従者が記す世界大戦記

わきげストレート

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対面3

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「おやおや、すみません。モタモタしていたらお客さんが来てしまいましたね。」
ローブの男はそう言って腕をソビトの方へ伸ばした。不審な感じが、俺にも感じ取れた。
「危ないっ!」
シルバが叫ぶと、オーリィがソビトに飛びついて押し倒した。ローブの男は片眉をヒクッと吊り上げた。
「な、なんなんだあんたら?・・・いや待て・・・あんたら、店に来てた家族じゃないか。」
ソビトが頭を押さえながら俺たちの顔を見渡した。
「そんなことはどうでもいい!早く机の陰に隠れて!暗器か何かの飛び道具かもしれない!」
シルバの言葉に、ソビトは急いで這いつくばったまま机の陰に隠れた。
オーリィも机の陰に、俺とシルバも棚の陰に身を隠した。
「ふぅ。どうせあなた方も不老不死の研究が目当てなんでしょう?私たちが殺し合うより、どうです?研究内容を分かち合いませんか?」
ローブの男の平然とした声に少しビビる。この状況で何が奴の自信となっているのか。そしてオーリィとシルバは奴から何を感じ取ったのか。
「おい。せーのであいつを取り押さえるってのはどうだ?」
俺はできる限りのヒソヒソ声でシルバに策を持ちかけた。
「だめよ。あのオーリィが"攻撃"ではなく"回避"を選ぶほどの殺気だったのよ。取り押さえても誰かがやられる可能性があるわ。まだ交渉できる段階よ。」
確かにオーリィならソビトを庇うのと同じ速さでローブの男に攻撃できていたのではないか。それをしなかったのはオーリィの野生が"危険"を感じ取ったから?
とにかく今は情報を得る時間ということか。俺は棚の陰からローブの男に話しかけた。
「なあ、あんた!さっきソビトを殺そうとしてたよな!研究資料は手に入れたのかい!?」
ローブの男はふぅっとため息をつき、俺の問いに答えた。
「・・・ええ。彼をこちらに渡してくれればお渡ししますよ。」
「嘘だっ!」
ソビトが叫んだ。
「こ、こいつは帝国の"魔法使い"だ!研究資料など存在しない!俺の頭の中にしか存在しないんだ!こいつは魔法で俺の頭から記憶を抜き取るつもりなんだ!」
な、なんだって??
この世に魔法使いなんているのか?・・・いや、いるか!"センス"か!このローブの男はおそらく『記憶を読み取るセンス』持ちか!
いやいや待て待て、もしかしたらこいつは違う"センス"かもしれない。何が攻撃的な"センス"を持っていて、ソビトを連れ去る、もしくは死体を連れ去って他の"センス"持ちに記憶を探らせるのかも・・・。それならさっきの殺気も(あっ、ダジャレになっちゃった)納得がいく。
ローブの男は「チッ!」と舌打ちをして、声のボリュームを上げて話し出す。
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