褐色ショタを犯しても宇宙人なら合法だよな?

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落

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第10話

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 アパート前で空から光を照射されたと思ったら、そこは見知らぬ広い半円形の部屋。
 宇宙船の中の部屋だと言われた。
 ダイキとは別々の部屋に入れられたが、どちらも犯罪者用の部屋ではないらしい。

 のっぺらぼうな白い内装で、それっぽい計器類などはなかった。
 トレーニング器具のようなものが壁際に並べてあり、大きな窓からは青い空が見えていた。どこかのジムだと言われても信じたかもしれない。
 中央にある椅子も座り心地の良さそうなリクライニングチェアだ。よく見るとシートベルトがついてはいたが。

 宇宙船らしさはまったくなかったのだが、出発後すぐに窓の外が真っ黒になった。
 そこで少しのあいだ無数の星が見えたことで、ようやく現実感が芽生えてきた。
 ただそれもすぐに、ただの黒一色の景色に変化してしまったのだが……。

 体感的には一時間もかかっていないように感じたかもしれない。

「着きましたよ」

 と部屋に入ってきた青年警官に言われ、その場で俺は目隠しをされた。

「あまり私たちの国の景色を見ないほうがよいと思いますので」

 とのことらしい。
 着くころには微妙に興味が発生していたのだが、とりあえず素直に従った。



 手を引かれ。途中乗り物のようなものに乗せられ。
 目隠しを外されたときには、俺はトイレの個室くらいの小ささの部屋で、椅子に座っていた。

 窓はなく、全面灰色の壁だった。やや不気味だ。
 付き添いの人……宇宙人は、すぐに退室した。
 一人で待つ。

『わたくしの話している言葉はわかりますか?』

 椅子の前の壁全面がボワッっと白く光り、日本語の機械音声と思われる声が聞こえた。
 いきなりだったので心臓が跳ねる。
 前の壁はモニタになっていたようだ。何やら知らない文字がところどころに表示されていた。

「はい。わかります」

 俺はとりあえず前を向いて答える。

『タケト・スガイ様、このたびはご協力ありがとうございます。これからあなたには別の部屋で参考人質疑を実施させていただくのですが、その前に、あなたの所持品の消毒とお体のメディカルチェックを実施させていただくルールになっております。お手数をおかけいたしますがご協力よろしくお願いいたします』
「あ、そうなんですか? こちらこそよろしくお願いします」

『まずは消毒のため、光を照射いたします。目は開けていただいたままでかまいません』

 数秒だろうか。壁、床、天井から青い光が出た。
 何が起きたのかはわからないが、これで消毒完了ということか。

『続いてメディカルチェックをおこないます』

 今度は光が出るのではなく、ウイーンという小さな機械音が少しの間続いた。

『全身スキャンの結果、スガイ様のお体に悪性腫瘍、がんを認めます。通常は参考人質疑の前に治療させていただいておりますが、伝染病ではなくまだ重篤な容体でもないため、このままでも今回予定されている質疑に支障はございません。よってご希望であれば未治療のままにすることも可能です。なお完治までの所要時間は数分で、この部屋での治療が可能です。いかがいたしましょうか?」

 ……。



 ◇



 参考人質疑が終了すると、そのあとに案内された応接室のような部屋で、俺はダイキと再会した。

「タケトさん!」

 俺は座る気になれず立っていたため、ドアから現れた彼はそのまま飛びつくように抱き付いてきた。

「ダイキ。お前まさか、俺を助けるためにわざと警察沙汰を起こしたのか」
「へへ、そういうこと! オレの星では、がんは普通に治るし、小さいときに予防の薬もやるみたいで。オレとかがんを知らなかったくらいだよ」

 もう背中や腰の痛みなどはない。倦怠感もなくなっている。本当にがんは消えているのだろう。

「じゃあ、何日かうちに来ていなかったのは……」
「うん。こっちの国の法律とかルールとかをちょっと調べてた。タケトさんをこっちに連れてくる方法がないかなーってね。そしたら、オレがタケトさん相手に問題を起こして警察の人が来れば、一緒に連れてってもらえそうってわかったんだ」

「……なるほどな。お前は命の恩人だな」
「どういたしまして」
「でもお前は補導されてしまったんだから、親に怒られるんじゃないか?」
「そんなの、タケトさんの命に比べたら何でもないよ」

 俺は抱擁していた腕に、力を込めた。

「ありがとう」

 そして体を離し、彼の両肩をつかんだ。

「何かお礼がしたい。俺がお前にできることは何かあるか?」
「もうお礼はもらったよ? 体でね」

 俺は苦笑。ダイキは少しイタズラじみた笑顔。
 そこでスライドドアが開き、係員と思われる人物が二人入ってきた。
 一人は手に目隠しを持っている。

「タケト・スガイ様、お待たせいたしました。お帰りの船までご案内させていただきます」

 ダイキはまた軽く抱き付いてきた。

「じゃあオレはこのままこっちに戻るけど、タケトさん、気を付けて」
「ああ。いろいろありがとう。元気でな」

 彼の背中をポンポンと軽く二回叩き、離れた。
 俺の目に、目隠しがされる。
 ではまいりましょう、と腕を掴まれ、歩き出した。

「あ、待ってタケトさん」
「何だ?」

 立ち止まり、答える。

「またこっちが次の長い休みに入ったら、タケトさんのとこに行きたい。いい?」
「当たり前だ。ぜひ来てくれ」
「まだそのときオレはギリギリ十四歳にはなってないはずだから、またタケトさんに我慢させるけど。それでも?」
「もちろんだ」

 ああ、また夜に悶々とする地獄の毎日が来るのか――。
 そう思うと、俺はうれしくなった。



(終わり)
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