幻魔少女物語〜神様の失敗で人間から異界人になった8人の話〜

campanella

文字の大きさ
26 / 58
第二章 集う幻魔

第14話 追憶

しおりを挟む
  不思議な子だな。
 私はくないを構えながら、楽しそうにしている由紀ちゃんを見て思った。
 こんな時だってのに、はしゃいじゃって。でも、見てるこっちもやる気になる。久しぶりだな。自分がこんなにも活躍するときが、きたのは。まあ、自分が逃げてたっていう、ケースもあるけど。
「千代ちゃん」
 由紀ちゃんが私を呼んだ。
「作戦よろしく!信じてるよ!」
「まっかせて!」
 そして踏み出そうとした瞬間、足の力が抜けたような気がした。今のは何だ、めまいか。いや違う。じゃあ、何だ。手が足が、震えている。止まらない。息が苦しい、前に進めない。
 どうしたらいい、私はどうすればいい。誰か・・・、私を・・・、どうにか・・・。

「パパ!ママ!祐樹!」
 耳元で5歳くらいの子の声がした。誰がしゃべったんだろう。周りを見渡す。あれ、皆は。気付くと、私の周りには、友達誰一人いなかった。その代わり、自分の目の前を、幼稚園くらいの子が駆けていく。また声が聞こえてきた。
「あ、見てみて!お花だ!かわい~」
 どこかで聞いたことがあった。昔、どこかで。場所は広々とした公園で、仲の良い家族4人が、ピクニックをしている。女の子とその母は、原っぱで見つけた花で遊んでいて、父と少女の弟は、ただぼーっとそれを見ている。今、目の前にあるはずの景色とは違う、風景がそこにある。
 少女の顔が、長い髪のせいで見えなかった。私はその子の顔が気になり、なるべく足音を立てないようにそっと近づいた。
 ・・・ん?草の上を歩いているはずなのに、カサカサいわない。コツコツと、固い音がする。ガラス張りの上を歩いているようだ。砕けやしないと思うけど。
「ママ!私、お花みたいにかわいくなりたい!」
 女の子が言った。
「千代は、世界一かわいいよ」
「うわーい!」
 千代、千代・・・。私・・・?あの子はもしかして、小さいときの私か?
「おーい」
 私(?)の父は、二人に向かって声を上げた。
「バドミントン、やろう」
 母子二人は、父からラケットを受け取り、バドミントンを始めた。 
 私と同じ名前の女の子はとても強く、両親を圧倒した。それを見て私は、そういえば自分もバドミントン好きだったなあ、と思った。ちなみに弟は、その間ずっと飽きることなく園内を走り回っていた。
 その帰り道。
「すごいなあ、千代。また腕上げてえ」
 彼女の頭の上を、父が撫でた。
「ウフフフ、またやろうよ」
「ぼくもー!」
 楽しげな声が、ずっと響いていた。
 健気なことだ、と思っていると。いきなり世界が真っ暗になって、私は驚いた。
 次に見えたのは、小さな一軒家。その中で、さっき出てきたお父さんとお母さんが、何やら言い争っていた。
「祐樹には、普通の小学校は合わない!私立に行かせるべきだ!」
「あなた。そうしたら、祐樹に負担が掛かっちゃうわ。今のお友達とも、とても楽しくやっているし、いくら賢いからって、それは私達が決めることじゃない!」
「俺はあの子の幸せを願って、こう言っているんだ!お前にだってわかるだろ!」
「いいえ、それは願っているとは言わないわ!」
 その時だった。バチン!と乾いた音が、窓の内側から聞こえてきた。私は今、窓の外から一連の流れを見ていたんだけど、なぜか自分にまで、痛みが伝わってくるようだった。
「俺の教育方針を乱すようだったら、お前と千代は家から出ていけ!」
 その言葉を、聞いた覚えがあった。私は怒っている父を見上げた。その瞳にも既視感を覚えた。
 次の瞬間、冷たいガラスの感触がなくなり、窓に当てていた手のひらに、何もなくなった。
 お次の風景は、これまた小さなアパート。表札には、『佐々木』とあった。
 ・・・さっきの家の表札は、『松田』だったな。
「千代、今日から名字は佐々木よ。松田千代じゃなくて、佐々木千代」
「うん」
 頬にばんそうこうが貼られた母親と、私と同じ名前の女の子が、話している。
 松田、松田・・・、!!!
 私の名前は、佐々木千代。でも、小学校2年生までは。
「松田千代・・・。・・・そうか、これは」
 私の頭の中に眠る、遠い記憶。それが今こうして、映し出されている。
「走、馬灯・・・?私今、死にそうなの?」
 走馬灯。かつて社会現象を起こした漫画には、『迫りくる死から免れるため、過去をさかのぼりその方法を探っている』と書かれている。でも私は、さっきまで何してた?
「ああ、そうだ。私はさっきまで、呪われた誘拐犯と戦っていたんだ」
 無理だ。私にあんな怪物が、倒せるわけない。あの漫画は助けられてたけど、私の場合は違う。何の能力の無い、普通の人間だ。主人公と、そもそもが違うのだ。だからもうこのまま・・・、ここに居ようかな。
「そうだよ。もう、ここで神様の迎えをまとう。その方がずっと楽だ」
 地上から離れてしまおう、そう考えていた時だった。
「千代」
 背後で声がした。母だった。さっき見た自分より、少し成長した私と玄関で向き合っている。
「おじいちゃんと、おばあちゃんと、このお家をよろしくね・・・」
 どこか、転勤するようだった。小5の時に、母さんイギリスに行ったんだったけ。まだ、帰ってきてないな。いつ戻るか、判らないらしいし。
「母さん・・・」
 高学年になり始めた私は、悲しい顔をしていた。
 すると。母は思い切り私を抱きしめ、言った。
「千代は・・・、私の誇りよ。苦しいときもあるかもしれないけど・・・、精一杯生きてね・・・。また会えたら、いろんなこと、母さんに教えてね」
「うん・・・」
 私はその様子をずっと見ていた。
 そして。胸の中に、一つの決意が芽生えた。
 一人で育児も、家事も、仕事もこなしていた母さんは、私のことを思っていた。
 ずっと私は、母に忘れられたと思っていた。それで、もう地上から離れようとしていたのかもしれない。
「私はずっと・・・、寂しかったんだ・・・」
 ようやく思い出した。自分の気持ち、胸の中にあった思い。辛かった、苦しかった。でも、言えなかった。
 これからはきっと、きちんと前を向いて歩ける気がする。
「私は!生きる!これからも!」
 真っ暗な空に向かって叫んだ。
 次の瞬間、まぶしい光がどこから降り注ぎ。
 
 気がつくと私は、敵を追い詰めていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。  大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance! (also @ なろう)

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

処理中です...