幻魔少女物語〜神様の失敗で人間から異界人になった8人の話〜

campanella

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第二章 集う幻魔

第15話 自分の力で

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「!」
 私はさっきまで見ていた、千代ちゃんと様子が変わったのに驚いた。
 今千代ちゃんは、私と一緒に誘拐犯と戦っていた。普通に戦ってた・・・はずなんだけど。なんで驚いたか、というと。相手に接近しながら、泣いていたのだ。千代ちゃんが。
 何か、あったのかな。彼女の気持ちは、彼女にしかわからない。でも、心配はしていた。
「由紀ちゃん」
 今泣いているその人に呼ばれた。
「こいつは、私が倒していい?」
「!一人で大丈夫?」
「うん、任せて」
 私は彼女を信じて、前線から離れた。
「良いの?あのままで」
 加奈がさっきの様子を見ていたらしく、不安そうに聞いてきた。私はそれに、正直に答えた。
「私も少し、大丈夫かな?とは思うけど・・・。それよりも、千代ちゃんが敵を倒して、何かを成し遂げたいっていう気持ちが伝わってきてさ。その邪魔をしたくないと思って」
「・・・そっか」
 見かねたように、松ノ殿が言った。
「先ほど彼女の脳に眠る、記憶を探ってみた。彼女の本名は、松田千代。教育上の問題で、父と母が離婚。弟と父と別れ、母の旧姓である、佐々木を名乗るようになった。その生活も母の転勤により変わってしまい、現在は還暦を超えた、祖父母と共に暮らしている」
 勝手ながらも、辛かったんだろうな、と思った。自分が千代ちゃんだったら、苦しい思いをする。
「さっき佐々木の体が、震えてたの、判ったか」
「はい」
 私が呼びかけた時、痺れたように震えていた。
「その時私は、彼女に何かがあると察した。そして、思い出してもらう形で彼女の記憶を探った」 
 でも、何で泣いてるんだ?
「彼女は帰ってこない母を、自分のことを忘れていると考えていた。しかし記憶が戻ったことで、母の本当の気持ちを知った。それに気付けなかったことを、後悔しているのかもしれない」
 今はいないお母さんに、今の自分の気持ちを教えるために、こうして戦っている。私は千代ちゃんを、一人の戦友として強いまなざしを送った。

 もうすぐだ。もうすぐ倒せる。母さん、今こそ自分の力で乗り越えてみせるよ。このきゅう地を。
 目の前で、疲れ切った犯人が膝をついていた。あとはトドメか。なら。
「ここは、忍者らしくいこうじゃない!」
 グッ!手に装着したのは、代表的な武器・手甲かぎだ。
 熊手のような形をしていて、攻撃にもガードにも使える万能タイプ。
「はあっ!」
 一息でやろうとしたけど、無理だった。またもや、敵の鉄拳が私を襲う。
 でも大丈夫。私にはこれがある!
「えいっ」
 投げたのは、けむり爆弾だ。彼の周囲を、それが覆う。
 敵は私が居たはずの前方ばかり気にしていて、後ろのことなんか眼中にない。
「あんたの背後はがら空きだよ!」
 ゆうかい犯はすぐに攻撃に転じようとした。しかし私の方が速かった。
   失敗したな!
 私の爪は、バリバリ!と彼の背中に深い傷を負わせた。
「~~~っ!ぎゃあああ!!!」
 その傷口から広がるようにして、彼の体は灰のように消えていった。
 終わった・・・、勝った。一人で・・・出来た。
「ううっ!」
 急に疲労が!私はその場にたおれた。
 由紀ちゃんがかけよって、起こしてくれる。
「大丈夫!?」
 加奈ちゃんも、心配そうに聞いてきた。
 力がなかったけど、かろうじて応えた。
「うん。大丈夫。春は」
 由紀ちゃんは少し明るい感じで、言った。
「平気だよ。さっきまで気を失ってたけど、もう治って今は___」
 その時、当の本人の春が言った。今、振り向くくらいの気力なんてない。でも、声は分かる。
「動けてるよ」
 それは良かった。
「ご苦労だった。佐々木、近衛」
 松ノ殿が言った。更に続けた。
「谷川が吸血鬼の中でも特に、優秀であることが判った。日に当たっても、水をかぶってもやられない。自分のこともあっという間に、治ゆしてしまう」
 凄いな。私の力じゃあ、まだそこまで及ばない。
 ああ、疲れた。もう帰りたい。
「さて」
 神は新しい話を始めた。
「これで8人のうち、4人がそろった。君達に話したいことがある。明日、大同公園の『森のベンチ』で・・・、そうだな、4時ぐらいに来てほしい」
「何かあるんですか」
「そこから先は明日だ。では諸君、自宅でしっかり休みたまえ」
 気がつくと、自分の体力が元に戻っていた。松ノ殿が直してくれたのか?真相は判らない。春みたいに、治ゆ能力があるのかもしれない。
 もう一度前を向くと、帰る気満々で走っている友達がいた。
 空を見ると、少し向こうに紺色の空があった。太陽が沈みかけている。家に帰ろう。
 私は土管の近くに置いてあった、スリーウェイを背負うと、もう公園を出た仲間達に言った。
「ねえ、一緒に帰ろう!」
 と。

 第二章・完
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