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第三章 修行の日々
第11話 それぞれの修行【加奈編・下】
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基地に着くと、私は食堂で牛丼を食べた。本当に体力を使ったからね。でも本番はこれからだ。
「ふう・・・」
返却口に返すと、外で待っていた松ノ殿に言った。
「美味しかったです」
すると彼は。
「当然だよ。高級でデリケートな牛を厳選しているからな」と笑った。
「じゃあ今度は高級なうなぎがたべたいです」
「嫌だよ。そこまでしたら私の生活費が、無くなるじゃないか」
「はは」
そんな雑談も、彼とは少しできるようになった。ずっと怪しいって思ってたけど、良いやつだって判ってからは、ちょっと彼と話すのが楽しくなった。
さて。食堂から少し歩くと、訓練室がある。普通のジムっぽい部屋じゃなくて、武舞台があって、武器や服が収納されていそうな棚が設置されている。それから奥には6つの扉があって、それぞれ大きな漢字シールが貼ってある。
体・攻・速・技・気・防。左から順番にこんな感じ。
あえて略さないなら、体力、攻撃、速さ、技術、気力、防御となる。つまり、一回の練習で全てを学ぶのではなくて、一個一個確実に能力を得ていくシステムなのだ。
私が最初に入ったのは、『速』の部屋だった。文字通り速さに関することを教えてくれるらしいが、小5の計算問題ではないということは明白だ。・・・これはボケです。本気じゃないよ。
講師はやはりロボットで、やはり体に似合わないアクセントで指導した。
「ここは速さを学ぶ部屋だ。しかしただ速ければいいんじゃない。常に相手を裏切らなければならない」
「どういうことですか」
「ああ、この言い方は難しかったかな。そうだね、要は相手が思うより先に動くってことさ」
「なるほど・・・」
うーん、少し難しいな。第一こんな授業受けた事ないから、ノートも取ってないし、特に質問もしていない。
「まあ、やってみたほうが速い。ちょっと待て」
「?」
奥の倉庫から、大きな機械を取り出してきた。これは、ゲームセンターの・・・。
「見たことあるだろう。モグラ叩きだよ」
「ああ、兄ちゃんがいつもやるやつ」
私は、ゲームを真剣に遊ぶ兄の背中を思い出した。
私の兄は高校生で、日常ではほとんど顔を合わすことがない。一人で考えてごとをしているのだそうだ。
私には兄の思いがよく判らなかった。そんなことしてるなら、話しに来ればいいのに。そう思っていた。
不思議な我が兄の話はここまでにして。
私はロボット講師に聞いてみた。
「これで何をするつもりですか」
すると目の前の固い動きをする教師は、そんなことも判らないのかと言わんばかりに。
「叩くんだよ、モグラを。知らないのかい?」
と馬鹿にしたような目で返してきた。
・・・腹が立った。なぜそのようなことをいわれなきゃいけないのか。だかだら。
「ふん!」
彼の心臓部分と思われる場所に向かって、めいっぱい拳を突き出した。つまりパンチしたのだ。
ビュン!
漫画の瞬間移動みたいによけられた。
「っ!」
見失った。どこだ!
