男子高校生を生のまま食べると美味しい

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落

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第6話 しかも、隣だった……

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 一駅ということもあり、すぐ最寄り駅に到着。

「じゃあ、わたしは東口なので」
「俺も東口です」
「あらー、奇遇っ!」

 改札を出て、南口から伸びている商店街の通りを、並んで歩く。
 もうすぐ日没なので、影が横に長く伸びているはずだ。
 だが夕方なので人が多く、どこまで伸びているのかはわからない。

「ねえダイチくん。うちに入社が決まったら、電車で通うの?」
「いえ、この距離ですし。自転車か、運転免許を取ったら原付で通うことになると思います」

 一駅ならそのほうがいいのかな?
 あまり一駅という距離を自転車で走ったことがない私は、ピンとこなかった。

 商店街を抜けると、大きな交差点。

「じゃあ、わたしはこっち」
「俺もこっちです」

 こ、これは嫌な予感。

 また並んでしばらく歩く。
 この街はベッドタウンだ。駅から少し離れただけで、そこら中に家やアパートが広がっている。

「私、このアパート」
「俺、こっちのアパートです」

 隣の建物じゃないかあああああ!
 十勝寮と書かれた、古そうだが割としっかりめのアパートだ。

「この建物ってダイチくんの高校の寮だったんだ……全然知らなかった」
「寮って名前になってますけど、学校が持っている寮じゃないです。OBの人が運営しているアパートで」

「そうなんだ……でもちょっとびっくり」
「俺もびっくりしました」

 おそらく高校に入学して今まで二年半の間ここに入っていることになるはず。
 隣の建物なのに見覚えがないなんてことはありうるのだろうか?

 いや、普通にあるか。
 同じアパート内であっても、顔を一度も見たことがない人がいる。
 生活のリズムが違えばそんなものだろう。

 朝出発する時間も、部屋に帰る時間も違うのであれば、今まで会わなかったというのは別におかしくはないのかもしれない。

「えっと。ここに住んでいるということは、一人暮らしなんでしょ?」
「はい。高校に入学してからここで一人暮らしです」
「やっぱりそうなんだ。いつもご飯はどうしてるの?」
「向こうにあるコンビニで買って食べてます。たまにスーパーで値引きの弁当を買ったりとかもしますが」

 むう、コンビニ飯か、と思う。
 さすがに料理を自分でやる男子高校生というのは想像がつかないので、ダイチくんはその点では普通なのだろう。
 けれども、毎日コンビニとスーパーの弁当というのはどうなのだろう。
 だんだん味を感じなくなってきそうだ。たまには違うものを食べたほうがいい。

「よし! じゃあ今日ご飯一緒に食べよっか? 私おごるよー」

 ということで。晩御飯は一緒に食べることに。
 駅の方向に戻るのは嫌、暑いので長く歩いて汗をかくのも嫌。消去法で店が決まる。

 入ることになったのは、駅と反対方向、一番近い大通りにある回転寿司。徒歩一分ほどだ。

「お寿司は好きなほう?」
「はい。大好きです」

 よかった、と思いつつ店の中に入る。



 この店は、一年ぶりくらいに入る。
 近すぎて逆に行く気にならないというのもあるし、私は自炊することが多いので、食べるために外に出ることがあまりないのだ。

 前回来たときの記憶もおぼろげで、「あれ? こんな感じの店だったかな?」と首をひねりながら、案内された席に着く。

「よーし、じゃあ沢山食べてね!」
「ありがとうございます。いただきます」

 座った席は四人掛けのテーブル席。
 私から見て左、ダイチくんから見て右側に、寿司が流れてくるチェーンコンベアがある。

 ダイチくんがさっそく流れて来たネギトロ軍艦巻きを取る。
 いつだかネットで見たデータでは、一番最初に手にするネタはサーモンが圧倒的一位だった気がする。
 軍艦巻きは一番最後の〆にする人が多かった。
 最初にいきなりこれは珍しいのでは……。少なくとも私は初めて見る。

 ……!?
 テーブルに一度置く前に寿司を手に取って食べたあああ!
 空中殺法?

 そして空になった皿は左手でテーブルの上に置き。
 同時に空いていた右手で次に流れてきていた玉子の皿を取り。

 効率よく、食べる、食べる。
 とにかく食べる!
 ものすごい勢いで空の皿のタワーが出来上がっていく。

 うーん。

 私は一人暮らしだし、遊びに行くこともあまりないし、服もそんなに高級なのは買わない。
 ご飯も自炊しているので、お金をふんだんに使うということがあまりない。
 どうせ給与計算をするのも私なので、あらためて給与明細を開けて確認することもほとんどなかったり。
 それくらい、今の私にとってお金の重要性は低い。

 なので……ここではいくらでも食べてもらって構わない。
 けれども。
 社会に出てからの世渡りを考えたら、もうちょっと遠慮したほうが、とも思う。

 むむむむ。
 でもこの食べっぷりはいいな。やっぱり眼福!
 どうする。

 ……うん。
 やっぱり注意するのはやめよう。もっと見ていたい。

「あ、食べすぎですよね。すみません」

 私がじーっと観察していたことが察知されてしまった。
 もちろん即全否定にかかる。

「いやいや! ここは全力で食べるべきよ。もう店ごと食べちゃって!!」
「え?」
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