従者が記す世界大戦記

わきげストレート

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遺された種3

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俺はこの子に命を救われた。この子には正直に話す必要がある。俺が、なぜ2人を探していたのか。
「オーリィ、君のお父様とお母様はとても偉大な人だったんだ。王国にとって掛け替えのない、とても立派な人物だったんだよ。俺は、いや、王国は2人に助けを求めようとしたんだ。バーロック殿の圧倒的な武力と、アリア様の『治癒のセンス』に。」
「治癒のセンス?」
「ああ、センスというのは発現が100万人に1人とも言われる不思議な能力のことさ。手を触れずに物を動かしたり、人の心を読んだりできた人もいたらしい。地域によっては迫害の対象になっていたらしいけど、王国では貴重な人材としてアリア様を聖女と認定し大切にしていたんだ。」
オーリィは俺と目を合わさず、じっと聞いていてくれている。
「アリア様の治癒のセンスのおかげで王国から重病人はいなくなり、バーロック殿の武力のおかげで戦争は負け無しだった。だが15年前に2人が王国を去ってからは王が病に倒れ、戦争は膠着状態となってしまった。」
「なんで母様と父様は王国を去ったんだ?」
オーリィが初めてジッと俺の顔を見つめた。どうやら両親の過去は知らなかったらしい。
「理由はわからない。だが突然だった。当時は俺も子供だったが、王国中が大騒ぎだったよ。それで、相談なんだが・・・」
俺は意を決して切り出した。
「オーリィさえよければ、一緒に王都にこないか?もちろん今の生活、2人の墓、いろいろここを離れづらい理由はあると思うが・・・」
「行く。」
「えっ?」
オーリィは立ち上がった。そして強い瞳で言った。
「母様と父様のこと、もっと知りたい。母様は俺が小さい頃に死んだ。父様は2年前まで生きてたけど、王国のことなんて何も話してくれなかった。だから、俺を王国に連れてってくれよ!」
オーリィの右目が青白く光った気がした。少年ながら、なんたる決意だろう。
「わかった。じゃあ、支度をして一緒に行こう。」
「あ。1個だけやらなきゃいけないことがあるんだけど、それが終わってからでもいい?」
ガクッ。急に勢いを削がれた気がした。だが何事も準備が必要なのは間違いない。
「わかった。俺も手伝うよ。やらなきゃいけないことってのは?」
「ああ、それは・・・」

夜。
俺とオーリィは森の一角にて茂みに身を隠していた。
「いるいる。あいつらを全部やっつけるんだ。」
視線の先には松明が焚かれ、木製の壁に囲まれ、物見櫓が組まれた盗賊の拠点があった。
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