「ここにいるよ」
声の方へ足を振り上げる。だが。
ひゅん。
「またか」
次はもっと速く動け。
「そこだ!」
ダアン!と力強く踏み込んで、天井に跳んだ。そこには彼が浮いていた。
「だあああ!!!」
体をねじり、空中でうつ伏せになる。足だけ開き、堅い体にぶつける。
「!!!」
その時私ははてな、と思った。
私はまだ誰からも武術を教わっていない。むしろ、今から習うところだ。それなのに、もう何年も前から知っていたかのような立ち回りを、気付かないうちにこなしている。
これがとても不思議だった。さっきもそうだ。頭のどこであの技が思い浮かんだのか。
でも今はそんなこと考えてちゃいられない。
床の方から、ドーンと音がした。勝ったかな?だったら凄いや。初見で敵を圧倒するのは見事なこと。
そう思ったのは刹那だけだった。
「お前さあ」
後ろから敵役っぽい低い声がした。
びっくりして振り返ると、さっき落としたはずの教師が冷たいまなざしをしていた。
「そんなんで勝てると、思ってんのかよっ!!」
ガッ!うわっ!こっちが蹴られたし。
「ううっ!」
天井を見ながら私は下に落ちていった。
床についた途端、一瞬にして全体に亀裂が入る。
「ん・・・。・・・・っ!ぐ・・・」
ダメだ。体が重くて起き上がれない。呼吸も苦しい。
「判ったろう。お前はまだまだなんだよ。このままじゃ、お前マジ死ぬぞ」
私はその言葉を、大きな岩を背負うみたいに受け取った。
その後、私はモグラ叩きを永遠とやり続けた。途中で気が遠くなりそうでも、ひたすら叩き続けた。
くったくたになって部屋に戻ると、まるで死んだように眠りにつく。毎日5時起きのリズムに合わせて。
モグラが上達してくると、次のステップに映った。
講師が投げてくる小石を避ける訓練だ。
「あだっ」
一つか二つかわして、頭に直撃するのがいつものパターン。石に当たったって、どうってことないよって思った人。違います。いつかやってみて。すごい痛いから。たぶんもう少し手加減していなかったら、気を失う。
それからこの石、時々変な曲がり方するもん。いつも正面からくるとは限らない。右だったり左だったり、ごくまれに下からもくる。
石のスピードも日によって変わる。昨日はゆっくりだったのに、今日は目が追いつかない程速い。もはや直感で避けるしかなかった。大体外れるけど。
他の部屋の授業も受講した。
防御の部屋では、授業中やられっぱなしでいた。
ロボットが繰り出す重い攻撃を、腕をクロスしたりボクシングのアッパーや、フックっぽいポーズでガードする。
ぶるん!
「っ!」
先生の放ったパンチを頬をかすった。この時私は、小石の訓練が身についたと実感した。間違いなく今の回避は、努力の結果だった。前の私だったら、気づかずに倒れていただろう。
でもだからって、食らわない訳じゃないけど!
他にも、受け身の練習や危険察知、技の練習に時間を費やした。
それから姿勢や呼吸の指導も受けた。普通の柔道の授業もした。
「うおおっ、背負い投げえーー!!」
ドン!私の投げた木造人形が石のごとく床にぶつかり、大きな亀裂を作る。それでも足りないと言われる。それらが天井まで響くくらい強くと、指示される。
「そういわれてもねえ」
無理なものは無理だ。けれどやり続けていくうちに、基礎体力が上がったのは確かだった。
けど、 何日たっても力試し用ロボットには勝てなかった。これは私と同レベルの実力だというが、多分違うね。だって強すぎるもん。これは私の力じゃない。速すぎるし、身軽そうだし。
でも、勝たなければ。弱音なんて吐かない。ただそこに立ち向かうだけ。
そんな、厳しい修行に明け暮れていたある日。息を荒くしながら食堂に向かう途中、松ノ殿に話しかけられた。
「上手くやってるか」
「ええ。何とか」
無気力に応えるしかなかった。
「この世界って、今何日だっけ」
「14です。6月14日」
現実世界では6月の序盤なのに。感覚がおかしくなりそうだ。
「2週間後、お前達の技能テストをしようと思うんだ。あまり長く訓練に、時間を割いてもいけない」
なるほど。そろそろ最後の追い上げか。いや、それは受験か?
「いいか。今まで覚えてきた極意を一気に出すんだ。もう君は、誰にも負けない」
よし、やってやろうじゃない。
それからというもの、私は寝る間を惜しんで特訓するようになった。
肺が胸が破れそうなほど、骨が筋肉が壊れそうなほど、休むことなく動き続ける。
背負い投げだけで部屋を崩壊できるようにもなった。そんときは修理が本当に大変で、3日間ほど使えなかった。
でもこの訓練の間、私の体は何も変わっていないように思えた。ムキムキになるかと思ったら、全然そんなことない。いつも通り、やせていて足が長い。
この変化のなさに、私は焦った。
どういうこと?私は成長していなかったの?何も得られなかった?それとも、やっぱり幻魔の素質がないのか?
自問自答をしたところで答えは返ってこない。今はただ、強くなるだけだった。
そしてこの日の不安は、すぐに消えることになる。試験の日に。
「試験時間は無制限!先に相手をノックアウトさせた方が勝者だ」
いよいよ始まる、この時が。勝負は一瞬。必ず決める!
