シンキクサイレン

秋村ふみ

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「来ないかと思ってた。さ、行きましょう」
 図書室に入ると、赤縁メガネの図書委員が待っていた。僕を見るなり、僕の右手を引っ張って、そのまま廊下に出た。玄関へと向かう間、なぜか図書委員は、僕の右手を掴んで放さない。逃げると思っているのだろうか。右腕の痛みはだいぶ癒えたが、手のひらの皮はまだ回復しておらず、図書委員に手を握られている間、ざらついていた。
 バスに乗り、四十分くらい走った。御手洗の家は隣町らしい。
「ここで降りるよ」
 そう言って、図書委員はバスを降りる合図を示すボタンを押した。
「私の家も、この近くなの」
 そう言って、図書委員は再び僕の手を握って、歩き出した。ここまで来たらもう逃げないというのに…。
 バスを降りて、十分くらい歩くと、目的地についた。
「ここが、御手洗さんの家だよ」
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