シンキクサイレン

秋旻

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 御手洗陽介が列車に轢かれて亡くなってから三日後、妻の陽菜が家で首を吊って自殺した。
 遺された遺書には、十三年前に御手洗陽菜をいじめていたことや、それに対する償いの文字が記されていた。高梨陽菜は、首謀者ではなかった。最初は、本当に御手洗陽菜がいじめられているのを助けたかった。しかし、私と御手洗陽菜が仲良くなりはじめたのをみて嫉妬し、じぶんもいじめる側のグループに仲間入りした。遺書にはそう書かれていた。私が御手洗陽菜と出会う以前から、高梨陽菜は私のことが好きだった。
 しかし今となっては、私の心には何も響かない。十三年前、御手洗陽菜を一人で死なせてから私は、心を棄てたのだ。
 いや、もともと私は、人を想う心など持ち合わせていなかった。御手洗陽菜と以前から。彼女と触れ合う間だけは、心をもった人間でいれたのだろう。
 もう何も失うものなどない。また私はひとりになった。
 自宅の居間。私は睡眠薬を一ビン服用した。もう、死ぬまで目を覚ますことは無いだろう。
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