あ、その前にひとつ報告。
私、服換えました。いやー、ちょっと水色はダサいなーと思って。だから今は、普通の白黒にしています。
さてさて。
機械との真っ向勝負。よく動きを見れば勝てるはずだ。
「両者構えて」
松ノ殿が指示を出す。そして従う。右手を後ろに引き、左の拳を前に突き出す。
武術用リングの上に、気分を出すためだけに用意された砂嵐が吹く(なんで?)。
「よーい」
もっと力を込めた。まだか、まだか。
「・・・始めっ!!」
ダンっ!勢いよく地面をける。足元が熱くなる。
勝負は一瞬で片付いた。初めて私は、ロボットに自分の攻撃を当てた。これまで一回も手が出なかった私が、進化して強くなっている。
バキバキバキ!私のパンチが、固い首の真ん中に当たり亀裂を生む。最後のあがきもできず、やがて首と胴体が離れた。
バキイ!!それに伴って破片も飛び散る。
ゴッ、ゴッ、ゴロゴロ・・・・。・・・グシャ!ジジジ・・・。
首はリングの上から転げ落ち、体はその場にうなだれた。中の電線が壊れて、動かなくなっている。
私も神も、しばらく呆然としていた。どうにか気を取り戻し、自らの手を見る。
「勝てた・・・。強く・・・なってる!!!」
やったー!!と、部屋中に叫んだ。
松ノ殿がかがみこみ、私が割った機械の体を見て言った。
「まさかこいつが、子供に負けるなんて・・・。・・・・大したもんだ」
彼がそういうくらいだから、本当に強かったのだろう。難なく攻略した自分を、自慢したくなる。
神は部品を処理すると、私に言った。
「君はすごい子だ。・・・・よく頑張ったな」
私は頷くと、訓練室を退場した。
「どうだった?!」
次の受験者である春が聞いてくる。静かに応えた。
「勝てたよ。とっても速くね」
すると。
「うわあ、やったじゃん!」
「頑張ったんだね」
「すごい、すごい!」
皆一緒に喜んでくれた。これが私にとって、修行してきたことの一番のごほうびだった。
基地の前の大きな野原に立ち、訳もなく微笑んだ。
風が私の成長を祝うようで気持ちよかった。
「ふう・・・」
返却口に返すと、外で待っていた松ノ殿に言った。
「美味しかったです」
すると彼は。
「当然だよ。高級でデリケートな牛を厳選しているからな」と笑った。
「じゃあ今度は高級なうなぎがたべたいです」
「嫌だよ。そこまでしたら私の生活費が、無くなるじゃないか」
「はは」
そんな雑談も、彼とは少しできるようになった。ずっと怪しいって思ってたけど、良いやつだって判ってからは、ちょっと彼と話すのが楽しくなった。
さて。食堂から少し歩くと、訓練室がある。普通のジムっぽい部屋じゃなくて、武舞台があって、武器や服が収納されていそうな棚が設置されている。それから奥には6つの扉があって、それぞれ大きな漢字シールが貼ってある。
体・攻・速・技・気・防。左から順番にこんな感じ。
あえて略さないなら、体力、攻撃、速さ、技術、気力、防御となる。つまり、一回の練習で全てを学ぶのではなくて、一個一個確実に能力を得ていくシステムなのだ。
私が最初に入ったのは、『速』の部屋だった。文字通り速さに関することを教えてくれるらしいが、小5の計算問題ではないということは明白だ。・・・これはボケです。本気じゃないよ。
講師はやはりロボットで、やはり体に似合わないアクセントで指導した。
「ここは速さを学ぶ部屋だ。しかしただ速ければいいんじゃない。常に相手を裏切らなければならない」
「どういうことですか」
「ああ、この言い方は難しかったかな。そうだね、要は相手が思うより先に動くってことさ」
「なるほど・・・」
うーん、少し難しいな。第一こんな授業受けた事ないから、ノートも取ってないし、特に質問もしていない。
「まあ、やってみたほうが速い。ちょっと待て」
「?」
奥の倉庫から、大きな機械を取り出してきた。これは、ゲームセンターの・・・。
「見たことあるだろう。モグラ叩きだよ」
「ああ、兄ちゃんがいつもやるやつ」
私は、ゲームを真剣に遊ぶ兄の背中を思い出した。
私の兄は高校生で、日常ではほとんど顔を合わすことがない。一人で考えてごとをしているのだそうだ。
私には兄の思いがよく判らなかった。そんなことしてるなら、話しに来ればいいのに。そう思っていた。
不思議な我が兄の話はここまでにして。
私はロボット講師に聞いてみた。
「これで何をするつもりですか」
すると目の前の固い動きをする教師は、そんなことも判らないのかと言わんばかりに。
「叩くんだよ、モグラを。知らないのかい?」
と馬鹿にしたような目で返してきた。
・・・腹が立った。なぜそのようなことをいわれなきゃいけないのか。だかだら。
「ふん!」
彼の心臓部分と思われる場所に向かって、めいっぱい拳を突き出した。つまりパンチしたのだ。
ビュン!
