界人になった8人の話〜

campanella

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第二章 集う幻魔

第13話 噴気

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 なるほど。それでこの場で確かめたところ、幻魔だったということか。
「これで千代ちゃんも、一緒に春を救えるね!」
「うん!」
 由紀ちゃんと二人で頷きあう。何だかそれを見ていると、自分がいることに申し訳なく思った。何故かって?皆さんは忘れてるかもしんないけど、私はまだ戦うことが出来ない。幻魔の力が使えない。この場が必要としているのは、より強い人間だ。そのような場面に、無力な自分がのうのうと見ていていいのだろうか。
 そして、どうやらそう思っているのが面に出ている様だ。
 由紀ちゃんはちらっと私を見て、一瞬気の毒そうな顔をした。だがすぐに切り替え、そして言った。
「加奈。戦い気持ちはわかるよ。でも、きっと・・・、加奈が立ち上がるべき時のは、今じゃない。うまく言えないけど、たぶん加奈には加奈のタイミングがあると思う。その時を、ゆっくり待てばいいんじゃないかな?」
「・・・」
 私は何と言っていいのか迷い、黙ってしまう。果たしてそれが本当なのか、不安なのだ。
「矢代」
 松ノ殿が私を呼ぶ。
「君の活躍するときがきっとくる。近衛の言葉を、信じないか」
 そうだ。由紀ちゃんは嘘なんかつかない。きっとくる。私にも、二人の様に人を救える日が。
「うん!がんばって、二人とも!」
 戦闘員二人は、力強く私に頷き、回復した敵に向き直った。
「さあ、行こうか!」
「OK!」
 ダアン!竜のごとく飛び出し、相手の不意を衝く。
「後ろ頼む!」
「りょ!」
 そう言ってしまわないうちに、由紀ちゃんは誘拐犯の背後に回る。
 挟み撃ち!いいね。相手をかく乱してやっつける、最高の作戦だ。今回の戦いも、見ごたえがありそう。
 思わず私は二人に向かって言っていた。
「二人とも!連携崩れないでよ!」

 加奈の声が聞こえてくる。
「ふん、わかってら」
 自分でもわかるくらいに口をにんまりと開けて言う。
 今は千代ちゃんが敵を引き付けている。そして彼女が攻撃されるというところで、背にトドメの刃をさす。いーこと考えんじゃん、私。
「よ、ほっ、えい!」
 千代ちゃんが何かを敵に投げつけている。
「??」
 あれは。
「忍者の道具、まきびし。地面に置くことで、追手の足に刺さり動きを止める。基本中の基本だよ」
 今幻魔になったばっかりなのに、何得意げに言ってんだよ。まあ、助かったけど。
 しかし。バキ!ボキッ!
「「!!??」」 
 もはや驚くしかない様子で、まきびしは踏みつけられ、しまいには踏んでも分からないくらい小さくなってしまった。
 千代ちゃんはもう、あっけにとられて動けなかった。
 ダメダメ!静止してちゃ。次の手を考えないと。
 そうだ!
「千代ちゃん、手裏剣・・・、いや、手を固定できそうなもの無い?!」
「え、くないならあるけど・・・」
「それでいいよ!とにかく敵の動きを止めるんだ!」
「判った!」
 くないとは、崖を上ったり、敵を突き刺したりするときに使うものだ。
 なるべく急所に近い場所に刺し、それに気を取られている隙に切る。・・・今度は自画自賛しないぞ。
 しかし作戦という物は上手くいかないものである。
 敵の鉄拳が、大きくかぶりを振って襲い掛かってくるのだ。だがいつまでも、その相手をしてはいられない。そしてその攻撃を受けている間、私はあることに気がついた。
 攻撃と攻撃の間に、小さな間がある。その間を見極めれば、カウンターを仕掛けるタイミングが生まれる。つまり今すべきことは、敵をよく観察すること。そして、少しでも相手の間合いに入ること。
 やっぱりすごいぞ、私!短時間でこんな作戦を考えるなんて!
 なになに、向こうで『もう自慢はやめろ~』ていう声が聞こえる・・・。確かに今は、そんな時間じゃございませんね、はい。失礼しました。
 まあ、まあ。ここまで謎の自賛に付き合ってくれた皆さんには、恥ずかしいところを絶対に見せませんから。待ってくださいな。
 そのために今、しっかりと相手の動きを見つめてるんだし。
「由紀ちゃん!」
 千代ちゃんが私を呼び、現実に戻された。
「相手も弱ってきているし、このあたりで決めないと・・・」
 彼女にむかってストレートパンチがやって来た。かろうじてよける。そして言葉をつなぐ。
「こっちまで、スタミナ切れしちゃうよ!」
 判ってる。自分のことも大切に、だね。
 ようし、こっからは本気だ!
 ボオッ!
「全く、面白い奴だな。近衛は」
「楽しくなるとすーぐ興奮するんで」
 後ろで加奈と松ノ殿が話している。
 こんな時だってのに、ワクワクしてしょうがない。心が燃えちゃいそうだ。
 握った手の先にあるのは、紅蓮の炎に満ちた、勇士の刀である。
「さあ、やったりますか!」
 気分が高揚している。それがまた、私を熱くするのだった。
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