シンキクサイレン

秋旻

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「来てくれたこと、感謝するわ」
 緊張している。女子の部屋に入ることなど、これまで一度たりとも無かった僕は、どうしていいかわからず、部屋の入り口付近に立ったままである。
「座って…」
 御手洗は座布団を、部屋のマットの上に敷き、僕にそこに座るよう促した。僕は言われるなり、正座で座布団に座った。
「お堅いね。あぐらでもいいのに…」
 しばらく沈黙が続いた。部屋を見渡してみると、熊のぬいぐるみがあちこちに飾られていた。
「昨日、広瀬先生と何しにきたの?」
 沈黙のあと、ようやく御手洗が口を開いた。
「いや、何日も学校休んでたから、どうしたのかなって思って…」
「広瀬先生に付いてくるように言われてきたの?」
「いや、違うよ。僕が来たら、広瀬先生も来てただけで…」
「そうなんだ…」
 御手洗は、少し笑みを浮かべた。その後、またしばらく沈黙が続いた。
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