漫画の瞬間移動みたいによけられた。
「っ!」
見失った。どこだ!
「ここにいるよ」
声の方へ足を振り上げる。だが。
ひゅん。
「またか」
次はもっと速く動け。
「そこだ!」
ダアン!と力強く踏み込んで、天井に跳んだ。そこには彼が浮いていた。
「だあああ!!!」
体をねじり、空中でうつ伏せになる。足だけ開き、堅い体にぶつける。
「!!!」
その時私ははてな、と思った。
私はまだ誰からも武術を教わっていない。むしろ、今から習うところだ。それなのに、もう何年も前から知っていたかのような立ち回りを、気付かないうちにこなしている。
これがとても不思議だった。さっきもそうだ。頭のどこであの技が思い浮かんだのか。
でも今はそんなこと考えてちゃいられない。
床の方から、ドーンと音がした。勝ったかな?だったら凄いや。初見で敵を圧倒するのは見事なこと。
そう思ったのは刹那だけだった。
「お前さあ」
後ろから敵役っぽい低い声がした。
びっくりして振り返ると、さっき落としたはずの教師が冷たいまなざしをしていた。
「そんなんで勝てると、思ってんのかよっ!!」
ガッ!うわっ!こっちが蹴られたし。
「ううっ!」
天井を見ながら私は下に落ちていった。
床についた途端、一瞬にして全体に亀裂が入る。
「ん・・・。・・・・っ!ぐ・・・」
ダメだ。体が重くて起き上がれない。呼吸も苦しい。
「判ったろう。お前はまだまだなんだよ。このままじゃ、お前マジ死ぬぞ」
私はその言葉を、大きな岩を背負うみたいに受け取った。
その後、私はモグラ叩きを永遠とやり続けた。途中で気が遠くなりそうでも、ひたすら叩き続けた。
くったくたになって部屋に戻ると、まるで死んだように眠りにつく。毎日5時起きのリズムに合わせて。
モグラが上達してくると、次のステップに映った。
講師が投げてくる小石を避ける訓練だ。
「あだっ」
一つか二つかわして、頭に直撃するのがいつものパターン。石に当たったって、どうってことないよって思った人。違います。いつかやってみて。すごい痛いから。たぶんもう少し手加減していなかったら、気を失う。
それからこの石、時々変な曲がり方するもん。いつも正面からくるとは限らない。右だったり左だったり、ごくまれに下からもくる。
石のスピードも日によって変わる。昨日はゆっくりだったのに、今日は目が追いつかない程速い。もはや直感で避けるしかなかった。大体外れるけど。
他の部屋の授業も受講した。
防御の部屋では、授業中やられっぱなしでいた。
ロボットが繰り出す重い攻撃を、腕をクロスしたりボクシングのアッパーや、フックっぽいポーズでガードする。
ぶるん!
「っ!」
先生の放ったパンチを頬をかすった。この時私は、小石の訓練が身についたと実感した。間違いなく今の回避は、努力の結果だった。前の私だったら、気づかずに倒れていただろう。
でもだからって、食らわない訳じゃないけど!
他にも、受け身の練習や危険察知、技の練習に時間を費やした。
それから姿勢や呼吸の指導も受けた。普通の柔道の授業もした。
「うおおっ、背負い投げえーー!!」
ドン!私の投げた木造人形が石のごとく床にぶつかり、大きな亀裂を作る。それでも足りないと言われる。それらが天井まで響くくらい強くと、指示される。
「そういわれてもねえ」
無理なものは無理だ。けれどやり続けていくうちに、基礎体力が上がったのは確かだった。
けど、 何日たっても力試し用ロボットには勝てなかった。これは私と同レベルの実力だというが、多分違うね。だって強すぎるもん。これは私の力じゃない。速すぎるし、身軽そうだし。
でも、勝たなければ。弱音なんて吐かない。ただそこに立ち向かうだけ。
そんな、厳しい修行に明け暮れていたある日。息を荒くしながら食堂に向かう途中、松ノ殿に話しかけられた。
「上手くやってるか」
「ええ。何とか」
無気力に応えるしかなかった。
「この世界って、今何日だっけ」
「14です。6月14日」
現実世界では6月の序盤なのに。感覚がおかしくなりそうだ。
「2週間後、お前達の技能テストをしようと思うんだ。あまり長く訓練に、時間を割いてもいけない」
なるほど。そろそろ最後の追い上げか。いや、それは受験か?
「いいか。今まで覚えてきた極意を一気に出すんだ。もう君は、誰にも負けない」
よし、やってやろうじゃない。
それからというもの、私は寝る間を惜しんで特訓するようになった。
肺が胸が破れそうなほど、骨が筋肉が壊れそうなほど、休むことなく動き続ける。
背負い投げだけで部屋を崩壊できるようにもなった。そんときは修理が本当に大変で、3日間ほど使えなかった。
でもこの訓練の間、私の体は何も変わっていないように思えた。ムキムキになるかと思ったら、全然そんなことない。いつも通り、やせていて足が長い。
この変化のなさに、私は焦った。
どういうこと?私は成長していなかったの?何も得られなかった?それとも、やっぱり幻魔の素質がないのか?
自問自答をしたところで答えは返ってこない。今はただ、強くなるだけだった。
そしてこの日の不安は、すぐに消えることになる。試験の日に。
「試験時間は無制限!先に相手をノックアウトさせた方が勝者だ」
いよいよ始まる、この時が。勝負は一瞬。必ず決める!
あ、その前にひとつ報告。
私、服換えました。いやー、ちょっと水色はダサいなーと思って。だから今は、普通の白黒にしています。
さてさて。
機械との真っ向勝負。よく動きを見れば勝てるはずだ。
「両者構えて」
松ノ殿が指示を出す。そして従う。右手を後ろに引き、左の拳を前に突き出す。
武術用リングの上に、気分を出すためだけに用意された砂嵐が吹く(なんで?)。
「よーい」
もっと力を込めた。まだか、まだか。
「・・・始めっ!!」
ダンっ!勢いよく地面をける。足元が熱くなる。
勝負は一瞬で片付いた。初めて私は、ロボットに自分の攻撃を当てた。これまで一回も手が出なかった私が、進化して強くなっている。
バキバキバキ!私のパンチが、固い首の真ん中に当たり亀裂を生む。最後のあがきもできず、やがて首と胴体が離れた。
バキイ!!それに伴って破片も飛び散る。
ゴッ、ゴッ、ゴロゴロ・・・・。・・・グシャ!ジジジ・・・。
首はリングの上から転げ落ち、体はその場にうなだれた。中の電線が壊れて、動かなくなっている。
私も神も、しばらく呆然としていた。どうにか気を取り戻し、自らの手を見る。
「勝てた・・・。強く・・・なってる!!!」
やったー!!と、部屋中に叫んだ。
松ノ殿がかがみこみ、私が割った機械の体を見て言った。
「まさかこいつが、子供に負けるなんて・・・。・・・・大したもんだ」
彼がそういうくらいだから、本当に強かったのだろう。難なく攻略した自分を、自慢したくなる。
神は部品を処理すると、私に言った。
「君はすごい子だ。・・・・よく頑張ったな」
私は頷くと、訓練室を退場した。
「どうだった?!」
次の受験者である春が聞いてくる。静かに応えた。
「勝てたよ。とっても速くね」
すると。
「うわあ、やったじゃん!」
「頑張ったんだね」
「すごい、すごい!」
皆一緒に喜んでくれた。これが私にとって、修行してきたことの一番のごほうびだった。
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